From Overseas - NewYork 2006.1・2/vol.8-No.10・11

DTC広告の弊害への処方せん

 ここアメリカでは早くから患者自身が自分の受けるべき治療を選択するという姿勢が根付いているせいか、医師の処方せんを必要とする医療用医薬品についての情報を一般消費者に直接伝える広告、いわゆるDTC(Direct To Consumer)広告が盛んで、アドエージ誌によると2004年のDTC広告費は対前年27.3%増の44.3億ドルを達成、今や広告市場の中で確固とした地位を築いているのが分かる。
 日本ではアメリカと比べ規制が厳しく、DTC広告上での製品名告知が認められていないためあまり普及しておらず、製薬会社の広告は疾病の啓発と治験の告知にとどまっているが、それとは対照的にアメリカでは規制緩和が進んでおり、製品名の露出はおろか、効能についても訴求出来る。このDTC広告に対しての弊害が指摘され、ここに来て風当たりが強まっているのである。
 FDA(食品医薬品局)が2003年に医師500人を対象に行った調査によると、43%が「広告されている医薬品の効能が誇張されている」と回答、65%が「副作用に関する説明が不十分」と回答している。また、59%が「患者に特定の医薬品を処方するように要望された」と回答、そのうちの57%が「患者が要望する医薬品を処方した」と回答する一方で、47%が「要望を受けたことに少なからずプレッシャーを受けた」と回答しており、適切な処方が行われなかったケースも少なからずありそうだ。
 上記との因果関係は明らかではないものの、2004年9月にはメルク社の関節炎治療薬「Vioxx」が副作用によって心臓発作や脳卒中を引き起こす可能性が高いとして自主回収に追い込まれた。実際、同医薬品の服用が原因と思われる死亡例も出ており、ニューヨークタイムズの記事によるとメルク社はこのことによって現在、約7,000件の訴訟を受けている。また、2005年の4月にはファイザー社の「Bextra」もFDAによって市場撤退の勧告を受けた。
 このような状況に陥ったため、議会や消費者団体からDTC広告に対する批判の声が上がり、11月初旬にはFDAによる公聴会が行われた。一方、公聴会によって行政が規制に乗り出すのを避けようとしたのか、ブリストルマイヤーズスクイブ社が6月に、ファイザー社は8月にそれぞれDTC広告に関する自主規制を設け、それぞれ新薬が市場に出てから一定期間は医師への啓発期間として広告出稿を控えることをはじめ、副作用や処方には医師の適切な診断が必要なことを広告で周知徹底する方針を打ち出した。
 さらに、8月2日には米国研究製薬工業協会が「DTC広告に関するガイドライン」を発表し2006年1月から会員製薬会社に適切なDTC広告の実施を求めることになった。
 自主規制を設けたことが功を奏したのか、業界のガイドラインが発表されたことによるのか、DTC広告の公聴会では内容やメディアへの露出方法について何らかの改善が必要という意見では一致したが、行政による規制やDTC広告の禁止といった製薬会社にとって最悪の事態はどうやら免れた模様だ。
 この米国の事例はもし今後日本でDTC広告の規制が緩和された場合の広告展開を考える上で非常に参考となるケースであろう。
 写真の紙面にもある通り、最近のDTC広告の半分近くが副作用に関する情報をはじめとする「注意書き」に当てられている。DTC広告はこれまでテレビCMが大半を占めてきたが、厳しい説明責任を果たすために詳報性に優れた新聞広告の出番が増えることが予想される。
 
11月25日 NYタイムズ紙 11月29日 NYタイムズ紙 12月5日 NYタイムズ紙

(12月6日)

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