特集 2007.3/vol.9-No.12

Googleの広告とこれから

大変革の象徴としてのGoogle

 Googleは、従来の広告会社の守備範囲外だった広告の新しい市場を作り出したと言われている。その革新性はどこにあるのだろうか。対談に引き続き、ADKインタラクティブの横山隆治氏に、Googleが広告業界に与えたインパクトという視点から改めて寄稿してもらった。


 インターネットの普及当初から、一部ではインターネットによってコミュニケーション構造が大転換することは予期されていた。例えば、重要なのは「コンテンツではなく、コンテクストだ」とか、いわゆるWeb2.0的な発想の転換は、「メーンフレームから各端末に」ではなく、「各端末がネットワークされ、『個』はネットに参加しつつ、不特定多数の『知』を共有できる」など、元々インターネットができたころに盛んに議論され、評価されていたことである。 
 ただ、本来のポテンシャルを発揮するには、一定以上のネットの住人の行動、参加を待たなければ成立せず、醸成期間を経て、やっとインターネット本来のあり方に近づいた。ネット社会が質量ともにクリティカルマスに達した。それがWeb2.0的現象といえる。
 その中で、Googleが実現しているのは、超巨大な容量をもつサーバー群を用意して、あらゆるインテリジェンスを膨大な数のネットユーザーに活用してもらうことで、さらなる価値を創造するということである。

新しい広告ビジネスモデル

 広告業界サイドから見ると、Googleは「検索連動型広告」から出発したオンラインのアドマーケットプレイスで、従来広告を買わなかった小規模広告主が直接オンラインで広告を買うという新しい市場を作り出した意味で、まったく新しいタイプの広告会社でもある。だが、この新たな市場は既存の広告会社の扱いにはならない。扱いをとられたわけではないが、まったく違うビジネスモデルで固有の絶対価値をもった参入者に不安をもつ人もいる。
 従来の広告会社は、「広告主が広告スペースを買うに際して、ほぼ必ず広告会社を介して取引が行われる」という商習慣の上に成り立っている。媒体社が直接セールスに行っても結局は、広告代理店に“帳合”がつくことになることが多い。しかし欧米では、ネット広告は当初、相当量が媒体社と広告主の直接取引で行われた。現在でもそうした傾向は強い。そもそも代理業というのは、顧客がやろうと思えばできることを面倒くさいから依頼するという性質のものだ。ただ一部の価値の高い商品の販売権をもつことで代理業は、商流を引き寄せてきた。
 既存のメディアの広告スペースは、本当に価値の高い商品は限られており、有限な故にそこを押さえることでの、商売上の利権と成り得た。
 ところがネットの広告には限りがない。どんな広告主も欲しがる有力なスペースという概念が成立しづらい。よって利権化することが難しい。Googleが売る広告はその最たるものであるが、これは基本的にヤフーにしても同じである。ネットユーザーの閲覧ページが増えれば広告在庫は増える。有限だから貴重な枠で、それを囲い込んで商売をする仕組みは、極端にしづらくなった。それに加えて、Googleの場合は、広告枠の概念どころか、ネットユーザーのアクション(検索結果ページの表示からのクリック)を売る。またキーワードを介して広告主とネットユーザーのマッチングをするところまでビジネス化したのである。

日本市場とGoogle

 インターネット空間は規模が小さくてもそれなりの価値が成立する(広告主とユーザーのマッチングができれば、その規模と価値は広告主しだいになる)。その取引がオンライン直販によって、小規模を巨大に積み上げたロングテール市場を形成したわけだ。アマゾンとGoogleは経済原理をも覆すロングテール市場経済を創出した。
 こうしたGoogle現象は、その「企業体としてのユニークさ」からたいへんな企業価値をもつに至った。しかし日本市場においては、米国ほどのシェアは獲得できていない。これは、まず検索のシェアでヤフーを凌駕するまでに至っていないことに起因する。日本におけるヤフーの閲覧数、滞在時間は他のサイトを寄せ付けない圧倒的なものがある。これは、ヤフーがインターネットならではのコンテンツやツール、取引の仕組みを提供しつづけた結果であり、競合サービスと明らかに差があった。
 よって検索行動もヤフー利用がトップで、ヤフーの検索結果ページをGoogle同様の検索連動型広告として販売した「Overture」の広告効果や、Googleとは一線を画した営業活動で、この分野の市場もヤフーがリードしている。
 それは、検索に限らずいろんな意味で日本のヤフーは日本の会社であるからだ。営業の支援体制も整っている。msnもGoogleも本国やヨーロッパほどのシェアをもつに至らない理由は、そのへんにある。

変革を迫られる広告業界

 しかし今後Googleが媒体社から広告仲介サービスを本格的に展開するなど、まったく新しい、競合相手のないビジネスモデルを展開する可能性があり、確かに目を離せないところだ。膨大なサーバー容量があって初めて実現するユーザーサービスを起点として、Googleは今後も絶対価値を追求してくると思われる。
 これに対して広告会社は、やはりその業態変革を迫られることになるだろう。これはGoogleが競合するということでなく、Google的な環境変化が広告会社のビジネスモデル転換を必然的に促すということだ。逆説的に言うと、Googleを味方にしてしまう広告会社が生き残るのだと思う。また次世代の広告人にとって、Google的仕組みやテクノロジーを駆使できるかどうかが問われるだろう。「広告」はアイデアがすべての実に人間的なサービスだったが、テクノロジーを知らないとアイデアは最適化されない。
 Googleがそうした新たなマーケティングコミュニケーションの世界における大変革のひとつの象徴であることは間違いなさそうだ。

検索サイトの月間利用者数推移(2000年4月〜2006年7月、家庭)



Googleが広告で目指しているものは何か
Google 執行役員 営業本部長 佐藤康夫 氏→


Googleのサービスは広告にどんな影響を及ぼしているか
ADKインタラクティブ COO 横山隆治 氏
× Google 広告プランニングシニアマネージャー 高広伯彦 氏→
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