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「30歳未満で新聞の求人広告を見たことがある人間を知らない」
ニューズ・コーポレーションの総帥であるルパート・マードック氏が英メディア業界紙「プレス・ガゼット」の単独インタビューの中で語った言葉だ。ブロードバンド環境のインターネットに慣れた世代は新聞をめくって職探しをするようなことはせず、インターネットで探す。冒頭の言葉に多少の誇張はあろうが、先進諸国では多かれ少なかれ真実であろう。
例えばイギリスの場合、インターネットの求人広告費と全国紙のそれの移り変わりは右下の表のようになる。
特に2002年以降、インターネットの伸びが右肩上がりなのに対し新聞は横ばい。横ばいに見える新聞は、インフレ率を考慮に入れると実際は小幅な下落だ。急激な伸び方やインターネット広告市場全体の活況を考慮すると、2006年にはインターネットが全国紙の売り上げを上回ることは間違いないだろう。
新聞自体は求人をはじめとする案内広告収入を減らしているが、新聞社のインターネットサイトにおける案内広告は増加している。WAN(世界新聞協会)の資料によれば、全世界の新聞社の案内広告収入におけるインターネット広告の占める割合は2003年で5.1%、04年には6.1%、05年には7.8%だった。つまり、うまく流れに乗り、新聞が失う額以上にインターネットから得る額を増やしていけば、新聞社としては収入を失うどころか増加させるチャンスであると言える。
インターネットからの案内広告収入を増やそうという試みはほとんどの新聞社が行っているだろうが、特に壮大なものがオランダにある。
同国で最大部数を誇る「テレグラフ」紙は、2004年9月に個人間取引サイトの「スパーダーズ」を立ち上げた。競合として設定したのは、イーベイ傘下で同国最大の個人間取引サイトである「マルクトプラーツ」。なお、「スパーダーズ」というブランドは1922年から同紙が読者間取引の案内広告ページの名称として使用してきたものだ。
先達に新参が対抗するためにとられた戦略のうち目を引くものは以下の4つ。
まず、立ち上げの時点でライバルに対抗しうる情報量を確保したこと。情報のないサイトにはユーザーも広告主も集まらないという観点から、「マルクトプラーツ」に対して負け組となった複数の企業からデータベースを買い受けるなどし、初めて訪れるユーザーに失望感を与えなかった。
次に、優良な人材を新たに雇い入れるなどし、「マルクトプラーツ」に負けないITチームを組織したこと。
そして、ユーザー数や売り上げが軌道に乗るまで、広告の登録料を無料としたこと。まずはユーザーを集めることに主眼を置き、その後で収入を得ていこうという戦略をとった。
最後に、サイト開設から18か月間で8億円以上もの宣伝費を使ったこと。
サイトの構築、データベースの買い受け、人材の確保に要した費用に宣伝費を合わせると巨額な投資となり、労力も考えると、「テレグラフ」がいかに本気だったかというのが見てとれる。
結果、「スパーダーズ」の月間ユニーク・ユーザー数は約400万人に到達。約1年半で400万人というのは、オランダの人口が約1600万人であることを考えると驚異的な数字だ。売り上げの面では、サイト単体で2007年の黒字化を見込んでいる。
日本の場合、印刷媒体もインターネットも含め、案内広告のうちある程度の割合が一社に集中している感がある。しかし、今であればこの構造を変化させることができるのではないかと思うが、いかがだろうか。
●イギリスにおける求人広告費の推移
(百万ポンド)
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
インターネット
38.3
46.4
55.7
80.6
121.1
全国紙
272
222
172
167
173
※出典:The Advertising Statistics Yearbook 2005(WARC)
(3月7日)
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