IT弁護士の法律ノート 2007.5/vol.10-No.2

前途多難なオンライン広告

 少し前に電通が公表した「日本の広告費」によれば、2006年の企業の広告費のうち、オンライン広告(ネット広告)が順調に伸びています。とはいえ、まだ市場規模は3600億円台で、テレビや新聞と比べて少額にすぎません。しかし、これらの伝統的なメディアにおける広告の減少傾向と比べると、前年比3割増という伸び率には、無視できない重要性があります。
 かつてオンライン広告といえば「バナー(ピクチャー)広告」くらいしか見当たりませんでした。その一方で、大量かつ一方的に送り付けられる電子メール広告「迷惑メール」が社会問題に発展した末、特定電子メール送信適正化法などが制定され、法規制を受けました。
 ユーザーの画面にポップアップ広告を勝手に表示させる「アドウエア」という不正な手法も登場し、米国では非難を浴びて裁判ざたになっています。これはネットで配布される便利な無料ソフトに紛れ込ませる形で、誤ってユーザーにインストールさせる手口です。
 以上のように、残念ながら最近までのオンライン広告の歴史は、紛争の歴史でもありました。
 これに対し、現在ではオンライン広告も多様化しており、高く評価されているのが、グーグルなどによる「検索連動型広告」です。これは、ユーザーが入力したキーワードに応じて広告を検索結果画面に表示する方式です。掲載順位はオークション制が採用され、高額で入札した広告が上位に表示されます。
 バナー広告にせよ、検索連動型広告にせよ、広告のクリック回数に応じて広告料金が発生する方式(PPC:Pay Per Click)が一般的です。ところが、PPCについては、広告掲載サイトが意図的に広告を大量にクリックしたり、広告予算を浪費させるために競業会社がこれを何回もクリックするという形態の不正行為が登場して、広告主が被害を受けています。これを米国では「クリック詐欺」と呼んでいます。日本で問題になっている「ワンクリック詐欺」とは、似て非なるものです。
 クリック詐欺のためグーグルは広告主から集団訴訟を起こされ、巨額の和解費用を支払うことになったというニュースも報道されています。
 こうした詐欺を避けるため、検索エンジン運営会社では不正クリック自動検知システムなどの導入によって対処を試みてきました。これは、クリック元やパターンをプログラム解析して、不正を見破ろうという方法です。しかし、常に技術はバージョンアップしています。どの程度見破ることができるか、限界があることも事実です。そのため、こうしたモグラたたきが本当に終わりを迎えられるのか、疑問が残ります。 
 こうしたなか、3月に入ってグーグルは新たなクリック詐欺対策を発表しました。問題があるユーザーに対する広告表示を、広告主がIPアドレスを指定して遮断できる機能を提供するという計画です。しかし、これにしても、この機能を使わなかった広告主への責任転嫁を正当化するだけに終わるおそれがあります。
 このように考えると、順調に伸びているはずのオンライン広告も、まだ当分は前途多難に思われてなりません。

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