特集 2006.9/vol.9-No.6

今、なぜ、企業広告なのか?
お客様と社員の意識を変える企業広告

 今年、トンボ鉛筆が新聞広告とテレビCMを使って企業広告を展開した。同社の事業ドメインである「書く」「消す」「貼る」の3つをテーマにした企業広告の意図を代表取締役社長の小川晃弘氏に聞いた。


――トンボ鉛筆が本格的に企業広告に取り組み始めた、その理由は何でしょう。
 「トンボ鉛筆」というブランドは、大人の方には非常に知名度があります。しかし、「昔使った」「懐かしい」というイメージでとらえられている方がほとんどです。また、鉛筆離れやキャラクターものに押され、若い人たちの中にはトンボ鉛筆を知らない人たちも出てきています。
 その一方で、現在のトンボ鉛筆は、修正テープや消しゴム、スティックのりといった分野ではトップブランドになっています。「MONO」「PiT」というブランドはご存じの方も多いと思いますが、それがトンボ鉛筆と結びついていないという問題点もありました。
 皆さんが持っている「懐かしい」「親しみやすい」というポジティブなイメージを大事にしながら、今のトンボ鉛筆と結びつけていきたい、というのが今回の企業広告の最大の狙いでした。
 また、社内的には文具の存在意義を問い直すことで、この会社で働いている意識を高めたいという意図もありました。文具は成熟産業で、お客様の興味も昔より薄れてきています。従来、文具が果たしていた記録・伝達・ファイリングがコンピューターに置き換わったことがその要因です。しかし、文具は楽しいものであり、「創造的なパートナー」という今日的な意味も持っています。そういう文具の存在意義をお客様に気づいてもらうとともに、社員にも、トンボが社会にどんな価値を提供する会社かを再認識してもらうという狙いもありました。

今のトンボを理解してもらう


――小川社長が就任された2003年から、トンボは動き始めた気がしますが。
 というより、文房具を取り巻く経営環境が急速に変化している、それへの対応です。
 今年、当社は3つの社長方針を掲げました。1つ目は、トンボ鉛筆という日本のメーカーが今後どうあるべきか、グローバルな視点で考えたときに、「開発型メーカーになっていこう」ということです。高品質でいいものをいつも提供し、文具の新しい形を追求することです。トンボでは、文具の習慣をこのように変えました、こんなに便利になりました、こんなに心地よくなりました、こんなに効率よくなりましたと言えるものを新製品と言っています。
 2つ目は、「ブランド構築」です。便利なモノを提供してくれる期待できるメーカーとしてのイメージを再構築することです。今回の広告活動もその一環です。この背景にはPB(プライベートブランド)商品という安い海外文具が出回ってきたこともあり、これに対抗していくには、ブランド力が必要だと考えたからです。
 3つ目が企業としての基礎力を向上させることです。
 メーンは1と2の柱です。それが今のトンボ鉛筆なんだとお客様にわかっていただくためにも、企業広告が必要だったということです。

――「MONO」や「PiT」などの強いブランドがあるのに、なぜ商品広告ではなく企業広告だったのでしょう。
 文具は、1つ1つの商品市場がそれほど大きくないことがあります。新製品なら別ですが、20年以上も売れている商品が多数です。今回の企業広告では、そういう長年安心して使っていただいている高品質な商品をイメージし、それがトンボの製品だと気づいてもらう。そして、トンボから次にどんな新製品が出るのか期待してもらえる環境を作りたいと思いました。企業広告で目的としていたのは、そういう「開発型メーカー」としての信頼と期待を得ることです。

商品への誇りが意識を変える


――今回は、テレビコマーシャルと新聞広告を使われていますが。
 新聞のほうが反響がわかりやすかったですね。トンボのメッセージを伝えたいということでテレビも30秒CMにしたのですが、それでもまだ短い気がします。今回の新聞広告は、1度目に止まれば、2度、3度読んでみたくなるコピーになっている。正直に言えば、これほど新聞にメッセージを伝える効果があるとは期待を上回るものでした。

――企業広告には、社内のモチベーションを上げるという面もあると思うのですが。
 それは、私が何か言うよりも効果はあると思いますね(笑)。企業広告は、会社の方針を社員に伝える1番ダイレクトなメッセージになります。また、当然、お客様や流通の方に「面白い広告だね」と言われれば、社員のモチベーションも上がる。今回の企業広告は、いろいろな評価をいただきましたが、それも効果を大きくしたと思います。
 この間も、お客様に集まっていただいて話を聞いたのですが、最初は、文具にそれほど興味ないとおっしゃるんですね。ところが、実際に最近のトンボの文具を見ていただくと態度が一変した。みなさん「文具ってこんなに面白くなってたの?」とおっしゃるんです。これまでは、それを伝える努力が足りない部分もあったと思うのですが、「実際は面白いもの作っているんじゃないか」「結構世の中のためになるものを作ってるんじゃないの」と。
 われわれは商品にも、開発にも誇りを持っていい。誇りを持たなければ意識も変わらないと思うのです。今回の企業広告は、トンボにとって新たな出発点です。そして、単年度で終わるのではなく、毎年少しずつイメージを構築していきたいと思っています。

1月3日 日本経済新聞 朝刊 2月21日 読売新聞 朝刊 3月13日 朝日新聞 朝刊



B to B 企業に企業広告が必要な理由
村田製作所 広報部部長 大島幸男氏→


新聞社との共同事業を通じて企業の取り組みを紹介する
三菱商事 広報部 ブランドコミュニケーションチーム 広告・制作物企画総括 小泉満氏→

広告と広報の連動でレピュテーションを高める
東京経済大学 コミュニケーション学部助教授 駒橋恵子氏→


「会社の値段を高める」という企業広告の役割
日本デザインセンター 最高顧問 梶祐輔氏→
もどる