特集 2006.5/vol.9-No.2

本を動かす。
雑誌タイアップ広告 新たな視点

 最近の新聞広告に増えているのが、雑誌とメーカーのタイアップ広告だ。マスメディアである新聞に、ターゲット・メディアである雑誌のタイアップ広告が出稿される理由は、どこにあるのだろうか。

2005年12月5日 別刷り 3月24日 別刷り 3月25日 別刷り

3月20日 朝刊 4月4日 朝刊


――雑誌とメーカーのタイアップ広告が、このところ増えてきたと思うのですが。
 新聞広告の使い方としては以前からありましたが、最近増えてきた意味は大きいと思いますね。雑誌にとってもメーカーとのタイアップ広告は、通常より大きなスペースで自社の広告が打てるというメリットがありますが、メーカーにとってはもっと別な大きな意味があります。
 雑誌は言うまでもなくターゲット・メディアです。メーカーがターゲット・メディアとのタイアップ広告を行う理由は、雑誌の世界観、つまり、新聞の中の雑誌社の広告というフィルターを通して見てくれる読者にこの広告を見てもらいたいからです。つまり、新聞の絶対的部数、読売新聞で言えば1,000万世帯の読者全員に届いてほしいとは考えていないと思うのです。
 まず、その雑誌に興味がある人という絞り込みがあって、その中で広告の商品、ブランドが好きな人という二重に絞り込んだ人たちをターゲットにしている。広告はより多くの人に届けばいいというマス広告的な思考では、こうした新聞広告企画のねらいは理解できないと思います。

――メーカーにとって、ターゲットに届けばいい広告をあえて新聞広告でやる必要性はどこにあるのでしょう。
 1つは、雑誌が新聞に定期的に広告を打つ理由と同じです。マスメディアの大きな役割は認知・知名です。それはテレビが圧倒的に強い。雑誌も創刊時にはテレビスポットを打ちますが、その後だんだん打たなくなる。一度大量認知させた後は、CMを打っても興味のある人しか関心を示さなくなる。一方、創刊後も定期的に使われるのは新聞広告です。新聞はテレビと同じマスメディアと一般には思われているので理解しにくいと思うのですが、新聞を雑誌のターゲットをより多く持ったメディアととらえれば、雑誌が新聞広告を使う理由はわかると思います。ターゲット・メディアという視点に立つと、テレビはあまりにもロスが多いのです。
 また、ターゲット戦略を成功させるためには、ピンポイントでターゲットに情報を届けるだけでなく、少しボリュームの大きいゾーンを狙うことが必要だということもあります。その要求を満たしてくれるのも雑誌に近い位置にいる新聞です。だから、雑誌と新聞とのコラボレーションは大事なのです。

2月28日 朝刊
2月24日 朝刊 6面 2月24日 朝刊 5面


生活者の感性レベル上昇

――新聞をターゲット・メディアとしてとらえるとは?
 今の日本の生活水準に対応したメディアの使い方を考えると、今後は新聞をターゲット・メディア、いや、ターゲット・マスメディアと考えるべきだ、というのが私の考えです。また、その方が新聞の活躍の場も広がると思うのです。なぜなら、今の日本はターゲット・メディアを中心に広告コミュニケーションを考えていかないと、消費に結びつかなくなっているからです。こうした考えを、私は「ターゲット・メディア主義」と呼んでいます。

――その理由というのは?
 マスメディアが大きな力を発揮したのは、新しい事物に対して大衆が共通の興味を持てた時代です。今の中国がまさにそうで、マスメディアが引き起こすブームに、大衆が疑問を持たずに乗っている。しかし、今の日本はそういう時代ではなくなっています。大きな理由は受け手の感性がレベルアップしたからです。「テレビが面白くなくなった」とよく言われますが、実際は生活者の感性レベルが高くなって、「面白くない」と思うようになったということです。世の中の人が“みんな”よりも、“わたし”という感覚に目覚め動き出しています。ファッションがその象徴的な例です。ファッションは最終的には自分のスタイルに行き着くものです。人々が“わたし”に目覚めた時代には、大きなブームは起こりません。
 同化現象によるブームづくりを得意とするマスメディアを使って大量消費を狙うのが、これまでの広告戦略でしたが、それが今の日本ではむずかしくなったということです。

――しかし、新聞がテレビに次ぐマスメディアという事実は変わらないと思うのですが。
 マスメディア体制とは何か、ということをもう一度考えてみる必要があると思います。マスメディア体制は「みんなに届く」、つまりリーチでメディアをランク付けします。さらに、それがテレビ、新聞、雑誌、ラジオという順番になった。それが最近はマスメディアとターゲット・メディアに二分され、マスメディアの中の1番目がテレビ、2番目が新聞、ターゲット・メディアの1番目が雑誌、2番目がラジオになってきています。そうすると、広告計画ではマスも必要だし、ターゲットに伝えることも重要だしということで、テレビと雑誌を使えばいいという発想になりがちです。 
 私のいう「ターゲット・メディア主義」というのは、こういうマスメディア体制の中のターゲット・メディアを言っているのではありません。広告はどんなメディアで流しても生活者に届けば効果は同じなのではなく、ターゲットに効果的に届かなければ購入に結びつかない時代になってきたということを言いたいのです。ですから、購入に近いメディアを組み合わせて、もう一度メディアの使い方を考えてみませんか、というのが私の提案です。それを具体化したのが、最近の雑誌とメーカーのタイアップ広告です。マスメディア発想では、絶対に今回のような新聞広告は出て来ないと思うのです。

