特集 2006.4/vol.9-No.1

クロスメディアをどう発想するか
企業サイトは広告効果を映す鏡

 企業サイトにとってクロスメディアとはどのような意味を持つのだろうか。Web広告研究会の副代表幹事・渡辺春樹氏に、企業サイトの視点からクロスメディアを語ってもらった。渡辺氏は本田技研工業のサイトに立ち上げ段階から携わり、日本の企業サイトの発展を牽引(けんいん)してきた一人でもある。

――「企業サイトとは何か」からお聞きしたいのですが。
 目的は、大きく分けて四つあります。1つ目は「集客」です。つまり、自社メディアにたくさん人を集めることが一番の目的です。2つ目は販売促進です。人が集まれば当然ビジネスに役に立ちますから、商品を売るために、多くのプロダクト情報やサービスを提供して、お客様をいろいろな形でサポートして、最終的な購買につなげることです。3つ目が、優良顧客のコミュニティづくりです。企業サイトに来る人の1、2割は「ファン」と呼んでもいい。そういう方と10年、20年といった長期のお付き合いをしていこうということです。そして4つ目が、最終的な目標として持っているもので、リアルワールドでのブランドに対してウェブが貢献することです。
 「集客」「販売促進」「コミュニティ」「ブランド」の4つが、企業サイトの大きな目的と考えています。

企業サイトの管理指標と目標

Honda=www.honda.co.jpの戦略と目標:2010年


――サイトはどのような指標で管理されているのですか。
 模式図(上記)があるのですが、サイトを訪れる人を、ホンダに多少関心がある「ホンダ関心層」、ある程度買ってくれそうな「潜在顧客」、そして「優良顧客」の3つのゾーンに分けて、ホンダ関心層には集客、潜在顧客には販売促進、優良顧客にはコミュニティというかたちで対応を考えています。
 集客の目標はトップページを通過したIPの数(ページビュー)を訪問者数と定義することにして、2010年に年間延べ5000万人が今の目標です。
 それから、2つ目の販売促進の領域は、商品情報などを見てもらうことが大事なので、2010年で10億ページビュー、新車を買うときに私たちのサイトを利用する比率、販売貢献度を50%ぐらいに持っていきたいと思っています。
 コミュニティの管理指標はメルマガの登録数にしています。これが2010年で100万人になればいいと考えています。
 ブランドに関しては、将来、ブランドに貢献する企業サイト(ブランドサイト)が増えてくると思いますが、その中でトップテンをねらいたい。だいたいそういう形で少し大それた目標を立ててやっています。

――達成の可能性は?
 自社サイトをマスメディアにするという言い方をよくしていますが、要はたくさんの人が来るサイトにしたいということです。トップページのアクセス数を訪問者数と定義していますが、サイトを立ち上げた96年が41万人、昨年が3700万人弱ですから2010年の5000万人は、まあ軽い……かもしれないし、そうでもないかもしれません(笑)。

――サイトの販売貢献度はどのように出しているのですか。
 サイトに来た人に、「車を買うときにネットを使いましたか」と質問をしています。1年でだいたい1万人から2万人ぐらいのサンプルが集まりますが、去年が59.3%です。アメリカにそういう調査をやる会社があって、日本でもお願いしています。日米で比較しようということで始めたんですね。ちなみにオールアバウトが2003年に同じような調査をしていて、そのときの数字が47.3%。同じ年のうちの数字が47.7%ですから、自社調査ですが、だいたい合っていると思っています。

――先ほど販売貢献度の50%が目標だと……。
 59.3%は、ネットで情報を得て車を買った人全体の数字です。ほかのサイトを見て買った人も含まれています。この中でホンダのサイトに来た人は、約6割ですので、全体での貢献率は36.9%となります。
 この調査から、ネットで情報を得て車を購入した人はどういうサイトを見て購入しているかをみると、車メーカーと販売店がほとんどで、検索サービスのサイトが少しある。今後、個人のホームページがメディアになると期待して数字を見ているのですが、個人のページは2004年で2.9%。去年も3%を超えたぐらいで、要するにあまり変わっていない。車の場合、個人のページが大きな影響力を持つ時代は、あと数年かかるだろうと思います。もちろん、それに備えて準備はいろいろやっているわけですが。

サイトで広告効果を測る

――インターネットの特性は、アクセスしてきた人の数字が直接わかることだと言われていますが、サイトを徹底的に数字で管理されていますね。
 私の経験からすると、むしろ宣伝や広報の世界は大変いい加減だと思っています。測れないものはコントロールできない。コントロールするためには、その効果をきちんと測ることが前提にあるはずなので、まず測りましょうということなんです。宣伝にもさまざまな測定手段が存在していますが、どうも疑わしいと思っています。
 サイトのブランド貢献という目的にも関係する話ですが、我々は企業のホームページを実は、新車発売や様々な企業活動のオペレーションの効果を見る「鏡」ととらえています。リアルワールドの活動を映すのがウェブのページという考え方です。

――サイトのアクセス数を見れば、広告キャンペーンの効果がわかるということですか。
 マスメディアを使ったキャンペーン効果をサイトの反応に映し込むことが可能ではないかということです。キャンペーンの成功や失敗をサイトに来たお客さんの量で見ていきましょうというのが、私の提案なんです。
 例えば去年、お客さんのアクセスが多かったのは「ステップワゴン」です。二輪は「フォルツァ」が反応がよかった。「フィット」も相変わらず人気がある、というのが見えてくる。
 ブランドは測れないという人が多いですが、ブランドというのはたくさんのお客さんの心の中にある思いが足されてできているものなので、サイトの反応を見ればそれを測ることは可能ではないかと思うのです。

