新聞広告の色彩学 2006.3/vol.8-No.12

色たちよ光と走ろう
1月21日朝刊  NTTドコモ 12月5日朝刊  チョーヤ梅酒 1月30日夕刊  三越 1月1日朝刊  本田技研工業
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 年のスタートに当たり「春立ちて新しい思い」を例年のように考えたけれど、このところの世情は何やらおかしい話ばっかりで腹立ちてそうろうの感のほうがつよい。しかし、新聞広告は楽しい色彩と明るい希望に満ちて、今年も元気イッパイ走るよう祈念しよう。

 ということで、劈頭(へきとう)はキッズケータイに「コドモの毎日に、ドコモの安心を」語ってもらおう。ハート形の手の窓からのぞいて見えている子供たちは、周りの景色などよりずっとハッキリしていて明るいから、コピーの言葉が見事に裏書きされた。しかし、この効果は指先の色とのコントラストだけではない。人間の眼の中心部分だけ使って見た場合には、確かにこういう効果で見えるという生理学の演出作戦にわれわれが完全に同調したのだ。

 次なるは、陳列棚にずらり並んで「すこやかな、おいしさ」を謳うチョーヤの梅酒。一品一品がライトに照らし出されると、時間のチカラを惜しみなく使った香気が黄色とブラウンの光の間からかがよってくるようだ。カガヨウもニオウも空間を占める点で共通だが、昔の人もきっとそんな連想をしたのか、棚の光色の仲間の淡い色調を香色と呼んできた。

 次の広告には、深いチョコレート色の空間に美女一人静かに座って、三越デパートのバレンタインデーのスイーツワールドへと誘う。チョコレートの原料はもちろんカカオだが、チョコレート色は同じ原料から作られるココア色とは少しも似ていない。ずっと落ち着いて上品で、その色自体にも香りが感じられる。さりげないその魅力がモナリザのようだ。

 最後にホンダのアシモ君が「夢がかなうって、楽しい」と走っている。古い伝統をもつヨーロッパの街中らしい一角のもう春が来ている住宅の中庭で、光を浴びて子供たちと走る走る。未来は夢から生まれる。「これからかなえるって、もっと楽しい」夢の力だ。そこに黄や赤や青色たちがひかり輝いているが、こんな色たちを夢の力の色と呼ぼうカナ。
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