こちら宣伝倶楽部 2007.5/vol.10-No.2

広告する前に広告主が決心すべきこと

イラスト 広告するには狙いがある。目標や目的のことだ。これには広告主それぞれの思惑や魂胆があり、それはそれぞれ自由だ。しかしそれより前に、広告主には「広告する責任」があることを改めて考えてみてほしい。さらにもうひとついわせていただくなら、広告を掲載したりオンエアしたりするメディアにも、「広告を掲出する責任」があることを改めて自覚してほしい。そういうことを考えてしまうようなことが最近増えている。広告主が広告をする前に肝に銘じておきたいことを列記しておきたいと思う。

(1)三ツのプライドを随時点検しているか

 三ツのプライドとは、[1]広告しても恥ずかしくない商品やサービスであること。[2]広告しても恥ずかしくないブランドであること。そして[3]広告しても恥ずかしくない企業であること。新年早々からお詫び広告やお詫び会見が続くのを見ていると「広告する資格」に欠ける商品やブランドや企業が多いということになる。考えに考えた広告が嘘になり、ことはその社だけの事でなく「広告の信頼」に及んで迷惑が広がる。
(2)よその広告に目を奪われるな
 となりの芝生はとなりのもの、広告で大事なことは譲れないメッセージの重点と、それをねらった相手にきちんと伝えるための工夫、そのバックボーンにある信念や姿勢を、さりげなくわからせていく独自のエスプリをいかに示していくかに知恵をしぼること。個人的に好きなよその広告や、広告会社売りこみのよその仕事でヒットを出したクリエイターのリストなど、必要以上に興味をもちすぎないこと。
(3)広告は「知らせる義務」を第一義とせよ
 広告で売ろうと考えないこと。売れるは買う相手がいてこそ成立する。広告の基本は顧客や市場に、広告主として「知らせる義務と責任」を誠実に遂行すること。知らないことを知らせる、納得できる情報を提供することが広告の使命だ。そのよしあしの判断と次の行動への決断は広告の相手がきめる。伝わらない広告は売れる保証をしてくれない。誠実、まじめ、まっすぐがよい広告のもと。企業の誠意がでる。
(4)広告は万能などと思いこむな
 手段や方法はどうであれ、広告はしないよりした方がよいにきまっている。しかし広告はオールマイティーや一気に解決の保証はしてくれない。広告を利用して社内の営業推進力を集中し、いかに全体力に高めるか、その覚悟や決意やプロモーションの計画があるかないか、そのためのコストがきちんと計上されているかどうかが広告の万能を導く。広告は社内の動機づけだ。
(5)まず「人のみち」をはずすな
 日本の教育が見直されるらしいが、企業も人品や人格についておとなになり直す必要がでている。知性や常識や倫理観についての洗練がこの時期大切になっている。何が何でも多くを売り、損をしない仕事に片よった経営では困る。企業倫理を社内議論し、社会から評価される社会倫理について考えていくセンスが、この時代の広告企業に強く求められる。株主みたいなシャープな眼をもった消費者が増えている。
(6)社員に信頼される広告をつくれ
 社員やその関連会社の人は自社の広告を熱心に見る。社員の家族とて同様だ。一番こわい相手でもある。この人たちがその広告のオーバーな表現や、事実とくい違う点を見抜く、見抜いてやり切れない気分になる。その逆に市場をま正面からにらんだ、嘘やごまかしのない堂々たる自社の広告を見ると、社員たちは広告を通して自分の会社に信頼感をよせ、胸につける社章にプライドをもつようになる。広告の原点だ。
(7)カッコよくより正しくの優先
 広告づくりでは「よくわからないけどカッコいい」よりも「なんだかあかぬけないけどよくわかる」が優先される。初期的なインパクトは同じかも知れぬが、時間をかけて染みこむ効果は後者に利がある。広告づくりの初期の段階から初対面のクリエイターにリーダーシップをとらさないこと。広告は広告主の意志や決意が一番にくるもの。脆弱な担当者のふんばり所だ。
(8)金のちからで広告をつくるな
 単純なメッセージの大型広告の連打を見ると力ずくでねじ伏せようとする広告主の品の悪さが見え、お行儀のよくない企業という印象をもってしまうことがある。広告の強さと好感度とは別ものということになる。たった1回しか出ていない広告なのに名作は何年たっても覚えているものがある。広告は金を積んで人まかせから始めるものではない。広告主に広告にたち向かう姿勢や理念や常識的気構えが問われる所だ。
(9)「すぐ」を望むな あわてるな
 広告にインスタント効果はない。一発必中もあると思わない方がよい。それを会社の上層部はわきまえているくせに担当部門に課題としてつきつけてくる。成果目標をたて、予算計画をきちんと保証し、ドラマを作るようなストーリー計画をたてること。そのストーリーで決裁をとれば、途中の細かいことは担当部門の責任になり、専門性を磨いていくチャンスになる。
(10)同業他社に砂をかけるな
 広告で自社だけが勝てばよい、浮かびあがればよいという考えはもたぬこと。こころある宣伝担当者は「この広告を出して、同業他社に迷惑がかからないか」をチェックする習慣をもっていてほしい。業界を価格競争の渦にまきこんだり、デザイン優先で性能、機能に問題あり商品が増えてしまったりなどは、もとをたどればどこかの社のビジネス・モラルに原因があったりする。業界に砂をかけないのは広告の理性だ。
(11)「変えるもの」と「変えないこと」
 広告では意識して常に変化させていくことは大事だ。理由は広告の鮮度を保ち、企業の印象度を鮮明にしていくためだ。表現の技術はもちろんのこと、メディア設計の微調整、伝えなおしたいキーワードなど、その切り口は多い。
 しかし変化させていくことに没頭しすぎると企業やブランドのはるか上流にある水源をかきまわしたりしてしまいやすい。変える行為は変えない真実をしばしば見失ったりする。
(12)経費でなく投資という理解を見失うな
 経費は期限つきの成果目標に対する出費、これに対して投資はもう少し先をにらんだプロセスに対する出費。販売促進型の広告を望むと経費感が強くでて広告の顔つきが変わっていく。
 経営はロングランの仕事、上質な申しおくりをしていく仕事だ。広告とて同様、ゆっくり先を見る眼を失わぬこと。ブランドの信用や値うちは、足もとだけみて走る広告観の中からは生まれてこない。堂々とした仕事が成果を生む。

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