4月、5月に三越が読売新聞朝刊に掲載した新聞広告のテーマは「日本新発見」。4月20日の広告では人間国宝である陶芸家・濱田庄司氏の作品を日常的に使っているアートプロデューサー白州信哉氏のライフスタイルを紹介し、「優れた芸術文化をお客様に楽しんで頂く」という、来年100周年を迎える三越美術部の精神を表現している。
5月8日の広告は60年の伝統を持つ三越歌舞伎をモチーフにしたものだ。歌舞伎を正面から見ることはあっても舞台側のアングルから見ることは無い。客席との近さ、臨場感がよく表現されている写真が効果的だ。本誌の読者モニターからも「動きのある華やかな舞台に思わず引き込まれてしまった。日本の文化を地道に支えてきた企業姿勢に好感を持った」というコメントが寄せられた。
「チケットを購入したい」という問い合わせも多く、結果的にチケットの販促広告にもなったという。
ターゲットはすでに三越の良さを分かっている人だけではなく、伝統よりも面白さや、個性を重視する30代から40代だ。
「三越が提案する上質な大人に向けてのライフスタイルは、新聞を読む人に合うと思います。そんな方に向けて、じっくり見てもらいたいと思い、掲載した広告です」
ライフスタイルといえば、注目されているのがロハス(Lifestyles of health
and sustainability)だ。
5月30日の広告ではロハスをテーマにしている。これも、三越が提案する上質な大人に向けてのライフスタイルと重なる部分が大きい。
「越えてある、日常へ。」というキャッチコピーは、日常をこそ大事にする、でも、これまでの単なる日常ではないものを見つけ、いとおしんで暮らしていくことが大切というメッセージだ。
坂井氏は「新聞広告にはじっくりと対峙して見ることができるという魅力があります。新聞を読む人はある程度の余裕もあり、情報を得たいという好奇心やライフスタイルへのこだわりもおありだと思うのです。そういう意味で弊社が表現したかったことが良い場と出会えたと思っています」と語る。
CIの今後の推進に向けては、どんな方針があるのだろうか。
「『上質な大人』とは何かということをもっと掘り下げて考え、『上質な大人』が求める店舗とはどのようなものかを追求していきたい。それはブランディングに通じるものがあります」と坂井氏。