新・広告人論 2007.5/vol.10-No.2

広告における職能とフォーメーション
 この「新・広告人論」では、次世代の広告コミュニケーションを企画、運営できる新しい広告人のスキルと育成のあり方を考えてみたいと思っている。広告というサービスは、従来極めて部分最適化の発想で成り立ってきた。新聞広告にしようとなれば、出稿段数を決め、そのスペースのなかでのメッセージ開発が行われる。コミュニケーションコンテンツありきではなく、与えられた広告スペースのなかを表現する規定演技が求められた。
 それはそれで、マス4媒体を中心にアウトプットすればよかったし、それ以外に効果的な手法がなければ、決められた広告スペースをどうやって訴求力の高いものにするかの職人技の世界になる。広告とプロモーションを分け、ブランディングコミュニケーションと販売促進を2軸にそれぞれの最適化を目指すことが使命だった時代は、どんどん分業化が進んだ。コミュニケーションチャネルが多様になると、さらにそれぞれに専門の者がでてくる。こうして広告主とインターフェイスする営業の後ろには様々な専門職のスタッフが並ぶことになる。
 そして、今こうした職能とフォーメーションが、逆に足かせになって、新しいコミュニケーションデザイン開発を阻害している。つまり分業の垣根が邪魔になって新しい発想や価値を作り出せない状況である。


 CMプランナーは主に15秒の尺のなかにある種のインパクトをもって表現するスペシャリストである。逆に言うと、何秒でもいいよということになったり、テレビ以外のメディアのクリエイティブもトータルに考えてくれと言われることには慣れていない。「型」が染み付いている。一定の広告フォーマットのなかで表現することを繰り返してきたためだ。(逆にいろんなキャンバスを対象にデザインしてきたグラフィックデザイナー出身のクリエイターの方がWebでもOOHメディアでもトータルにこなす傾向がある。)


 これからの広告コミュニケーションはテレビ広告のクリエイティブさえ良ければいいという具合にはいかなくなる。「全体最適」の発想で、購買プロセスのすべてのステージにおける接点と、コミュニケーションチャネルのそれぞれの役割ごとに設計されなければならない。こうなると、従来の分業システムとそれぞれの職能をいったんバラして再編成をかける必要がある。
 欧米で、インタラクティブ領域を中核にコミュニケーションデザインを行う会社が、トラディショナルエージェンシーとは一線を画したところで、成長を続けている。彼らが競争優位性を発揮できるのも、こうした職能とフォーメーションを全くさらの状態で新しく構築できているからである。そしてこうした新しいインタラクティブエージェンシーがその中核のスキルを武器に、次々にマス広告扱いすら奪取し始めた。インタラクティブ部門を一生懸命編成しているトラディショナルエージェンシーは「そもそもインタラクティブ部門があること自体トラディショナル」などと嘲笑の対象である。


 急先鋒のひとつである米国のインタラクティブエージェンシーR/GA社にみる新しい概念のスキルセットなどは、たいへん参考になる。次回はそうした職能とフォーメーションを取り上げてみたい。
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