こちら宣伝倶楽部 2007.4/vol.10-No.1

広告づくりで勘違いしやすいこと

イラスト 習慣的にあたり前と思ってやっていることがよく考えると意外にそうでもないことがある。新しく先端的に見えて、本当は時代おくれなところも多い広告や宣伝の世界、なんとなく残っているしきたりのようなものは結構多い。核心にせまりすぎない程度に、日常的なことをあげてみる。これをきっかけにして改革の波を研究してみてほしい。不可能はひとつもない。

(1)有名クリエイターに頼めばよい広告ができる

 クリエイターは忠実な仕事人だ。働きやすい指示命令を出すのは主人たる広告主、この関係はくずさないこと。他社の成功例など本来は関係ない。むしろ軽視すること。彼らの才能を自社流にディレクトできてこそ真の広告主だ。
(2)まずテレビから議論していくべきだ
 この考えが広告の全体計画をゆがめてきたのではないか。表現のかたより、予算のゆがみ、深いところまで議論が及ばない仕事のプロセス。経費上の理由でテレビにだけ関心が高い上層部が広告設計の弊害になる。いったんテレビを脇において広告を考えなおす習慣はすでに常識だ。
(3)宣伝部の代行は広告会社がしてくれる
 広告会社はサービス業だ。頼めばなんでもしてくれる。その便利さにはまると奥座敷に他人があがりこんでくる。広告主の自覚や責任やプライドを捨てたら広告の主従が逆転して、かんじんのことが伝わらない広告に走っていく。
(4)クリエイターあがりの宣伝部長の方がよい
 大型の宣伝予算を持たぬ中小企業の宣伝部長はこれでよい。しかし宣伝の仕事をひとつの装置づくりと考えると、大局をとらえてダイナミックなプログラムをたて、社内外の意見や問題の調整など、全体マネジメントをうまくやることが優先される。思考と行動の半径が違う。
(5)売れない広告は広告ではない
 広告だけでものが売れたり、売れ続けるなら世の中こんなに簡単なことはない。商品力、サービス力、営業力、流通力、ブランド力、マネジメント力、全社決起力など、いろいろある中のひとつの機能でしかない。これら全体のマネジメント力、それがマーケティング力だ。
(6)パブリシティーは本来予算なしでやる仕事だ
 これは広告会社が悪い。アカウントをとるためにクリエイティブはサービスの一環になったり、パブリシティーはメディアとのサービスのとりつけをすることも仕事のうちと考えたり、アカウント主義が初期の段階でかんじんの仕事をおまけにしてきた。それが今も尾をひいている。
(7)大きい広告会社の方が安心だ
 大手広告会社の上層部は日常の細かい仕事の掌握などしていない。大事なのは担当者の人柄と熱意だけだ。むしろ小規模会社の方が会社あげてのサポートがある。社内プレゼンの上層部安心のためのリストアップは見直すときだ。
(8)文字の多い広告は誰も読まない
 とくに新聞や雑誌広告でよくいわれる。広告はみんなに見てもらう必要はない。しかしその情報が必要な人にはたくさんの正しい情報をわかりやすく伝える責任が広告にはある。知りたい人にとって文字の多さはむしろ信頼だ。社内の間違った意見に腰くだけにならないこと。
(9)広告賞はねらいたい
 広告賞はやるというならもらえばよい。いちばん喜ぶのは社外のクリエイター、彼らにとっては勲章であり通行手形だからだ。ビジュアル優先と投入量実績がポイントになることが多く入賞作がよい広告と若い広告人を勘違いさせる。
(10)プレゼンは競合にするべきだ
 競合にしてしのぎを削らせるべきだという考えは間違いではない。しかしオリエンをきちんとし、ふだんのコミュニケーションがきちんとできていれば、類似案がでそろってベストワンを選ぶのが難しくなる。1社限定でじっくり話しあって考える方がむしろスタッフは育つ。
(11)プレゼンの費用は払わなくてもよい
 これも(6)に似ている。初めにきちんと納得できる説明をすること。アカウントがらみの特別料金を話しあったり、(10)のように1社限定にした保証があると話は違ってくる。頼めば相手にコストはかかる。それを認めないのは非合法、プレゼンを断る談合はこの場合正義だ。
(12)撮影現場に宣伝部長は立ち会うべきだ
 事前の打ち合わせや確認がきちんとできていれば現場など行く必要はない。アタマの部分だけあいさつしてポイントの確認をしたら退出するべきで、いれば邪魔になるだけだし、クリエイターの現場責任があいまいになる。現場を伸び伸びと働ける信頼感で満たすのが仕事。
(13)こまめに来てくれる所とは仕事がしやすい
 安くていいなりになる便利屋との仕事ばかりしているから、全体のレベルがいつまでたってもあがらないのだ。真に力になってくれる相手のところへはこちらから出向くこと。こんなことに億劫になったらマンネリの海に流れ出る。
(14)素人の方が思いきったことができる
 ベテランはタブーや自己規制を勝手につくるが、アマチュアはこわいもの知らずで殻をやぶりやすい。単純発想すぎる。企業の香りや、らしさ、文化を支えていく仕事はつながっているから認識や信用ができる。よく考えたおとなの判断がないから、外部にかきまわされるのだ。
(15)メディアと接近しすぎると広告会社がすねる
 メーカーが小売業と直接やりとりすると、中間の問屋や代理店からクレームがでるのと似ている。広告会社を経たコミュニケーションはこの時代もう古すぎる。現場どうしでどんどんディスカッションし、問題提起し、生き生きした広告のための試行錯誤をすることはとても重要。
(16)やはり広告は東京でつくるべきだ
 無用の劣等感からくる錯覚、もしくは社内説得力に自信なく、ふだんの調査とコミュニケーション不足の逃げ口上だ。人に頼らず自らでパートナーを探す研究をし、訪ねてリスト化しておこう。意外なところに隠れた才能がある。その思いきった登用からも新展開は可能だ。
(17)宣伝部長は男の仕事だ
 繊細なひらめきや、細部まで気を配る仕事はむしろ男より女の方が優れている。対人関係や交渉力もうまいかも知れない。番頭さん格にできる男性がつけば強い。美しいにこしたことはないが、男社会にくじけぬ賢い女性が先だ。
(18)予算がないからよい広告がつくれない
 金の話はいったん横におこう。ありすぎるから仕事がイージーになっているかも知れぬ。貧しいからこそ知恵のげたをはいて背を高く見せる工夫をする。よい広告、届く広告、響く広告をたっぷりの時間をかけて考える。予算から始めるとかんじんの議論や検討が中断する。

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