特集 2006.1・2/vol.8-No.10・11

メディアの融合がもたらすもの
テレビ局が始めたブロードバンド配信

 テレビ局自らが動画番組をインターネットで配信するサービスが始まっている。日本テレビが2005年10月27日深夜からスタートした「第2日本テレビ」がそれだ。テレビ局がブロードバンド配信事業を始めた意図はどのあたりにあるのだろうか。また、そこでどのようなビジネスモデル、コンテンツの提供を考えているのだろうか。

――日本テレビがブロードバンド配信を始めた理由は?
 我々は「動く絵」を50年つくってきています。自分たちが制作した「動く絵」を生かせる場所をネットと放送の融合の中で探していこう、ということがまずあります。テレビは一方的にこちらから映像を送るだけですが、インターネットは双方向ですから、視聴者、インターネットの場合はユーザーと言うのでしょうが、そういう使う人のニーズにビビッドに反応できる。そこにテレビ向けの番組をうまく作り替えてやれば、十分魅力あるコンテンツ供給ができるのではないか。それが大本の考えです。
 放送局には番組を作ることと、それを地上波という電波を使ってディストリビュート(配信)するという二つの大きな業務がありますが、ディストリビュートの仕方はやはりテレビとインターネットでは違う。ですから、今回の場合は放送局の作る力を最大限生かしていこうというのが発想のベースにあります。つまり、演出力、脚本、キャスティング、それからカメラワーク、見せ方も含めた制作力で、インターネット向けに面白いものを作るということです。

――ストレートにお聞きしますが、収益を見込んでいる?
 そういう意味でいえば、広告収入であれ、有料収入であれ、新たな商品価値をつくるべく事業として取り組み始めたということです。

――第2日本テレビは、コマーシャルを見ることによってポイントがもらえ、そのポイントでも有料コンテンツが見られるというユニークな仕組みにしていますが、実験的な意図もあるのでしょうか。
 実験ではないですね。真剣です(笑)。すべてやったことのないことなので、模索しながらというのが正しい見方かも知れませんが、有料モデルがいいのか、広告モデルがいいのか、今後を見て判断できる状況を作っておきたいという意図もあって併用した。ですから、事業として本格的にスタートしたと理解いただければいいと思います。

広告モデルか有料モデルか

――USENのGyaOは視聴が無料の広告モデルです。利用者を増やすには、その方が有利だと思うのですが。
 2つの財布を持っておくことが重要だと思っています。最初から完全に無料にしてしまうと有料にするのはむずかしいでしょうし、全部有料にしてしまっても無料にするのは非常にむずかしくなる。コンテンツによってお金を払ってでも見たいものもあれば、広告を付けてたくさんの人に見てもらったほうがいいものもあると思うのです。

――それぞれに向いているコンテンツは何かを見てみようという意図もある?
 あくまで机上のシミュレーションですから、それを確かめたいということもあります。
 たくさんの人に見てもらうことによって媒体価値を高め、番組に広告を付けていくというビジネスをテレビ局は50年間やってきていますが、インターネットに向いた新しい方法を模索したいということで、広告の付け方も今回のような形にしました。今までとは違う試みをしています。

――コンテンツの長さも、テレビ番組よりは短いものが多いですね。
 現在の環境だったらそうでしょうね。その内、テレビの中にパソコン画面が入るようになると思いますが、現段階では視聴習慣というか、テレビとパソコンでは見方が明らかに違う。ただ、第2日本テレビは、オリジナルのコンテンツを展開していくことが基本線なので、パソコンの視聴環境がどう変わっていっても、それに合うものを作っていけばいいと思っています。

第2日本テレビのTOP画面   福引所
第2日本テレビのTOP画面:第2日本テレビは“映像コンテンツの商店街”をイメージした映像配信サービス。サイトには現在5000本のコンテンツが用意されている。(c)NTV   福引所:「商店街」の「福引所」でコマーシャルを見ると5〜50ポイントがもらえる仕組み。第2日本テレビのコンテンツの視聴にはユーザー登録が必要で、有料コンテンツの課金は1ポイント1円相当のポイントシステムだが、「福引所」でもらったポイントで有料コンテンツを見ることができる。(c)NTV


オリジナル路線と放送との融合

――コンテンツの可能性としては、過去のストック、現在の放送中の番組、番組とは別の完全にオリジナルなものの3つの方向があると思うのですが。
 番組をそのまま流すことは考えていません。まったく地上波ではやったことのない企画をインターネット向けにやっていくという方向と、過去のストックという方向で考えています。ただ、過去に放送したものもパソコン端末に合わせた形に作り替えていますから、それもある意味ではオリジナルと言えると思います。

――番組を見逃した人のために、ネットで同じものを流すということは考えていない?
 それは考えていません。しかし、地上波の番組と連動したものはどんどん作っていくつもりです。例えば、ドラマの第1回の放送が始まる前に、そのビフォア・ストーリーをネットで見せることも考えています。ドラマが終わった後も、もちろんあり得ます。DVDの特典映像に入っているような部分をネットで見せることを考えています。

――地上波ではやっていない新しい試みとしては?
 アカデミー・カンヌ・ベネチア・ベルリンの世界四大映画祭の受賞およびノミネート作品を配信する『ショートフィルム屋』は、完全オリジナルですね。それから、地上波で終了した人気番組を第2日本テレビで再開することも始めています。「ブラックワイドショー」もその一つです。「3分クッキング」は逆で、現在も続いている料理の長寿番組ですが、そのアーカイブを駆使した食情報レストラン『味と舌』というコーナーのコンテンツになっています。

――動画付きの料理のアーカイブということですか。
 「3分クッキング」の放送開始は1963年ですが、初期のものを除いて膨大な番組のストックがあります。それをインターネット用に月別に検索できるようにして、それとは別に、「ボジョレ・ヌーボー」「クリスマス特集」「お正月料理」「無敵の鍋」などテーマ別に動画とレシピを紹介しています。

――木曜の深夜に地上波で第2日本テレビの連動番組をやっていますね。
 基本的には会員を増やすためのPRが目的ですが、番組に出演したゲストに放送終了後スタッフルームに来てもらって、放送で話しきれなかったことなどを話してもらい、第2日本テレビでライブ配信しています。

――ドラマやバラエティー番組の総集編みたいなことも狙っている?
 それをもっとビビッドにしてネットと放送の融合を図ろうということです。ゴールデンタイムやプライムタイムの番組との連動も今後は増やしていこうと考えています。すでに「伊東家の食卓」の終わりには、第2日本テレビの『伊東家ランド』の紹介をしています。サイトに行けば、見たかった裏技の検索ができる。そういうことは、今までテレビだけではできなかったことです。

ショートフィルム屋   食情報レストラン『味と舌』
アカデミー・カンヌ・ベネチア・ベルリンの世界四大映画祭の受賞およびノミネート作品を配信する『ショートフィルム屋』。(c)NTV   食情報レストラン『味と舌』では、長寿番組「3分クッキング」のアーカイブを駆使した料理のライブラリーが提供されている。(c)NTV
第三惑星放送協会第二ラヂオ    
「第三惑星放送協会・ブラックワイドショー」は、2002年10月〜2003年3月、土曜深夜に放送された伝説の深夜番組だが、第2日本テレビに『第三惑星放送協会第二ラヂオ』として復活した。今回は、個性豊かなキャスター陣が、あえて声だけで伝える、一風変わったラジオ局という設定になっている。(c)NTV    

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