特集 2005.11/vol.8-No.8

団塊の世代がリタイアする日
団塊の世代とつくる旅行商品

 この10月からJR東日本は、団塊の世代をターゲットの中心にした「大人の休日倶楽部」をスタートさせた。その意図とこれまでシニア層を対象にしていた「ジパング倶楽部」との考え方の違いを聞いた。

――「大人の休日倶楽部ミドル」の企画意図からお聞かせください。
9月24日 朝刊
 竹澤 日本の総人口は予測が早まって来年にもピークを迎えると言われていますが、生産人口の減少は、JRを使って通勤するお客様が減少することです。そもそも論から言えば、そういう状況がまずあります。もう一つは、2015年には4分の一が65歳以上になると言われ、少子高齢化社会はマイナスイメージでとらえられがちですが、それをネガティブにとらえるのではなく、逆に大きなビジネスチャンスだととらえたいということです。
 また、当社も駅の交通広告のメディアを持っているわけですが、今回の広告展開では「大人の休日倶楽部」のブランドイメージを広い層で高めたいということで、キャラクターとして女優の吉永小百合さんを使い、新聞とテレビというマスメディアを積極的に使いました。

――男性は50歳から64歳、女性は同59歳までを対象としていますが。
 竹澤 交通機関は成長拡大社会に合わせて発展してきました。人口が減っていくことで、それが量よりも質、サービスの質の時代に突入していく。そこをしっかり見すえないと、これからの企業は生き残っていけなくなるというのは、ほかの企業も同じだと思います。間もなく団塊の世代が大量退職をする時代ですから、大きな意味では、「大人の休日倶楽部ミドル」には、今から彼らをしっかりと顧客化する狙いがあります。このマーケットに対して、しっかりとした戦略を持っている企業が今後も生き残っていくだろうということです。

カード会員化でサービス深化

――「大人の休日倶楽部」とこれまでの「ジパング倶楽部」の違いというのは?
 辻本 大本から説明した方がわかりやすいと思うのですが、シニアマーケット対策として65歳以上の男性、60歳以上の女性を対象にした「ジパング倶楽部」が今から20年前の国鉄時代に発足しています。JR6社がそれを継承し、現在、ジパング倶楽部は6社合計で約160万人、当社だけで約90万人という大きな組織に育っています。年間3,670円の会費をいただいて、片道・往復・連続で201キロ以上利用すると運賃・料金を2割引きまたは3割引きするという特典をキーにした会員組織で、お客様からも好評を得てきました。
 ただ、最近、お客様にいろいろなニーズが出てきて、6社共同運営でやってきた「ジパング倶楽部」のサービスにも限界が出てきました。それで、当社独自の会員組織をつくろうということで設立したのが「大人の休日倶楽部」です。会員の方に、びゅうカードとSuicaイオカードの機能の付いた「大人の休日倶楽部」カードを発行して、スピーディーなサービスやポイント還元などのサービスの提供を目指しています。
 また、「ジパング倶楽部」については20年間ご利用いただいていますので、双方の特典も併せ持った「大人の休日倶楽部ジパング」をつくり、引き続きご利用いただく考えです。

――今後入会する人はすべてカード会員になる?
 辻本 「大人の休日倶楽部」はすべてカード会員となります。国鉄時代から「ジパング倶楽部」は個々のお客様の利用実績の把握が不十分でした。「大人の休日倶楽部」カードを利用していただくことで、利用頻度の高いお客様には、それに応じた手厚い当社独自のサービスを提供することができます。それも、今回の組織設立の狙いでした。

団塊の世代を今からファンに

――50歳からというと、男性はまだ仕事で忙しい最中だと思うのですが。
 辻本 この世代はビジネスユーザーが中心です。あまり割引をしてしまうと減収になってしまうだろうという議論も当然ありましたが、将来を見据えるとボリュームゾーンである団塊の世代を一日も早く当社のファンとして取り込みたかったということです。

