特集 2006.1・2/vol.8-No.10・11

メディアの融合がもたらすもの
携帯で見る地上デジタル「ワンセグ」

 「ワンセグ」とは、地上デジタル放送のモバイル向けサービスのことだ。地上デジタル放送の番組が携帯電話などを使って外出先や通勤途中で楽しめるサービスが、いよいよ今年4月1日からスタートする。「ワンセグ」とはどんな技術なのか。地上デジタルの普及を推進する地上デジタル放送推進協会の木村政孝氏と藤本一夫氏に解説してもらった。

 これまで、地上アナログ放送を無料で受信できるテレビ付き携帯電話や小型の専用端末で視聴する有料の移動体向け衛星デジタル放送”モバHO!“はあったが、「ワンセグ」は無料の地上デジタル放送。2003年12月の地上デジタル放送開始のころから鮮明な画像で移動体受信が可能な「ワンセグ」の実施が待たれていた。すでに、NTTドコモ、auからは、対応機種が発表・発売されている。ワンセグの受信端末として考えられているのは、携帯電話のほか、カーナビやノート型パソコン、専用ポータブルテレビなどで、今後多種多様な受信機が登場すると見られている。

――「ワンセグ」は家庭の地上デジタル放送と同じ電波を使って放送されるということですが。
 日本では、ISDB-Tという独自に開発した放送方式を使っています。今までのテレビの電波帯域と同じ6メガヘルツという周波数の幅があり、その中に収まるような伝送方式ですから、デジタル放送になってもテレビのチャンネルは変わらないわけです。しかし、デジタル式にすることによって、アナログ放送の4倍以上の情報量が送れるようになります。その6メガの中でハイビジョン放送のサービスができて、なおかつモバイル向けのサービスができるような仕組みを持っています。

――携帯向け地上デジタル放送をなぜ「ワンセグ」と呼ぶのでしょうか。
 日本の放送方式では、6メガの帯域を13のグループに分けています。その1つ1つをセグメントと呼んでいます。その13あるセグメントの真ん中の1セグメントを使って、映像や音声、データを送る携帯向けのサービスを行うことから「ワンセグ」という呼び方、愛称にしたということです。1セグメントだけの少ない情報量を扱いますから、それだけ受信機の処理が簡単になり消費電力を抑えられるため、携帯や移動端末に向いています。
 それから、残りの12セグメントを使ってハイビジョン放送を行いますが、これにはもう1つ使い方があって、12セグメントを今度は3つに分けると4セグメント×3になります。そうすると、これまでのテレビと同じぐらいのクオリティーの放送(SDTV)が3つ送れる。つまり、3チャンネルとモバイル向けのサービスができます。そういう組み合わせができるように13という数字にしたということなんです。

――「ワンセグ」は日本独自の規格ということですか。
 13にセグメント化しているのは、日本だけです。ヨーロッパの放送方式は6メガの帯域を1つのセグメントとして見ています。同じ電波でハイビジョン放送と携帯向けサービスを行うのは日本だけです。
 それから、技術的な話になるのですが、セグメント化のメリットは、送るときの変調方式をセグメントごとに変えられることです。シンプルな変調方式を取ると誤り率が少なくなる代わりに、送れるデータ量が少なくなる。複雑な変調方式を取ると、電波の伝わり方によって非常に誤り率は上がるがデータ量が多く送れる。つまり、携帯サービス向けには誤りの少ないシンプルな変調方式をとり、ハイビジョン放送にはデータが多く送れる複雑な変調方式を取ることが日本の放送方式はできるわけです。これが、同じチャンネルでハイビジョンとモバイル向けサービスを両立できるISDB-Tの特徴です。

――「ワンセグ」の画質はどの程度でしょう。
 ハイビジョン放送は17Mbpsぐらい、ワンセグは300Kbpsぐらいの伝送量です。そうすると50倍強データ量が違うわけです。同じセグメントで比較すれば、携帯向けに送っているハイビジョン放送の情報量はワンセグの5倍くらいになります。ただ、携帯は表示画面が小さいですから、画質もかなりいいですね。

ワンセグの仕組み
ワンセグの仕組み


当面は地上波と同じ番組で

 ワンセグでは放送の下にテキスト情報を表示する部分がある。サービスを開始する当初に放送されるコンテンツは、地上デジタル放送とまったく同じもの(サイマル放送)になるが、映像と同じ画面に文字データを表示できるため、番組の関連情報や公式サイトへのリンクを表示するといったことが可能になる。
 たとえば、通信機能と連携させれば視聴者が番組のクイズに参加したり、eコマースサイトで番組の関連商品などを買ったりできるようになるほか、ゴールデンタイムの番組紹介をデータ放送で流すこともできる。また、災害時に通常の放送と一緒に災害情報を常に配信できる。
 ただし、放送画面と通信画面の混在はできないことになっている。

――4月1日からの「ワンセグ」は家庭向けの地上波デジタルと同じ放送を流すサイマル放送ということですが。
 各局が総務省から受けた免許基準として書かれたということです。テレビCMに関しても同じものが流れます。差しかえはできません。

――技術的にはできるのでしょうか。
 できます。放送免許は5年に1度書き換えで、前回は2003年に交付されたので今度は2008年です。ですから、そのときにサイマルということが外されるかもしれない。

――画面を切り替えないと通信モードになれないということですが。
 ワンセグの画面には、技術的には3つの情報が表示可能です。1つはテレビの映像、2つ目は放送局のデータ放送で送ったデータ、それから通信回線から取ったデータです。そのときに、データ放送で送ったものは放送事業者が責任を取れますが、ウェブから取った情報は、放送事業者としては責任が取れないということです。
 番組と一緒にウェブの通販サイトが1つの画面上に表示されてしまうと、あたかも放送事業者がやっているように見えてしまう。それで混在になるような表示はしないでくださいというのが放送事業者の基本的な考えです。
 もともとデジタル放送そのものが双方向サービスができるような仕組みを持っていますから、データ放送と連動すればいろいろなことができます。家にいてテレビを見るときと、携帯で見るときでは、おそらく情報に対するニーズが違うでしょうから、いずれは独自の放送になる可能性もあると思います。
 「ワンセグ」は4月1日から関東広域圏、中京広域圏、近畿広域圏など29都府県で放送が開始される。その他の地域でも地上デジタルの放送開始に合わせてサービスを開始する予定で、今年12月までには全国の放送局が「ワンセグ」放送を開始する。
 携帯電話で地上デジタルテレビが見られる「ワンセグ」は、典型的な「放送と通信の融合」の最初の事例になる可能性を秘めている。

「ワンセグ」サービス開始ロードマップ



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