特集 2006.6/vol.9-No.3

クロスメディアの効果を測る
新聞広告のクチコミ効果を視覚化する

 若者をターゲットに新聞広告をクチコミのトリガーとして使う。そうした新しい試みも、これまでは客観的に検証する手段がなかった。クロスメディアの世界でも、クチコミの重要性は語られているが、事情は同じだ。CACの開発した「ブログクチコミサーチ」は、そのクチコミのトレンドを数値化、視覚化する新しい試みだ。プロジェクトを担当するKIZASI事業室・潮栄治室長と田中昇太郎副室長に聞いた。

――企業のシステム開発・運用がメーンのCACが、なぜ、「ブログクチコミサーチ」のようなサービスに取り組まれたのでしょうか。

田中 システム開発は受託ビジネスモデルですが、それとは違うビジネスモデルを作っていこうという意図からです。CACの創業は1966年で、独立系のソフトウエアハウスでは初期に生まれた会社です。金融や製造業のアプリケーション開発とその運用が事業の中心ですが、CACでは、自然言語処理を研究してきています。その技術を応用して、グーグルやヤフーなどの検索サービスとは違う角度からサーチエンジンが作れないかということで、取り組みはじめたのが今回のサービスです。去年の9月にKIZASI事業推進室を立ち上げて、本格的にビジネスとして取り組んでいます。

http://kizasi.jp/
http://kizasi.jp/
https://biz.kizasi.jp/
https://biz.kizasi.jp/
http://musicmarq.jp/
ブログの話題を知るサイト

――現在、3つのサイトを開設されていますが、その違いというのは?

田中 3つのサイトとも、ブログの本文を解析した同じデータベースを基にしています。
 最初に立ち上げたのが「kizasi.jp」で2005年12月に正式にオープンしました。ブログの中で何が今話題になっているかをランキング形式で紹介するサイトです。このランキング情報は、NHKの情報番組「つながるテレビ@ヒューマン」の中で、ブログの話題で今週を振り返る「きざし←」のコーナーでも使われています。
 次が、今年1月に立ち上げた「ブログクチコミサーチ」で、好きな言葉を入れて、その言葉の登場回数の推移と関連語などを調べられるサイトです。自分の会社や新商品が、世の中でどのくらい話題になっているかが日、週、月単位別で見られます。このサービスは6月から有料化していますが、β 版が無料で見られるようになっています。
 3つ目が今年4月に立ち上げた「musicmarQ」という音楽サイトです。「kizasi.jp」でも、サッカーや野球など特定ジャンルに絞って話題のランキングを見るチャンネルはあるのですが、それを音楽に特化して、ブログで今どのアーティストが話題なのかがわかる、というのが基本的な考え方です。ミュージシャンのプロフィルを紹介する辞書的なサイトは世の中にたくさんありますが、辞書的な要素にブログの最新情報を組み合わせて、新しい情報提供の形ができないかという意図から始めたものです。

新商品の反響をブログで知る

――「ブログクチコミサーチ」がどういうものか、具体的な例で説明していただけませんか。

 カカオの含有量の多いチョコレートが最近出ていますね。その「カカオ」をキーワードに、4月末までのブログの言及数を週間単位で出したものが下の画面です。

「ブログクチコミサーチ」で「カカオ」を検索
「ブログクチコミサーチ」で「カカオ」を検索
「ブログクチコミサーチ」で「カカオ」を検索


――16日の週がピークになっていますが。

 カカオ72%、86%と発売されましたが、99%が出たのが4月9日の週です。カカオ99%が出るまでは、実はブログでは話題はそれほど盛り上がっていませんでした。グラフの下にブログに「カカオ」とともに出てきた関連語が表になって出てきますが、「カカオ99%」が4月9日の週からトップになっていて、そこから急速に話題が広がったことが分かります。
 それから、関連語を詳しく見ていくと「チョコレートダイエット」という言葉が出てきます。キーワードは30位まで表示されますが、画面をスクロールすると下の方には「カカオダイエット」という言葉も出てきます。これまでチョコレートとダイエットはプラスの関係では語られなかったと思うのですが、この商品が今までのチョコレートのとらえ方を変えていることがわかります。
 関連語は、名詞、形容詞、動詞の別にもランキングが出てきます。その中には、たとえば「苦すぎる」「まずい」「安く」と言った言葉も出てくる。

――個人が勝手に書いているブログですから、プラスの話題も、マイナスの話題も言及数としてグラフに反映される?