――女性の場合は、友人同士の利用も多いと思うのですが。
 森崎 両方想定しています。女性は友人知人でコミュニティーを形成していて、なかなかだんな様と旅行をしないという実態も把握していますが、ただ、ぜひ、これをチャンスに夫婦旅行も行ってほしいという意図もあります。新たな旅を提案することで、夫婦旅行の需要喚起を図りたいと思っています。もちろん、片道・往復・連続で201キロ以上の利用であれば運賃・料金5%割引などの特典が付きますから、ビジネスシーンにも使うことはできますが。
 男性1人で動くパターンもあれば、女性同士で動くパターンもある。夫婦で動くことも、今のジパング世代よりは嫌いでもないと思います。夫婦で旅行してもいいという方は調査ではかなりいます。ただ、その場合も、主導権を握っているのは女性です。やはり、女性に好感を持たれて、かつ男性の方もいっしょに行きたくなるプランを考えるのが、実はミドルのポイントの一つだと思っています。

情報は自ら探すミドル

――ミドル層とジパング層の違いは、どの辺にあると考えていますか。
 辻本 ジパングのお客様には係員と会話をしながらきっぷを買いたいというニーズがあるのに対して、ミドル層はビジネス層ということもあり、スピーディーにきっぷが買いたいというニーズが多くあります。それで、今までは割引券の購入は機械ではできなかったのですが、会員カードを使えば指定席券売機で買えるようにしたということが今回の企画のポイントにもなっています。
 カードにはSuicaイオカードの機能も付いていますから、中長距離は指定席券売機で割引券を買っていただき、近距離は当然Suicaを利用していただけます。
 旅行商品という点から見ても、シニア層とミドル層は、確実に別の人たちだと思います。シニア世代は、我々からいろいろな情報を提供して、旅行需要を喚起する必要がある人たちです。ですから、「大人の休日倶楽部ジパング」の会員全員には、JR6社共通の『ジパング倶楽部』と、東日本オリジナルの『大人の休日』という2冊の会員誌を毎月送り、いろいろな旅行情報や旅行商品をご案内しています。
 ミドルは逆で、必要以上の情報の提供を求めない傾向にあります。自分に必要な情報をインターネットなどさまざまなツールを活用して探す世代だと考えています。

えきねっと
http://www.jreast.co.jp/otona/
――お仕着せの情報はあまり好まない?
 辻本 事前の調査から判断して、そう思います。それで、お得情報など有効な情報だけをえりすぐった会員誌をミドル会員に送ろうと今計画しています。また、インターネットの利用も非常に多いですから、ホームページからも入会できるようにしています。今回も3割はウェブからの入会でした。今後はウェブを通じたお得情報の提供やきっぷ・旅行の予約、決済までできるサービスを考えています。

顧客情報を活用した提案へ

――旅行商品の考え方も、ミドルでは変わってくる?
 辻本 ジパング層ですと、温泉旅行にみんなで行くという団体旅行型が定番でしたが、ミドル層は、好きなことにはお金は使うという世代なので、個人で行程が好きに選べるものや目的追求型になってきます。

 森崎 ミドルを対象にした企画第1号が、12月に実施する綾戸智絵さんの会員限定コンサートです。綾戸さんのコンサートは1万人規模の会場で開催されることが多いのですが、今回は軽井沢の大賀ホールという、非常に音響設備がいい小さな会場で600人限定で行います。東京のコンサート会場だと、終わって食事して帰るだけになってしまいますので、あえて、軽井沢に会場を設けて、一晩泊まってゆっくり過ごしていただくという趣向で企画したものです。
 シニア層に対しては、われわれも「ジパング倶楽部」を通して旅行商品のノウハウを20年間蓄積してきましたが、団塊を中心にしたミドル世代は趣味も多種多様ですし、これまでとは違う発想が必要だと感じています。

 辻本 ミドル層は価値観も多種多様です。だからこそ、会員の皆様から我々が情報をもらうことが必要になってきます。今後はカードの発行によって、細かい好みもわかってくる。それをまた、こちらからの提案として会員の皆さまに返していく。そういうように、会員の皆様と商品を作りあげていくというのが、今後の「大人の休日倶楽部」のあり方だと思います。



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ネクスト・ネットワーク マーケティング・プロデューサー 辻中俊樹 氏→


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