From Overseas - NewYork 2006.3/vol.8-No.12

「最強のCM」に見えた陰り
 スーパーボウルはアメリカの国民的娯楽のひとつであるプロフットボールの王座決定戦で、試合が行われる2月最初の日曜日は「スーパーボウルサンデー」と呼ばれている。その日は家族や気の置けない仲間がテレビを囲んで飲み食い、騒ぐことからアメリカで最も多くのパーティーが開かれる日といっても過言ではない。
 ニールセンメディアリサーチの調査によると、96年から05年までの10年間の平均視聴者数は約8,798万人にものぼる。日本でいえば紅白歌合戦といったところだろうか。むろん、30秒CMの広告料金はアメリカどころか世界で最も高いといわれている。同じくニールセンによると今年は250万ドル(約2億8,750万円)と推定されており、通常の30秒CM枠の5倍に相当するという。
 CMたった一枠のためにこれだけの予算が投下されるだけあって、各社ともクリエイティブには腕によりをかける。ユーモアに富んだものから、芸術性に優れたもの、時事問題を絡めたものなど、試合の中身よりもむしろCMの方が話題になることもある。
 ニューヨークタイムズやウォールストリートジャーナルといった主要紙のビジネスセクションにはメディア欄、もしくはアドバタイジング欄があり、ほぼ毎日メディアや広告業界の動向を伝えている。試合翌日ともなれば、こうした欄には各CMに対する講評が、さらには一般視聴者によるCMの人気投票の結果がウェブサイト上で公開される。こうした事実からも、スーパーボウル中継で放映されたCMがいかに話題となってきたかが分かってもらえると思う。
 そのスーパーボウルのCMが今曲がり角を迎えているようである。
 かつてはスーパーボウルのCM枠に年間予算のすべてを投入する広告主もあったくらいだが、今年は試合の5日後にあたる2月10日からトリノ冬季五輪が行われることもあってか、予算をどう配分するか迷った広告主も少なくない。アメリカ五輪チームのオフィシャルパートナーのうち、スーパーボウル最大の広告主であるアンハイザー・ブッシュ社(バドワイザーの醸造元)と今年の試合が行われたデトロイトを本拠とするゼネラルモーターズは五輪とスーパーボウルの双方にCMを流したのに対して、昨年までスーパーボウルに出していたマクドナルドやVISAは五輪のみに絞った。
 また、アメリカにおいてもデジタルビデオレコーダー(DVR)の普及による「CM飛ばし」の影響は否定できず、CMをテレビ以外のメディアで補う傾向が強まっている。
 かつては中継以外ではなかなか目にすることが出来なかったスーパーボウルのCMを今ではヤフーやグーグルといったネット上や映画館でも見られるようにしている。中にはバーガー・キングのようにCMの製作過程や実際には放映されなかった部分を編集して公開する広告主もあらわれた。
 映像だけでなく、さらに一歩進めて、新聞広告とのメディアミックスを行った広告主もある。試合翌日となる2月6日付USAトゥデーのスポーツセクションをめくると、ジレット、ゼネラルモーターズ、フォードの3社がそれぞれ前日のCMで取り上げた商品の全ページ広告を出稿していた。試合内容を紙面で反すうしながら、新聞広告でCMを「復習」する試みのようである。
 映像の中にのみ埋もれてしまうよりは活字メディアである新聞広告を活用し、他との差別化を図ることで広告効果を高めることを狙った、多メディア時代を反映したメディアミックスのひとつの形であろう。
 
2月6日 ウォールストリートジャーナル紙 2月6日 USAトゥデー紙 2月6日 USAトゥデー紙
2月6日 ウォールストリートジャーナル紙(左)、2月6日 USAトゥデー紙(中、右)
(2月6日)
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