特集 2006.10/vol.9-No.7

Web2.0時代に生きる新聞広告
プラットフォーム化するWebとマス広告の役割

 KDDIと東京電力の両社が協働して提供する光ファイバーサービス「ひかりone」キャンペーンのインターネット特設サイトでは、「得意なことが違う同士が組む」をコンセプトに、木梨憲武と木村カエラによるコンテンツ会議がリアルタイムで進行する。それぞれが得意な絵と文章を生かして、オリジナル絵本を創作することに決定し、その工程が展開されていく。広告キャンペーンは、今、どう変わろうとしているのか。また、その中で新聞広告はどのような役割を果たしているのか。クリエイティブディレクターの永井一史氏に聞いた。


――ひかりone」キャンペーンは、どういう発想から出てきたのでしょう。
 「ひかりone」は、KDDIと東京電力という2つの大きな企業が協働して作られた光ファイバーサービスです。コミュニケーションのポイントの1つは、そのコラボレーション感、具体的にはNTTに対抗しうるスケール感をどうやって表現するかでした。ですから、新聞広告でもテレビCMでも、「KDDI×東京電力」というスケール感、信頼感をキャンペーンの核に置いています。
 こうしたサービスでは、「ひかりone」自体の具体的な機能や値段を訴えていくことがコミュニケーションの常道だとは思いますが、やはり、それとは一線を画して、「ひかりone」の持つ楽しさやこれから感をコミュニケーションしていくべきだと考えました。なぜならネットは、これからの生活にとってますます重要なインフラになっていくからです。コミュニケーションのテーマもあまり細かい小さなところから入らないで、スケール感のある大きなところから入るべきだ、ということですね。

――特設サイトを中心にキャンペーンを組み立てられた理由というのは?
 ウェブが申し込みを受け付ける場所として1番有効だということが、まずありました。ですから、今回は広告には、「ひかりone」のブランディング、ポジションづくりと、サイト誘引という2つの役割があったということです。

新聞のネット誘導効果


――サイトに誘引し、売りに結びつけようということが最近の広告キャンペーンでは当たり前になってきたのでしょうか。
 当たり前ということはないですが、今までの広告の役割というのは、できた商品を広くアナウンスし、欲しいと思ってもらうとか、その商品をメジャーなものにすることで注目してもらうというところまでで完結できていたと思うのです。
 今は、これだけ情報が多い中で、その先の、どうやって最終的に手に取ってもらうか、サービスに申し込んでもらうかというところまで考えてクリエイティブしていくことが求められてきています。それは「ひかりone」に限ったことではありません。
 ぼくがコミュニケーションを考えるときのベースもそこにあって、最終的にどうやって手に取ってもらうかまで自然に考えていますね。

――商品の社会的な意味や今の時代の意味を伝えることが広告の役割だと、永井さんは以前言われていましたが。
 サービスや商品が世の中に存在する意味も、お客様にとっての価値に直結するとぼくは思っていて、それも商品を手に取ってもらう大きな理由だと思います。ただ、なんとなくいいという印象ではなく、もう少し具体的に売られる店頭はどうなっているんだろうとか、どういう言葉をその商品に結びつけて投げかけたら、手に取りやすくなるかとか、そこを基本にしてキャンペーンを考えますね。それは、「ひかりone」の場合も一緒です。どうやったらウェブまで来て、サービスに申し込んでくれるかから考えていきました。

なぜ新聞広告なのか


――今回のキャンペーンでは、ウェブの誘引に新聞広告を積極的に使われていますが。
 スケール感や信頼性が「ひかりone」を選択するときの大きな基準になるし、キャンペーンのターゲットも30代男性を中心に広げていこうということで、新聞を選んだことがまずあります。
 それから、印刷媒体ですから、読者がコピーを読んでウェブに行ってみようというアクションを取りやすいことがあります。「ひかりone」という今回の検索ワードを確実に知らせることを含めて、新聞広告はウェブ誘引させやすいメディアだと思います。
 たとえば、サイトでは、木梨さんが作った2つのキャラクターのどちらが主人公としていいか投票してもらっているのですが、テレビCMでも当然絵を見せて投票をお願いしている。でも、新聞広告の方がキャラクターをちゃんと見比べられるから、「じゃあ投票してみよう」というアクションを取りやすいんですね。アクセス数にもそれは表れています。

