栞ちゃん 2007.5/vol.10-No.2

日本新聞協会「メディアと消費行動に関するインターネット調査」から
Vol.1 背中で好きになる。

小学生のとき
本の背表紙だけ見て、中身を想像してお話を書いたことがあります。
ヒマだったんですね。
たしか「マキオのひとり旅」という本で
全部書いた後に、はじめて本を開いて、確認して。
やたら劇的な自分の作った話(マキオが死ぬ)とは対照的に、
小学生の男の子がちょっぴり成長する…みたいな
きちんと地に足のついた内容で(そりゃそうだろう)、
なーんだ。と思った記憶があります。

  そんなことはともかく

本のタイトルだけでピンときて、本を選ぶのは楽しい。
ジャケ買いならぬ、背表紙買いというか。
何も期待していないときの方が、いい出会いの確率も高い気がします。
買ったら喫茶店を見つけ、前のめって読みはじめる。至福のときですね。
時々まちがいもあるんだけれど、それも悪くはない。

昨年、出産前に、すこし育児の予習でもするかと
育児書を探して本屋をぶらぶらしていた時、
タイトルを見て思わず手が伸びた本があります。
伊丹十三「問いつめられたパパとママの本/新潮文庫」。
なんだか、本に呼ばれたと思いました。問いつめられたら、どうしよう。

しかも冒頭で「この本を私は、生まれつき非科学的な人、つまり
あなたのために書いた」とあったものだから。
ヤッタ、と、妙にうれしくなったのでした。

伊丹十三は、切れよく味わいのある文体で、
「赤チャンハドコカラクルノ?」、
「夜ニナルトナゼ眠ラナケレバナラナイノ?」、
「猫ノ眼ハナゼ光ルノ?」などなど、
直球にして難解なこどもの質問に次々と答えてゆく。
これが驚くほど科学的で、ユーモア満載で、チャーミングなのです。
なんでも、「赤チャンハドコカラクルノ?」という問いに答えるために
わざわざ性教育の先進国(!)デンマークで勉強してきたっていうんだからすごい。

あれから1年近くが過ぎました。
今はまだ「えっぶー」としか言わないこどもも、やがてコトバを操るようになり、
鋭くて微妙な問いをバンバン投げかけてくるでしょう。
でも、ひるまずに答える自信なんてまったくない。ないですよ。困った。
腰がひけている大人、それが、こどもがいちばん軽べつする対象だってことは
自分の記憶にもあるから。
だから、ここでの伊丹十三は実にリッパである。なかなかいません、こんな大人。
ま、心配しても仕方ないし、ありのままでいるしかないのでしょうけどね。

ところでそんな私が現在、タイトルを見て即刻読みはじめた本は
都築響一「やせる旅/筑摩書房」ですけれど、
それがなにか?

国井美果(文)
ライトパブリシテイ コピーライター
おもな仕事に、
資生堂C.I.「一瞬も一生も美しく」
マキアージュ/TSUBAKI
ワコール/ワールド/パルコなど
  本誌デザイン
帆足英里子(デザイン・写真)

ライトパブリシテイ アートディレクター
おもな仕事に、資生堂マキアージュ/ユニクロ
三越/ワコール/メルシャン/角川書店など


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