1日50万人が成功の基準

――キャンペーンのための特設サイトと常設サイトのアクセス数は、単純には比較できないのではないかと思うのですが。
 だから、キャンペーンサイトはつくらないようにしています。サイトは「honda.co.jp」の一つしかない。その下の階層に、例えば「honda.co.jp/odyssey」「honda.co.jp/forza」というように、全部二階層目に商品が並ぶようにしています。お客様相談室、環境、技術、採用、広報も同じ第二階層です。それぞれを同じ階層に並べることによって、お客さんの関心量が測れる。そういうサイト設計になっていないと、測定はむずかしい。

――商品だけではなく、企業活動全般への関心も測れる?
 例えば、「F1」や「モトGP」という二輪のモータースポーツがあるのですが、その人気もわかる。去年の前半までは、「モトGP」の方がアクセスは多かったんです。ただ、悪いニュースの時もアクセス数が跳ね上がる。アクセス数というのは、お客さんの関心量ですから、プラスでもマイナスでも上がるんです。その辺は注意して見ないといけない点です。

――広告キャンペーン時のサイトのアクセス数は、どのくらい反映するものなのですか。
 一昨年の分析ですが、二階層目にある各商品のトップページのアクセス数とマスメディアにかけた金額の相関係数は全体で0.89です。かなり高い。一定量のお金を投入すると一定量のお客さんがホームページに来るということです。最も人気のオデッセイの相関係数は0.96にもなります。ただ、車種によって多少ばらつきがあって、ネットに少し弱いと言われている軽自動車は0.84と確かに多少相関が弱くなっています。

――実際、どのくらいのアクセス数があるのですか。
 各商品のトップページアクセスで見ていくと、例えばオデッセイは2003年の秋に出た商品ですが、月間で300万人ぐらい。2004年の5月に出たエリシオンが250万人ぐらいです。というように、お客さんに対して興味を呼んだ総量がある程度見えてきます。
 当然、関心を持つ層が限定されている場合はアクセスは少なくなります。レジェンドは、500万円を超える商品でセダンですから、50代が中心になる。そうすると月間で60万人、70万人くらいしかアクセスがありません。ただ、ある程度売ろうという新車を出した場合は、1日50万人来なかったら、そのキャンペーンは失敗だったという見方を実はしています。

ネット広告の評価基準

――そうすると、メディアの評価もアクセス数になる?
 ネット広告の機能を何かと定義すると「われわれのサイトに呼び込むための入り口」ということです。何人呼び込んだかがすべてで、そのサイトのページビューやインプレッション(広告の表示回数)は気にしていません。クリック数だけ。これは98年からずっと変わらない定義です。さらに言うと、社内では実は3か月間の購買プロセスを追跡して、何人買ったかの推定値を出していますが、それに対しての貢献も見ています。
 呼び込んでも全然購入につながらないケースは結構あります。カタログ請求量が増えた場合は買う気のある人が多くなったという傾向が強いのですが、3か月後にその商品を買ったかどうか追跡調査をかけているので、購入効果としてのメディアの価値はどのくらいかは、だいたい見える。

――メディアとしては、厳しいですね。マスメディアの効果も同じ指標で見ていこうということなのですか。
 それで昨年、その効果を測るべく実際にやったものがあります。夏休みの2時間のテレビの特番なのですが、120秒のインフォマーシャルを5本つくったんですね。サイトのアクセスの変化を時間で追っていくと、1回目のオンエアで小さい山ができて、2回目、3回目と振幅が次第に大きくなっていく。見ている人の興味がだんだん高まってきて、サイトにアクセスする人が少しずつ増えて来るということなんです。普通のCMでは、CMを流しているときの変化はほとんどありませんが、月単位で見ると見えてきます。
 今までの視聴率調査では、翌日にならないとわからないし、累積効果もわからなかった。それがサイトの反応ならわかるし、リアルタイムで見える。

コントロール可能な広告に

本田技研工業www.honda.co.jpのトップページ
――新聞広告の例で分析されたものとしては。
 「子どもアイディアコンテスト」というイベントを毎年やっているのですが、新聞広告を出すと、掲載日にアクセスは1000人くらい増える。このイベントは優勝者の小学校にアシモが訪問するなど、話題をずっとつないでいく仕組みになっています。これを見ていくと、広告を掲載したその月よりも翌月のほうがアクセスが多いんです。だんだん広まっていく様子が見える。最終的には通常より3000人くらいアクセス数が増えました。ですから、新聞広告も必ずしも掲載日だけの効果だけではなく、興味をつなぐ仕掛けがあれば、アクセス数が少しずつ膨らむ仕組みはつくれると思います。
 少し古い例ですが、シビックの前回のモデルチェンジの1か月前に、全国の新聞だけを使ってティーザー広告をやったことがあります。そのときのアクセスは14000人増えました。このアクセス数をどう見るか。ただ、このアクセスの総量を例えばテレビCMやチラシの費用対効果と比べれば、決して悪い数字ではないのです。
 私が言いたいのは、メディアの特性の違いはあるにしても、ほぼ同じ土俵で効果を測ることができるようになったということです。GRPや販売部数など今まで違った基準で測っていたメディアの効果をサイトのアクセス数という同じ基準で見ることで、宣伝の世界のあいまいだった部分を変えられるのではないか。
 もちろん、サイトのアクセス数だけが広告効果のすべてではないことも理解しています。そうではなくて、たくさんの人が関心を持ったり、動いたりすれば、その一部がサイトのアクセス数に鏡のように反映する。それを基準にすることで、初めて広告をコントロールするという話ができるようになるし、費用対効果も公平に見られるようになる。そういうふうに仕事のモデルを変えてみませんか、というのが私の提案なのです。



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旭化成ホームズ マーケティング総部 営業推進部 竹尾哲哉氏→


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