From Overseas - London 2007.4/vol.10-No.1

ニュースサイト広告にガリバー
 日本から英・タイムズのニュースサイト「タイムズ・オンライン」にアクセスすると、題字ロゴの下あたりに「グローバル・エディション」と表示されるはずだ。イギリス国内からアクセスした場合は「UKエディション」になる。アクセス元のIPアドレスから判断し、トップページを振り分けている。「グローバル」と「UK」では、表示されるニュースが違う。そして、広告も異なる。
 コンテンツのほとんどを日本語のみで提供している日本のニュースサイトでは考えられないが、イギリスでは、国内からより国外からのアクセスのほうが多い。新聞社系で最大のユーザー数を誇る「ガーディアン・アンリミテッド」の場合、1月の総ユーザー数が約1,570万人なのに対し、外国からのアクセス者数は約1,031万人(ABCE=ABCのウェブデータ調査部門=まとめ)。「タイムズ・オンライン」の場合は1,089万人に対し728万人(ヒットボックス社、2007年1月)と、どちらのサイトも約3分の2が外国からのアクセスだ。
 下の写真は、アメリカから「タイムズ・オンライン」にアクセスした際に表示された、トップページの一例だ。ラージバナーのスペースにはウォール・ストリート・ジャーナルの購読キャンペーンが、右下に上半分が見えているレクタングル・スペースにはマンハッタンの大学の広告が掲載されている。同じ時間帯にイギリスからアクセスした場合は、それぞれロンドン市交通局とエー・フランスの広告だった。
 タイムズの担当者によれば、「外国からのアクセスの多くは北米から」なので、グローバル・サイトの広告枠を切り分けてアメリカ企業に売れば、商売になる。
 ところが、民間新聞社が築き上げてきたこのモデルが危機にさらされることとなった。英BBC放送が、同社ニュースサイトへの広告掲載をもくろんでいるのだ。
 BBCは、NHK同様に受信料収入で運営されており、国内放送にはCMを掲載していない。一方で、BBCワールドという商業国際放送を運営しており、CNNのような商業放送を展開している。BBCは、ウェブでも海外からのアクセスだけに対し広告掲載を計画しているのだ。
 
ユーザー数
PV
bbc.co.uk
8,232
327,300
Guardian Unlimited
1,286
13,731
TIMES ONLINE
797
5,673
Telegraph.co.uk
590
4,870
FT.com
546
4,101
単位: 万(国内・外合計数)
出典: ABCEサイト別レポート2006年3月。タイムズオンラインのみ4月。
 これが民間新聞社のウェブサイトにとってどれほどの脅威になるかは、右表に明らかだ。BBCの場合、外国からのページ・ビュー比率は約50%と言われており、新聞社系のサイトと比べると「けた違い」の規模である。
 BBCのインターネット・サービスは確かに充実している。ニュースはもちろん、子供向け、世界歴史、交通情報などコンテンツが充実。ニュース映像のストリーミング、ポッドキャスト、RSSなどの技術にはいち早く対応し、ニュースは映像も含めて33か国語に翻訳されている。五輪開催時には、複数の競技の映像を国内向けにウェブ配信していたのが印象的だった。2005年の経費は約160億円だったが、出所は受信料だ。
 民間のニュースサイトにすれば、受信料収入で成長したサイトに、今さら広告枠を設置されてはたまらない。衛星放送のスカイやタイムズを発行するニューズ・インターナショナルなどは、「英メディアのデジタル分野におけるビジネス・プランを破壊するものだ」という文書を、BBCの監視機構であるBBCトラストへ提出した。
 2月下旬に下されるはずだったこのプランの可否は、BBCトラストがBBC側に再検討を促したことで、晩春まで先送りとなった。しかし、広告掲載案が承認される可能性を残しており、英民間メディアにとって大きな脅威が誕生することになりそうだ。


(3月7日)
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