特集 2006.1・2/vol.8-No.10・11

メディアの融合がもたらすもの
若者をターゲットに「聞く」朝刊

 読売新聞東京本社は、2005年10月24日からヨミウリ・オンライン(YOL)上で「読売ニュースポッドキャスト」の配信を始めた。パソコンや携帯デジタル音楽プレーヤーなどに音声によるニュース番組を取り込んで聞くもので、新聞を読まないとされる若年層に、まずは気軽に耳から新聞に接してもらいたいという意図から始めたサービスだ。
 携帯デジタル音楽プレーヤーにダウンロードすれば、いつでもどこでも手軽に最新ニュースがチェックできる。新しい広告媒体としての活用も期待されている。

毎朝配信の“20分番組”

 読売ニュースポッドキャストは、スポーツを含めた総合ニュース約10本と配信当日の朝刊に掲載される社説1本、夕刊の1面コラム「よみうり寸評」から構成された約20分の番組です。
 イメージは、「聞く朝刊」です。ニュース原稿は、メディア戦略局編集部が制作しているラジオ局向けのものを使っています。ラジオ番組などを手がける「オービチューン」(東京都新宿区)が未明から収録を開始し、平日の朝六時にYOL上で音声ファイルとして公開しています。配信システムを提供しているのは「ニフティ」(同品川区)です。
 「朝刊」ですから、「配達」もされます。
 ポッドキャスティングを快適に利用するには、アップルコンピュータ提供の「iTunes(アイチューンズ)」をはじめとした専用ソフトをパソコンにダウンロードし、番組を登録する必要があります。いったん登録するとソフトを起動するたびに自動的に最新の音声ファイルが取り込まれます。
 そのファイルを携帯デジタル音楽プレーヤーに転送すれば、好きな時間や場所で、その日の主要なニュースを確認できます。転送は、「iPod(アイポッド)」など一部の携帯デジタル音楽プレーヤーには自動で、その他のプレーヤーなら手動でできます。

ポッドキャスティングの利用方法
ポッドキャスティングの利用方法


新聞への親近感を若年層に

 番組の配信には3つの狙いがあります。
 1つは、ユニバーサルサービスとして利用されることです。読売ニュースポッドキャストを読むのはプロのアナウンサーですから、目が不自由な方々に新聞社のニュースを、質の高いラジオを聞いているように楽しんでもらえます。
 2つ目は、若年層への「読売」ブランドを浸透させることです。05年11月にJストリームなどが行った調査によると、携帯デジタル音楽プレーヤーの所有率は21.5%。男女別では男性29.6%、女性16.2%でした。年代別では10代が33.8%、20代が29.4%となっていました。一方で、総務省の「情報通信に関する現状報告」によると、若年層ほど新聞にかける時間が短くなっています。新聞離れが進んでいるとされるこの年齢層に、番組を通じて読売新聞に親しんでもらい、将来の購読者になってもらえればと考えています。実際、数多くのブログで、弊社や番組に対する好意的な評価が投稿されています。

広告メディアとしての可能性

 最後の狙いは、新たな広告メディアとして利用されることです。媒体特性や番組の内容から考えると、大半の聞き手は、「購買意欲の高い」「若年」層です。趣味や娯楽のために携帯デジタル音楽プレーヤーを購入し、ニュース番組から知識を得たいと考えている欲求が強いタイプ。経済的な余裕もあり、新しいものや興味を引かれたものに飛びつく傾向も強いと思われます。
 ラジオ局が番組配信を精力的に進め、個人による発信も草の根的に広がっています。05年が「ブログ元年」と呼ばれているように、06年は「ポッドキャスティング元年」になるかもしれません。

ポッドキャスティングについてさらに詳しく
Q. どういった仕組みで配信されるのですか
A. ポッドキャスティングでは、ブログなどで使われている更新情報を通知するための技術 「RSS」(Really Simple Syndication)が使われています。このRSSを専用ソフトに登録すると、お気に入りの番組が更新されるたびに、ソフトが自動的に最新番組をダウンロードします。サイトをわざわざ訪れて、新しい番組がないか確認する手間が必要なくなります。
Q. 専用ソフトを使わなければ聞けないのですか
A. 多くの番組はmp3というファイル形式で配信されています。ポッドキャスティングの仕組みを使わなくても、ほとんどのパソコンに入っている音楽再生ソフトで番組を聞くことができます。
Q. 配信できるのは音声だけですか
A. 音声と一緒に静止画を送ることもできますし、現在は動画も配信できるようになりました。新しいiPodであれば、外出先でも動画を見ることができます。
Q. 広告媒体としての利用方法は?
A. 番組に音声CMを挿入する方法と、PR番組を配信する方法の2通りが考えられます。ポッドキャスティングは配信コストが非常に安いので、新商品のPR番組などを簡単に配信することができます。ある自動車メーカーは、2005年10月に開かれた「東京モーターショー」にあわせて、ブースに展示されている車を紹介する番組を配信していました。
Q. 海外でも盛んなのですか
A. 当初はブログの音声版として、個人レベルで草の根的に広がりました。しかし、米国では現在、ESPNなどのラジオ局、CNNやABCなどのテレビ局だけでなく、新聞社や出版社など紙媒体のメディアも番組を配信しています。ABCの番組には通信会社の音声CMが挿入されており、すでに広告媒体として利用が始まっています。
米国は日本と違って車を多用する生活スタイルですが、カーステレオにiPodを接続できる車も販売されており、通勤途中にポッドキャスティングのニュースや天気予報などを聞くスタイルが定着しつつあるそうです。



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