From Overseas - London 2007.5/vol.10-No.2

本流メディアにとどまるために
 ロンドンの無料夕刊紙「ロンドンペーパー」に家具大手イケアの広告が、2週間にわたり連続掲載されている。
 「ベージュをやめて、カラフルに (BE BRAVE, NOT BEIGE.)」と題されたこのキャンペーンは、シンプルな部屋のカーテンやクッションに明るい柄物を取り入れさせることを目的としたもの。キャンペーンサイトでは、白やベージュ中心の部屋に柄物を取り入れるバーチャル・シミュレーションも可能だ。
 「ロンドンペーパー」への出稿は、「イケアに対し、従来の新聞広告の領域を飛び越えるような何かを提案したかった」という同紙が、「単一のキャンペーンとしては過去最大」の出稿獲得に成功したものだ。掲載初日の3月26日付には、4ページ相当のラッピング、1/4ページ強の広告が3つ、半ページが1つ、裏表紙1ページが掲載されたほか、「ロンドンスタイル」「ロンドンインフォ」という常設編集ページを、イケアの協力の下で制作した。
 同紙のファッション面である「ロンドンスタイル」は、夏に向けた柄物特集。各ブランドの新作を紹介したほか、一般読者の服装を紹介するコーナーでも、柄物を身にまとった人々の写真を集めた。部屋に柄物を取り入れることを提案した「ロンドンインフォ」面は、イケアのキャンペーンそのものである。
 また、ロンドンペーパーのウェブサイトでは、バックグラウンドにイケアの柄を敷き詰め、すべてのページに特設スペースを設けてキャンペーン・ロゴを掲出するなど、「サイト・ジャック」が行われている。
 さて、この提案は、「従来」の新聞広告営業手法を逸脱したものと言える。「従来」というのは、単にスペースのセールスだったり、記事体広告だったり、別刷りだったり、年間契約によるディスカウントだったり、一風変わったスペースの提案だったりということだ。
 しかし、こういった統合的な提案がメディアに求められ始めている。2月下旬、欧州最大(世界4位)のメディア・エージェンシーであるカラが、パリでメディア・レップを集めたカンファレンスを行った。カラは「ページを買うだけの時代は終わった」と宣言し、メディアに対してより統合的な提案を行うよう求めた。実際、カラの売り上げに占める従来型メディア・バイイングの比率は減少の一途をたどっているそうだ。
 カラが求めたのは、「新聞、インターネット、イベントなどを組み合わせた、グローバルなレベルでの統合的な提案」だ。それぞれの媒体がそれぞれの役割を補完し、相乗効果が生まれることが見込まれる、「クリエイティビティーあふれる」提案ということだ。ロンドンペーパーがイケアに行った提案はこれに当たるだろう。
 さて、もともとロンドンペーパーは、広告主寄りのスタンスを標榜している。収入源が広告に限られるフリーペーパーであるためだ。通常はスポーツなど注目度の高い記事に割かれる最終面を広告スペースに充て、「編集記事と統合した広告」「円形や三角形の広告」「新聞配布員によるサンプリング」などが可能なことをセールスポイントにしている。
 イケアからの出稿は、このスタンスが生きた最初の大成功例だ。特に、編集記事と広告をいかに融合させ、全体の効果を高めるかが具体的に示された点は、イギリスの新聞が新たな収入ソースを模索する上で、大きなヒントになったと言える。
 カラによれば、今後は「クライアントの商品開発段階からメディアがかかわっていく」ケースも出てくる。こういった際にスペース提案しかできないメディアは「傍流に追いやられることになる」そうだ。


(4月2日)
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