特集 2006.6/vol.9-No.3

クロスメディアの効果を測る
生活者から見たクロスメディア効果を調査する

 読売新聞では、クロスメディアを意識した広告接触効果についての実験的調査を2006年2月から3月に行った。調査設計と分析に当たっては、早稲田大学商学部の嶋村和恵教授と東京富士大学経営学部の広瀬盛一助教授に監修いただいた。以下、調査方法についての考え方と、結果の一部を紹介する。
 今回、媒体間でフラットに広告の効果を比較できる指標として導入した「インパクト・スコア」を見ると、商品ジャンルによって媒体力の違いが表れた。また、新聞とテレビ両方の広告で認知すると、ブランドのマインドシェアが向上するということもデータで示された。


どんな調査をするのか

 通常の広告接触調査は、大きく分けて、単媒体ごとの調査と複数媒体にまたがったものに分けられる。単媒体調査は、広告内容を再認させて広告自体の認知を聞く手法が多い。それに対して、複数媒体調査は、キャンペーンの終了後に、広告展開した媒体すべてについて、広告物は再認させず、純粋想起で閲覧記憶を聞くようなものが多い。
 単媒体の広告接触調査の弱点は、ほかの広告媒体の影響、つまりクロスメディアでの広告効果が測れないことである。また、企業名や商品名を認知していなくても、出演タレントなど印象の強い要素があれば「見た」広告になることから、得られたスコアの意味にクリエイティブ評価が混在していることも挙げられる。
 一方、複数媒体調査の弱点は、各媒体の広告露出がすべて終了した後の調査時点では、実際の広告接触が記憶として正確に残っていないであろうことが挙げられる。また、映像媒体が新聞などプリント媒体に比べて有利なデータを獲得するのではないかと考えられる。

ブランド名記入で接触効果を測る

日記式の調査票(一部)
日記式の調査票(一部)
 いずれにしても、現状の広告接触調査は媒体側の視点から設計されていると言える。そこで、 我々は前記の問題点と生活者の視点を意識して、今回紹介する実験調査を企画、設計した。調査手法としてはパソコンや携帯電話を使うことも検討したが、パソコンは現在でも偏ったデータになる恐れがあること、携帯電話は自記式より入力の負担が重いことなどを考慮し、日記式を選択した。
 調査対象者は2月15日から22日までの8日間、日記帳(右図)を持ち歩き、朝・昼・夕方・夜の1日4回、見た広告のブランド名と企業名を媒体別に書き込む。なお、調査対象者の負担を考慮し、パソコン、銀行、ビール・発泡酒類など商品を数ジャンル指定し、そのジャンルに当てはまる広告についてのみ書き込んでもらった。
 また、調査の前後に対象商品ジャンルの主なブランドについて認知やイメージを聞く調査も合わせて行い、広告接触前後のブランド意識の変化も見ることとした。事後調査については、日記式調査を受けたことによるバイアスを避け、記憶の沈静を図るため、日記式調査から3週間置いて行った。さらに、比較のために日記式調査を受けていない別の対象者にも事後調査のみを行った。

新聞の強い商品、テレビの強い商品

 日記に書き込まれた広告の件数を、「ブランド名・企業名まで記憶して書くことのできたインパクトのある広告接触」という意味で「インパクト・スコア」と名づけ、1件を1ポイント(pt)とした。
 図1はパソコンのインパクト・スコアだ。1人1日あたり0.84ptで、媒体を問わず、日々1つくらいは機種名まで認知するレベルでパソコンの広告に接触しているということがわかる。同じく銀行では、1.18pt(図2)、ビール・発泡酒類では1.76pt(図3)。
 媒体別に見ると、パソコンと銀行は新聞のスコアが高い。ビール・発泡酒類はテレビが最も高スコアだが、日記に書かれた時間帯別に見ると、朝は新聞と交通広告が上回る。ビール・発泡酒類の飲用は夜中心でも、それより早い時間帯に行われる購買を意識すれば、新聞と交通広告をうまく活用した展開も考えられるのではないだろうか。
 今回の調査では、WEBのスコアが想像以上に低かった。「見た広告のブランド名を書く」という設問が、広告とそうでない部分の境があいまいなWEBでの情報収集の実態に合っていなかったのかもしれない。
 クロスメディアにおけるWEBは、広告効果を測るツールであるという考え方もあり、広告に限定せずWEBというメディア全体で接触実態をきちんと測ることは重要だと考えている。次回調査では、WEBの特徴をふまえて、他の媒体とは別建ての設問とするなどの方策を検討したい。

図1 パソコン広告のインパクト・スコア
図2 銀行広告のインパクト・スコア
図3 ビール・発泡酒広告のインパクト・スコア


次のページへ→



消費行動とメディアの多様化に対応した広告効果調査とは何か
早稲田大学商学部教授 嶋村和恵氏→


新聞広告のクチコミ効果を視覚化する
KIZASI事業室 室長 潮栄治氏 同副室長 田中昇太郎氏→
もどる