From Overseas - NewYork 2005.12/vol.8-No.9

ハリケーンが吹けば誰がもうかる?

 今年はハリケーンの「当たり年」と言われている。8月末に発生した「カトリーナ」、さらにその約1か月後に発生した「リタ」によってアメリカ南部の各州では甚大な被害を受けたことはご存じだと思う。中でも、ジャズ発祥の地ともいわれるルイジアナ州ニューオーリンズは壊滅的な打撃を受けた。冠水した市街地の光景や屋内競技場での避難生活を余儀なくされた人々の姿は記憶に新しいはずだ。
 ニューオーリンズと並んで、アメリカ国内の石油消費量の約3割を生産しているメキシコ湾岸にある生産・精製施設のほとんども破壊されてしまった。アメリカ国内のガソリン平均小売価格も、年初の平均価格が1ガロン(約3.8リットル)2ドルちょうどくらいだったのが、襲来直後の9月初旬には景気への影響が確実に及ぶとされる3ドルを突破してしまった。
 エネルギー省の発表では、11月7日現在の平均価格はハリケーン襲撃前である8月上旬以来、初めて2ドル40セントを下回ったが、ガソリン価格は依然として高い。
 おまけに今年の冬は例年よりは寒いと予想されており、自家用車用のガソリン代に加えて、暖房費の負担もかさむことで、消費も冷え込むと見られている。
 流通業界では、本格的に冷え込まないうちに消費を促そうと、例年は11月下旬から開始するクリスマス商戦を繰り上げる動きが出ている。大手スーパーの「ウォルマート」は11月1日からテレビCMを開始、「トイザラス」でもクーポン付きのカタログの配布を始めた。
 ハリケーンによる石油価格高騰の影響を受けたのは流通業界だけではない。航空業界もそのひとつだ。9月半ばにはノースウエスト、デルタの大手2社が相次いで破産法の適用を申請した。無論、格安航空会社の台頭など他にも要因はあるはずだが、「カトリーナ」の影響による航空機燃料の高騰が原因となったのは間違いない。
 破産法適用を申請してもこれまで通りの営業を継続することは出来るので、今のところは利用客に大きな混乱は出てはいない。
 一方、ハリケーンの影響で得したのが石油業界だ。もともと、原油価格は石油需要の世界的な増大で上昇を続けていたが、ハリケーンが一時的とはいえそれに拍車をかけた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、エクソンモービルの2005年第3四半期(7〜9月)の収益はアメリカの石油会社としては過去最高の99.2億ドルを達成、また、同じく大手のシェブロンの利益も前年同期比で12%増の36億ドルとなった。
 こうした業績を反映しているのか、石油各社による企業広告の出稿が今年に入って活発になっている。エクソンモービルがワシントン・ポスト紙に掲載した全ページ広告の本数は昨年の12本に対して今年は19本、一方のシェブロンも昨年の6本に対して今年は既に17本にも達している。
 ただし、同紙の記事は、「ハリケーンによる被害に見舞われる前から掲載を始めていたとはいえ、出稿を増やしたのはもうけ過ぎとの批判をかわすためだったのでは」とも報じている。確かにエクソンモービルの全ページ広告を見ると、石油を安定供給するためにいかに投資しているかを懸命にアピールしており、その指摘もあながち間違いではないと思えてしまう。
 「風が吹けば桶屋(おけや)がもうかる」とは、まさに今回のハリケーンと石油業界の関係を物語っているのかもしれない。
9月4日 NYタイムズ紙 10月27日 NYタイムズ紙

(11月9日)

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