 ブログで言及されている言葉を調べているわけですから、それは両面出てきますね。要は、マーケターの方が、これをどう判断されるかだと思います。
 また、関連語をクリックすると、実際のブログの引用が表示され、さらに本文にもリンクしています。
 もう一つ、「ファイナルファンタジー」という人気ゲームがありますが、サントリーが「ファイナルファンタジー・ポーション」という青い飲み物を今年3月に同時発売して話題になりました。ポーションというのは、ゲームでは回復薬です。その例を見たのが左上の画面で、関連語を見ると「サントリー」という言葉が2月19日、26日の週でトップになっています。発売前から「サントリーから出るらしい」と話題になっていたことがわかります。
 こうした使い方のほかに、「ブログクチコミサーチ」は、当然、ブログで話題になっている言葉をサーチしたデータベースが基になっていますから、「ダイエット」という一般的なキーワードでどんな関連語が語られているかをみることができますし、企業の評価や競合他社がブログでどう話題になっているかもわかります。

「ポーション」のブログ登場回数
「ポーション」のブログ登場回数


なぜブログに特化なのか

――サーチの範囲をブログだけに特化したのは、なぜでしょうか。

田中 まず、ブログが特定の人たちのものではなくなってきたことがありますね。最近は、主要なポータルのほとんどはブログサーバーを持っています。プロジェクトを始めた2004年当時は、ブログはとんがった人やオタク系の人がやるものだという偏見が見る側にあったと思いますし、プロジェクトの立ち上げも、ブログの普及を眺めながらというところがありました。それがここ1年半ぐらいで、普通の人たちが急速にブログを書くようになっています。

――ブログは、日本で1日にどのくらい更新されているのでしょうか。

田中 正確な数字は出ていませんが、だいたい30万件から40万件と言われています。

―― 一般のサイトより、ブログは調べやすいということもある?

田中 確かにそれもありますが、技術的に容易だからブログだけを選んだということではありません。ブログは個人の日記、日々の出来事を書いたものがほとんどだということがあります。今日起こったことが、その日か次の日にはアップされる。大きなニュースがあると、それは必ずブログに反映されます。
 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)も、王監督、イチロー、松坂からボブ審判までいろいろなメディアがいろいろな形で取り上げましたが、当然ブログでもさまざまな形で語られています。
 それから、ブログに特化した理由には、更新時間がわかるということもあります。何月何日の何時何分に新しいブログが上がりましたという情報が、ブログサーバーを見に行けばわかる。「時間情報を伴うテキストデータをデータベース化することで、検索サービスとは違う新しいサービスができないか」というのが、今回の事業の発想だったんです。

「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」のブログ登場回数
「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」のブログ登場回数


――ブログ以外のサイトは、更新情報がわからない?

田中 技術的なことを言えば、一般的なHTMLで書かれたものは、そのファイルの最終的な更新時間しかわかりません。部分的に変えられていても、どの部分がいつ更新されたかまではわからないんですね。ブログだと、それがわかる。

――掲示板などのコミュニティーサイトのデータの収集は検討されなかったのですか。


田中 今後の検討課題のひとつです。「時間情報を伴うテキストデータ」であれば、技術的には同じような解析は可能ですから。

――「ブログクチコミサーチ」で使われているデータベースの特色は?

 大きな特長としては、本文のみを解析の対象にしていること、でしょうか。ブログには広告文など、本文以外のテキスト情報がたくさん付加されていますが、そのすべてを解析対象にすると、当然結果はブレてきます。収集したブログの中から本文のみを解析対象にする、という意味では、「ブログの本文調査」というような性格があるといえるかと思います。

――これまでに収集したブログの数はどのくらいになるのですか?

 データは10分ごとに更新され、そのデータが1日に10万件以上になります。昨年4月からデータを取り込んでいますが、5月までで累積2,500万件を超えています。しかし、1日に更新されるブログは30万件から40万件といわれていますから、取りこぼしがある。これも、インフラの問題で、マシンのパワーを上げれば全部の情報を取ることも技術的には可能です。
 ただ、ブログの検索サイトの場合は、1秒でも早く更新情報を押さえることが必要でしょうが、我々の場合は、ブログ全体のトレンドや話題は何かというサービスですから、必ずしもすべてのブログを収集するというよりは、サンプルとしての質の妥当性の方を重視する、ということはありますね。




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早稲田大学商学部教授 嶋村和恵氏→


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読売新聞東京本社広告局マーケティング部→
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