AD FILES 2007.6/vol.10-No.3

「おもてなし」の思いを込めた広告で、新宿店のリニューアルを伝える
高島屋 宣伝部プランニング室 広告企画担当課長 七沢 健二氏
 「薔薇と書けなくてもバラになれる。」―新宿高島屋のリニューアルオープン当日、4月19日の読売新聞朝刊に4ページにわたって掲載された広告は、強いビジュアルとコピーで読者に強烈なインパクトを与えた。

ワンビジュアル・ワンボイス

 「『高島屋が生まれ変わった』というメッセージをストレートに伝えたかったため、見開き広告では、ワンビジュアル・ワンボイスにこだわりました」と語るのは、高島屋 宣伝部プランニング室 広告企画担当課長の七沢健二氏。

 「リニューアルですから、本当はあれも変わった、これも変わったと色々なことを書きたくなります。しかし、そこは我慢すべきだと思います。折り込みチラシにはそういう役割があるので色々な情報を載せますが、新聞広告の役割を考えれば、伝えたい言葉をたくさん紡いだ後に削っていく“言葉の鍛錬”を繰り返さないときちんとメッセージが伝わらないと思います」
 ティファニーのブティックオープンを伝える全ページ広告を扉にした4ページは、全体をファッション広告のテイストにまとめている。
 「特に見開き広告は、お客様のお手元に届く、最大サイズのメディアです。ここに細かい情報を載せても効果が薄いので、ビジュアル的にもかなり強めのものを選びました」
 「薔薇と書けなくてもバラになれる。」というコピーには、薔薇という文字のように難しく考えるのではなく、新しくなった新宿高島屋を体感してもらいたいとの思いを込めている。
 本誌の読者モニターからも「このキャッチフレーズを見てとてもバラに親近感を持ってしまった。これから始まる連休に、『バラを目指す女性』も多いのではないだろうか」(女性20代)、「思わずどきりとするキャッチに目が留まる。この紙面のように、新宿の駅前で新たな存在感を示す百貨店となるのか楽しみ」(男性50代)など、メッセージをしっかり受け止めたコメントが多数寄せられた。

正月広告へのアンサー

 今回の広告は、今年の1月1日に掲載した企業広告のキャッチコピー『花はどこへ行った。』に対するアンサーでもある。
 元日の広告では、団塊の世代の青春時代である1968年、カリフォルニアのベニスビーチで開かれたロック集会のワンシーンをとらえた報道写真を使って、「あのころの思いをもう一度思い起こして、次のステージを歩んで行きませんか」というメッセージと、「高島屋も第二段階に進みますよ」というメッセージを伝えていた。
 「2007年という、団塊の世代が消費や文化などあらゆるところで影響力を持ってくるエポックの年にふさわしいメッセージを通じて、この世代にエールを送りたいという気持ちがありました。併せて、『この春、新宿高島屋が生まれ変わります。ご期待下さい』というメッセージも込めました」

接客としての広告

 大きくリニューアルした新宿高島屋は、各階の中央エスカレーター横の一等地にウエルカムゾーンを設置して来店者の相談に応じる「コンシェルジュ」が待機。また、ゆったりくつろげるレストスペースを随所に設けるなど、館内はその内装や空間に至るまで余裕を持った高級感あふれる造りになっている。
 「百貨店がお客様にご提供できるものは、商品とサービスと環境の合わせ技がすべてです。我々の言葉で言うと『おもてなし』ということになるのですが、これをしっかりやっていくことが大切です。これらは無形のものですので、理屈ではなく、実際にお客様に感じていただくしかありません」
 また、横に長いフロア特徴を生かし、ウエルカムゾーンを中心にして同一フロアにレディースとメンズを併設した。これにより家族やパートナーと一緒に回れる活発な回遊性のある百貨店となっている。
 「コンセプトの一つである男女が一緒に回遊できるフロア構成ということからすると、読売新聞購読者の約8割は夫婦二人以上の世帯というデータが出ており、ほとんどの読者がターゲットとなります」
 読売新聞は商圏での到達率が高いことや、M1・F1層に強いこと、団塊の世代の情報源として新聞がトップにあることなどもメディアプランニングの決め手になったという。
 今回のリニューアルに伴って、27年ぶりにシンボルフラワーのバラのデザインを一新。長年にわたって信頼される伝統のブランドを大切に守りながら、新たな魅力をはぐくんでいくために、今後も時間をかけて宣伝活動に取り組む覚悟だ。
 「高島屋ブランドの本質としてお客様に求められているのは、やはり本物で上質のサービスや商品を提供していくことだと思っています」と七沢氏。
 「我々は接客業ですから、メディアを介して接客することが我々の広告のあり方ではないかと考えています。そう考えれば、一方的になってはいけないし、正しいことを伝えなくてはいけません」
 新宿から始まった高島屋のリニューアルは、横浜、大阪へと続く。次はどのような見事なバラを咲かせてくれるのか、今から楽しみだ。
(東)
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