――新聞広告ですが、KDDIと東京電力が、実は別々に出稿していますね。
 お客様から見たら、どれがKDDIで、どれが東京電力の広告かは気にされないだろうし、実際わからないと思いますが、2社が出稿している新聞広告をどう関連づけて、魅力的にするかというのが、実はこのキャンペーンでは最も重要な点でした。その解決策として考えたのが、新聞広告では「ページ送り」で、2社の広告を連続して掲載することです。
 ですから、キャッチフレーズも、KDDIは「面白いを、2倍にすることはできないか」、東京電力は「安心を、2倍にすることはできないか」などトーンをそろえています。面白いKDDI、安心・信頼の東京電力というのは、すでにお客様の心の中にありますから、そこをよりどころにしながら広告を作れないかと考えたんですね。また、両者のイメージを掛け合わせることによって、「ひかりone」のポテンシャルが見えてくるものにしたいというのが、実は、この新聞広告の狙いです。

7月5日 朝刊 7月31日 朝刊 16面(KDDI) 18面(東京電力)


――テレビCMも同じ考えですか。
 そうです。このキャンペーンはKDDIと東京電力の広告がパラレルな関係で、相乗効果が出るように考えて作っています。全然違う質の情報が出ることによって、「ひかりone」の奥行きを出したいというのも狙いでした。

「得意なことが違う」編 15秒 (KDDI) 「どっちがいい?」編 15秒 (KDDI) 「電気と光」編 15秒(東京電力)


メッセージを伝える新聞広告


――キャンペーンサイトは、どういう考え方を元に作られたのですか。
 申し込みという具体的なプロモーションの場でもあると同時に、木梨さんとカエラさんの絵本プロジェクトが詳しく見られるようになっています。テレビCMや新聞広告で伝えきれない、木梨さんやカエラさんのプロジェクト会議の動画やブログなどがウェブにはコンテンツとしてアップしてあって、好きな人はそこにアクセスして、いろんな深い情報を楽しんでもらえるようになっています。
 だから実際は、プラットフォームとしてウェブが最初にあって、そこを切り出して、テレビCMができていたり、新聞広告ができていたりという、そういう関係になっているんですね。そういう意味でいうと、キャンペーンの中心は、ウェブになっています。

――そうすると、テレビCMや新聞広告はウェブの入り口が役割ということになる?
 でも、それがメーンではないでしょうね。新聞広告も、「2社が協力して新しいひかりサービスを始めたよ」というメッセージがあくまでもメーンだと思います。そこを無くして、単にウェブ誘導だけだと、本当に新聞広告でいいのかということになると思います。
 語りたいことをちゃんと伝えようとするときは、ポスターでもなければ、テレビでもなく、新聞広告だと思ってるんですね。過去にもいろいろなことをやっていますが、新聞広告はフォーマットが決まっているからこそ、そこから少し飛び出して表現すると目立ちやすいっていうことがあるんですね。この場合だったら、じゃあページ送りで、同じサービスが違うフォーマットでできたらどうなるんだろうとか。これまで作られてきたフォーマットがあるから、逆にそういう仕掛けを考えやすいというところがありますね。

――永井さんから見て、新聞広告の強みはどこにあると思いますか。
 新聞広告は、なにかを社会化するときに、すごく有効ですよね。例えば、ターゲットが10代、20代に限定されているなら別ですけど、その世代を基点にしながら、社会全体にあることを認知させようとするときには、若い世代に対しても新聞広告は有効な感じがします。

