Creativeが生まれる場所 2005.12/vol.8-No.9

そごう心斎橋本店 「みなみ」と百貨店の復活をめざして
長友啓典 氏  2000年12月に閉店したそごう大阪店が、そごう心斎橋本店として9月7日に再オープンした。旧そごうは大丸と並び、心斎橋のシンボルであり顔でもあった。その閉店は、東京でいえば銀座の三越が閉店してしまうくらいショックな出来事だった。そごう再オープンの広告制作に携わった長友啓典氏に聞いた。

――今回の仕事は、長友さんご指名だったのですか。
 大阪出身で、しかも大阪コテコテではなくということで、ぼくになったと後で聞きました。生まれが天王寺で、心斎橋から、駅で4つ、5つ、向こうなんです。僕が小学校に入学したときは終戦直後やったからそれどころではなかったですが、子供のころは何か特別なときに行くとこが百貨店の食堂でしたね。

――広告を囲んでいる飾り罫(けい)が印象的ですが。

 昔の心斎橋には、古くていいものがいっぱいあったんです。それをモチーフにしたものです。旧そごうの装飾もかなり使っています。この罫にも、宮沢りえちゃんのバックにも使っているのが、旧そごうのエレベーター扉に使われていた島野三秋という人がつくった螺鈿(らでん)の装飾です。120年のそごうの歴史を象徴しているのがこの装飾扉で、持ち株会社であるミレニアムリテイリングの和田社長も思い入れがすごくあったんです。

心斎橋モダニズム

――昔の心斎橋はどんなところだったのですか。
 今年はじめにも「心斎橋モダニズム」という展覧会をやってましたが、大正末に当時の大阪市は市域拡張で東京市を抜いて日本一のマンモス都市になったんです。当時の心斎橋筋には画廊や喫茶店がいっぱいあって、東京からアーティストや小説家がよく訪れ、大阪の文化が開花した時代だったんです。

――メーンの「なにわ遊覧百貨店」というのは?
 コピーは岡田直也さんですが、今回のために随分たくさんつくってくれました。プレゼンしたコピーには、大阪コテコテやダジャレ風などいろいろあったんですけど、「なにわ遊覧百貨店」いうのが下のほうに小さく書いてあって、「これだっ!」ということで決まったんです。直球ストレートでいこうと。

お帰りなさい、そごう

――広告はオープン直前に集中していますが。
 正月からティーザー広告として順番にやっていこうという考えもあったんですが、開店の1週間ぐらい前から集中してやろうということになった。新聞広告30段、テレビCM、それから、駅張りポスターは、心斎橋と難波、梅田の3駅をポスタージャックしてやりました。それから、宮沢りえちゃんを使うことは、ずっと伏せていたんです。百貨店のオープンに女優さんが出てくるのは、大阪ではあんまりやらない。彼女は大阪では、特に女性に人気のある女優さんなんです。

――実際、かなりの集客があった?
 開店当時は、見るのも大変という状態でした。競合店の大丸もお客さんが増えた。そごうのオープンは、「きた」への挑戦みたいな感じになりました。心斎橋商店街と戎(えびす)橋商店街、そごう、大丸、高島屋が「みなみ」で、阪急、阪神、最近できたヨドバシカメラが「きた」。そごうのオープンで「みなみ」が結束する形になった。

――その中心になっているのが、百貨店だと。
 やはり大阪では、百貨店は「きた」と「みなみ」の競争の先兵です。百貨店が、その地域をどんどん盛り上げていく。だから今回も心斎橋商店街をものすごく意識しましたし、オープンの時には、「お帰りなさい」いうフラッグが商店街にバァーと並んだ。そごうにしてみれば、「ただいま」という感じなんです。
仕事で毎月のように大阪に行ってますが、ここしばらくは、だれに会うても、「景気悪いわ〜」とか、「何とかならんか」いうのばっかりやったから、元気付けにゃあアカンなというのは、ものすごくありましたね。

大阪から百貨店を元気に

――東京と大阪の広告では、表現に違いはあると思いますか。
 本当は、そんなに差がないと思いますね。今回のオリエンでも、大阪人が見て不愉快にならない広告をつくってほしいという要望がありました。テレビで描かれている「大阪もの」いうのは、ほんとにコテコテでしょう。大阪発全国展開のテレビCMなどにはそういうものがありますが、大阪のおばちゃんにしても、「私はああやない」いうのがあるんです。特に40代、50代の人にはテレビに出てくるような大阪表現は違うという意識が強い。田辺聖子さんが大事にしなさいいうている昔の船場言葉のようなきれいな大阪弁をちゃんと使えば、それはいいんですけど。

――大阪に限らず、ここ数年百貨店の広告には元気がありませんね。
 そごうのような動きが、全国的な広がりになればいいと思うんです。「きた」「みなみ」の百貨店が広告で元気になって、それに東京の百貨店が刺激され、全国区の動きになっていく。そうなることが理想ですね。

駅張りポスター
9月6日 夕刊(大阪本社版)
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