Creativeが生まれる場所 2007.4/vol.10-No.1

オニのパンツで大豆ファンを増やす
阿字地 睦氏 松元 篤史氏
阿字地:64年生まれ。金沢美術工芸大学卒。MAC、レオバーネットを経てADK。読売広告大賞、読売ユーモア広告大賞最高賞、日経広告賞、毎日広告デザイン賞最高賞を受賞。
松元:74年生まれ。慶応義塾大学卒。97年旭通信社(現ADK)入社。03年クリエイティブ転局。05年消費者のためになった広告コンクール金賞、06年ACCブロンズ賞。
 豆乳の精製工程で捨てられるおからも使用し、既存の豆乳飲料とは異なる「まるごと大豆飲料」という分野を開いた「スゴイダイズ」。昨年の節分、2月3日に新聞の一面15段に折り紙形式の大胆な広告が打たれた。そして今年は、なんとトラ柄のパンツ。ユニークな発想はどのような経緯で生まれたのか。アートディレクターの阿字地、コピーライターの松元、両氏に話を聞いた。

――「スゴイダイズ」に携わって何年くらいですか?
阿字地 4年半ほどです。ネーミングやパッケージの段階からかかわっています。ゼロから携わっているのでとても愛着のある商品ですね。自分が作った広告を見ている人を見かけるとうれしいものですが、「スゴイダイズ」にはそれ以上の思い入れがありますね。スーパーで買っている人を見かけた時は本当にうれしくなりますね。

――今回の広告は、通常の商品広告とは少し違うような気がしますが。
阿字地 昨年、クライアントから「節分の日に大豆のファンを増やしたいから、この日に何かおもしろい広告を打ちましょう」という提案があったのがきっかけです。この広告は「節分を見つめ直す」的なことも視野に入れています。昔は土間にまいた豆を家族で食べたりする風習がありましたが、今は父親の帰りが遅くなったり、隣のお宅に声が響くんじゃないかと気にしたり、節分が廃れてきているという現実があります。そういうのをひっくるめて、この広告を打つことで節分や大豆そのものの理解を深めてもらい、ゆくゆくは、大豆をまるごと使った「スゴイダイズ」や「ソイジョイ」のファンになってくれたらいいというのが狙いです。

広告の滞留時間を増やす

――それが折り紙という表現になったのは?
阿字地 最初は、節分や大豆にまつわる風習などを調べたりしました。例えば大豆という地名があって、その町の子供たちは、どういう節分をするんだろうと思い、取材をしてみたり。また追い出された鬼たちが、次の日までかくまわれるお寺が奈良にあったり、鬼塚という名字の家では「鬼も内」と言わなければいけなかったり。そうやってためていったアイデアのなかで、クライアントが見た瞬間、「これがいちばん楽しそう」と言ったのが、昨年の折り紙の鬼の面だったんです。
 今年も折り紙形式になりましたが、プレゼンではいろいろなアイデアを提案しました。例えば豆がばらまいてあって、それに小さく番号が振ってあり、それを結ぶと鬼が現れたりとか。
 ただ最初から心掛けていたのは、広告の滞留時間を増やしたかったということです。新聞広告は目立たないと飛ばし読みされるケースが少なくないんですね。普段父親が新聞を読んでいて、その周りに家族が集まるということはほとんどないと思いますが、「おもしろいものがあるぞ」と、この広告を家族で楽しみながら見てもらいたかったんですね。そして同時に、大豆のこともよく知ってもらえればと思いました。


――すると商品の購入を直接狙ったわけではない?

松元 短期的に見たら、それほど効果が期待できるものではないと思いますね。大豆を原料にしてはいるものの、ちょっと離れた位置に商品がある。そこが大きなポイントです。

――今年の広告は企業ロゴも入っていませんね。

阿字地 懸賞応募先として入れているだけです。「スゴイダイズ」に限らず、「ポカリスエット」や「カロリーメイト」もそうですが、大塚製薬は企業名ではなく、あくまでブランドにこだわる企業なんだと思います。プロダクトに自信があるからそういうことができるんだと思いますね。

ブログでも大きな反響

――新聞以外ではどのような展開をしたのですか?
阿字地 メディアでは新聞だけです。最初に新聞に広告を打って、それからは実際にスーパーなどの店頭用チラシを置きました。スーパー用のチラシを折って楽しまれた方も大勢いたようです。

――反響はどのような形で取ったのですか?
阿字地 今は広告の反響はブログにすぐ表れますね。「節分、鬼、パンツ」という言葉で検索するとすごい件数でした。お子さんやペットにはかせている写真がたくさんアップされていて、ブログを書いていない人を含めると相当数いるのではないかと思います。新聞広告はレスポンスを実感することが難しいメディアですが、ブログという形でわかる時代になったんだと実感しました。

ワクワクする新聞広告に

――新聞広告の使い方は、昔とは違ってきたと思いますか?
松元 昔の新聞広告には待ち遠しい、読んで得をするとか、何かそういう良さがあったと思うんです。でも最近は、売るためだけの広告が多くて、読んで得したなっていう広告が減ってきているような気がします。ネットが普及して「詳しくはネットで」という広告も増えている。ネットは情報量も多く、速報性も高いのですが、新聞広告とは使い方が違うんです。
阿字地 新聞広告って、1対1のパーソナルなものだと思うんです。人間臭くてしなやかというか。昔の広告は開高健さんや山口瞳さんの書いたメッセージに背筋が伸びる思いをしたり、その広告を楽しみに待つ良さみたいなものがあった。最近の新聞広告はすごく絵空事というか自分の生活とは違う世界でやっているようなところがあります。
松元 最近の新聞広告は折り込み広告かポスターになってしまっている。スタイルがフォーマット化しちゃっているんですね。
 固定化した新聞広告に対する回答のひとつが今回の広告だと考えています。テレビでやって、新聞でもやって、雑誌でもやってみたいな、ワンパッケージのキャンペーンの仕事の時に、多くの場合はテレビの表現をそのまま新聞にも焼き直そうという発想になりがちだと思います。連動性が重要なのも承知しているんですが、新聞は新聞ならではの表現を模索していかないと、見る側も作る側もワクワクしない。そういう時代だからこそ細部までちゃんと作り込めば、目立つ新聞広告が作れる。紙媒体に携わっている人間はそのことをみんなひそかに意識していると思いますね。


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