ウェブとマス広告の使い分け


――ウェブをキャンペーンの中心に置いた場合のマス広告の役割をどう考えていますか。
 ある意味では、過渡期なのかもしれないですね。世の中の広告キャンペーンが全部ウェブ中心になったときに、ウェブを見る時間がみんなあるかといったらないですよね。そうなったら、そのエッセンスが短い時間で伝えられるような、新聞広告やテレビCMというところになっていくだろうし。
 ただ、今はウェブに向かっているんでしょうね。ウェブの可能性を探る方向でいろいろやってみようというところに、みんなの気持ちが行っている。広告主も、作り手もそうです。いったん極端までいったところで、また戻ってくる可能性はあると思いますね。
 確かにウェブは、「ひかりone」のようにサービス内容など伝えることが膨大にあるときや申し込みを受け付けるときは、非常に有効な手法だと思います。でも、何でもウェブにすればいいのかと言ったら、それも違う。カテゴリーや商品によって、そこは使い分けられていくべきだと思います。

――世界観を作るという点では、マスもウェブも同じですか。
 ウェブでも世界観は作れるとは思いますが、どれだけちゃんと人にリーチしているかも広告の場合は大事ですよね。みんながみんな、ウェブを見に来るわけでもない。
 それから、世の中にとっての存在感がマスとウェブでは違います。ウェブの世界というのは、少なくとも画面上は、まったくの個人のブログと並列に企業のキャンペーンサイトがある。本当にそこが信頼に足るサイトなのかどうか、世の中でどういう位置にあるかということは、ウェブ単独だと見えづらい。そこはやっぱりマスに頼らざるを得ないでしょうね。

――逆にマスにとっても、ウェブとつながることによって、反響がわかるなどのプラスの面もある?
 マスからウェブへのアクセス数がわかることもありますが、個人の反響がわかるということもありますね。いい新聞広告を作ったら、ブログなどにリアルな反響が書かれたりする。これまで広告は、専門家が選んだ広告賞くらいしか評価の基準がなかった。それが個人にどう伝わっているのかわかるということもいいことだと思います。
 それから、今までは企業とユーザーとの関係が、「圧倒的に情報を持っている企業」と「情報をほとんど持っていない個人」という非対称になっていたと思うのです。それがウェブが普及したことで、少し対等な関係になってきている。マス広告から得られる限られた情報より、もうちょっと先の深い情報を知ろうとしている人にとってウェブは重要なツールになっています。
 大きな時代の流れに乗っているウェブは、今後、その役割が狭まっていくことはないと思います。そういうウェブの存在を認めた上で新しいマス広告の使い方を探っていくことが、マス広告の伸展につながっていくと思うのです。ウェブが発展したからといって、今後もマスの役割が小さくなることはないと思います。ただ、ウェブはどんどん進化している。我々送り手も、今、そこを無視するわけにはいかないということなんです。

Kazufumi Nagai
1961年東京生まれ。1985年多摩美術大学美術学部デザイン学科卒業後、同年株式会社博報堂入社。アートディレクター、シニアクリエイティブディレクターを経て、2003年5月、戦略から広告までトータルにブランディングを手がける、株式会社HAKUHODO DESIGNを設立し、代表取締役社長に就任。主な仕事に、サントリー「伊右衛門」、「プレミアムモルツ」、日産自動車「SHIFT_」、「TEANA」、資生堂。クリエイター・オブ・ザ・イヤー、東京ADC賞グランプリなど受賞多数。





リスティング広告と新聞広告の相性
KDDI マーケティング本部宣伝部長 村山直樹氏→


住まいの購入パターンの変化と新聞広告
ミサワホームホールディングス 販売企画部 宣伝企画グループ マネージャー 原田 不二雄氏→

Webへのアクセスと新聞広告が果たす役割
ビデオリサーチ インタラクティブ 執行役員 営業企画本部本部長 五十嵐 達氏→


個人インフルエンサーが評価する情報源
ブルーカレント・ジャパン 取締役社長 本田哲也氏
バイスプレジデント 前川浩樹氏→
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