3月15日 朝刊
3月20日 夕刊(セミマルチ広告) 24面 3月20日 夕刊(セミマルチ広告) 1面


購入者に最も近いメディア

――購入に近いメディアの組み合わせというのは、具体的にはどのようなものですか。

 購買プロセスに即して言えば、新聞は「認知・知名」、雑誌、ラジオは「興味・理解」、そして最後の「購入促進」をする役割が交通広告、街メディア、イベントなどを使ったセールスプロモーションということになります。つまり、新聞、雑誌、ラジオ、セールスプロモーションを中心とした戦略をとることによって、購入に近いところで戦略を立てるということです。このターゲット系のメディアから導かれるセールスプロモーション型のメディアを、私は「リーセンシー・メディア」と呼んでいます。リーセンシーというのは、購入者に一番近いメディアということです。
 ただし、新聞がこの方向で使いやすいメディアになるには、マスメディアという考え方から離れていかなければいけない。その時重要なのは、今まで以上に、テレビ面、社会面、生活面、スポーツ面といった「面」を重視していくことです。

――面によって、ターゲットに対応していくということですね。しかし、テレビはなぜターゲット・メディアになり得ないのですか。
 1つは、先ほども言ったようにターゲットロスが大きいと言うことです。それと、もう1つ大きな問題は、生活系メディアではあっても、消費系メディアではないことですね。たとえば、テレビのアナウンサーのタレント化やバラエティーばかりの番組構成を多くの人たちは快く思っていないと思うのです。大学生以下は、テレビの視聴率には重要かもしれませんが、彼らは特定の商品以外は広告のターゲットにはならないのです。広告ターゲットに合致しやすいという意味でも、新聞の面の重要性は出てきていると思います。

Webとの連動も変化へ

――Webの力も無視できないと思うのですが、ターゲット・メディアの考え方ではどうとらえているのでしょう。
 Webもマスメディア体制の中で考えていると、キャンペーンサイトで使うなど一ステージで使うに過ぎません。
 ところが、先ほどのターゲット系のメディアとWebを連動させると、認知・知名で新聞とWebはどういう連動をするべきかというファーストステージがあり、興味を促進するために雑誌・ラジオとWebをどうつなぐべきかというセカンドステージがあり、最終的にセールスプロモーションというサードステージがある。例えばそこではモバイルや購入・決済をするためのWebの活用が考えられます。そういうように、ターゲット系のメディアとWebが各段階で連動する形になっていく。ターゲット・メディア主義で考えていくと、Webの使い方は変わってくると思います。

生活水準に対応したメディア

――改めてお聞きしますが、ターゲット・メディア主義とは一言で言うと何なのでしょう。
 世の中の人たちのレベルに合わせたメディアの使い方です。つまり日本の生活水準に対応したメディアの使い方なんです。すでに日本の生活者は大衆ではありません。日本というのは団塊の世代の人たちを含めて、戦後60年、本当にがんばってきました。メディアもそうです。30年前と今で違うのは何かというと、メディアが違うのではなくて、そこで生きている国民ひとりひとりのレベルが違うということです。それをきちっと認識して、対応をしましょうということです。それがまだ、従来のメディアの使い方から抜け出ていないのです。

――ターゲットを狙うためのメディアは、パーソナルメディアではいけない?
 インターネットは個人の情報収集には便利なメディアですが、ターゲットとしては小さ過ぎます。大衆でも一個人でもない、個人が適度に集合したターゲット・メディアが今後注目されるのです。雑誌もそうですが、新聞にも海外のファッションブランドの広告は入る。しかし、テレビにはほとんど入りません。なぜならば、ファッションブランドがそういうマーケティングをしているからです。
 これまでマスメディアという大きさだけで、新聞離れをしていた広告主がいたと思うのです。でも、これからは戻ってきます。なぜなら、新聞はターゲット・メディアとして機能する最大の到達ボリュームを持ったメディアだからです。さらに、グラフィックで伝える、ものが動かない状態でじっくりと読ませる、文章によってきちっと考えさせるという新聞の特性が、成熟した生活者に対するメディアとしてますます重要になると思うのです。テレビの場合はシーンでしか覚えられません。

――でも、相変わらずテレビの広告費は増えていますね。
 テレビが全然だめだと言っているのではなくて、量としてのマスメディア主義も永遠に残ります。例えば、飲料や金融など、たくさんの人に伝えたい商品は常にある。ただ、業種のバランスは変わってくると思います。
 それはなぜかというと、メディア・フォーメーションが変わってきているからです。
 当たり前のことですが、広告主は商品が売れることを望んでいる。世の中にはテレビを中心とする生活系メディアと、ターゲット・メディアを中心とした消費系メディアがある。一見すると生活系メディアには人もいっぱいいるし、楽しそうに思える。しかし、実際に買ってくれる人がいるのは、ターゲット・メディアの消費系メディアなのです。
 雑誌のタイアップ広告は、マスメディアのターゲット・メディア化であり、新聞というマスメディアの中でターゲットの絞り込みをすることによって、企業の独自性を出す戦略の先駆けでもあるのです。

Toshihiko Kira
1956年生まれ。上智大学法学部卒業後、電通入社。クリエーティブ局を経て、営業局へ。百貨店などの宣伝・広告を担当。85年、雑誌局へ。外資系ファッションブランドを中心に雑誌広告に携わる。2004年、電通を退社。ターゲットメディアソリューションを設立。広告・出版プロデューサーとして幅広く活躍中。大阪芸術大学客員教授、日本女子大学講師。著書に「ターゲット・メディア主義―雑誌礼讃」「情報ゼロ円。―雑誌はブランディングメディアである。」(共に宣伝会議)などがある。
ターゲット・メディア主義




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