特集 2005.11/vol.8-No.8

団塊の世代がリタイアする日
若者文化をつくった世代の新たな模索

 博報堂エルダービジネス推進室は2000年6月の設立以来、50歳以上のエルダー生活者について、さまざまな調査・研究を実施している。団塊の世代にどうアプローチすべきか。室長の阪本氏に聞いた。

――まず、団塊の世代の接触しているメディアからお聞きしたいのですが。
 50歳から64歳をエルダー導入期、それ以上をエルダー本格期と定義して長年調査を実施していますが、情報源として重要なメディア、我々の言うタッチポイントメディアを見ると、新聞がダントツの1位、2位がテレビ、3位がクチコミという結果です。ただし、エルダー導入期の男性だけ、第3位にインターネットが挙がってきています。
 1位の新聞に関してもう少し詳しく見ると、男性の約70%の人が「新聞の来ない日は、朝は物足りない気がする」と答えています。新聞が来ないと、1日が始まらないという人たちです。さらに、「新聞を取らないのは恥ずかしいことだ」と半分の人が答えています。今どき、購入しないと恥ずかしいと言われる商品は新聞ぐらいしかないと思いますね。50歳以上の男性にとっては、新聞は空気や水と同じように重要なものだということです。

――女性はどうなのでしょう?
 新聞が1位なのは変わりませんが、「新聞の来ない日は物足りない」「新聞を取らないのは恥ずかしい」といった項目は、女性のほうがやや低い。低いと言っても数ポイント程度です。 それから、夫が定年後、新聞を2紙取っている世帯がどちらか1紙に絞る傾向があると思うのですが、奥さんがかなり決定権を持つと思います。奥さんが読んでいる新聞が選ばれる可能性が高いですね。

(図)エルダーのタッチポイント重要度(指数)


メディアと共に育った人たち

――リタイア前と後では、新聞の読み方も変わるのではないでしょうか。
 新聞の閲読状況で一番大きく変わるのは閲読時間です。60分以上かけて、隅から隅まで読むようになります。「郵政民営化って、本当はどういうことなんだ」と言っても、仕事をしている間は断片的にしか情報を拾えないところがありますが、そういう記事もじっくり読むようになる。特に団塊以降の女性は社会的意識が非常に高い人たちですから、新聞はだんなも読むし、奥さんも読む。だから、団塊の世代のリタイア後は、新聞を介した夫婦の会話の時間は増えると思います。

――情報接触に関する限り、マスメディアが中心と考えていいような気がしますね。
 この人たちは、仕事の面でも消費の面でもずっと高度成長を支えてきた人たちで、マスメディアで育っている。若いころから慣れ親しんできた情報行動は基本的には変わらない傾向がありますから、当然の結果だと思います。

「ヨン様現象」とは何か
 
――3位にクチコミが入っていますが。
 まず、女性は50代で子どもが独立しますから、実質定年に入ってしまいます。そこから友だちづくりに入る。そういう意味でクチコミの比重が高い。
 男性にとって定年とはどういうことかと言うと、「突然電話をかける相手がいなくなることに気付く」ということなのです。「おれは会社にしか友だちがいなかったのか」と思うのです。そこから、仲間づくりをしていこうという気になる。つまり、縦社会から横社会へ、縦のコミュニケーションから横のコミュニケーションに入ります。そこでクチコミが出てくる。
 この世代のクチコミが力を発揮したのが「ヨン様現象」です。団塊の女性を中心に、「土曜日の夜、見てる?」「見てるわよ」というところから始まった現象と考えられます。友だちの間のコミュニケーションで「今度来るわよ、成田」「行く?」というので、成田空港が妙齢の婦人でいっぱいになった。氷川きよしも、マツケンサンバもクチコミが大きな要因とされています。

――その中心は、団塊の世代の女性たちだと?
 で、なぜそれが言えるかというと、私も実際空港に行って調べたわけではないのですが、テレビで見ていると、もう泣いている女性さえいる。別に「ヨン様」見て泣かなくたっていいじゃないかと思いますよね。そのとき、ハッと思った。前にどこかで見たなと思ったんです。そうしたら、グループサウンズを追っかけていた、あの女の子たちの姿と一緒なんです。
 あの時は世界的な現象で、ビートルズが空港へ来た時、泣き出す女の子が世界中に山ほどいました。そのときの大人たちから、「あの子たちは若いからあんなことやっているのよ」と言われたわけです。今になってわかったのは、若いからじゃなかった。(笑)

ブームは再び団塊から
 
――アイドルにキャーキャー言うのは、団塊の世代特性ということですか。
 そういう言い方が適切かどうかは別にして、世代特性として「ミーハー」なところがあるのは確かです。60代ぐらいまでは結構そういう感覚を持っている人はいますが、70代とは明らかに違う感覚です。
 コンサートでキャーキャー言い出した最初の世代は、団塊の一つ上の世代です。グループサウンズの前にロカビリーブームがあって、平尾昌晃やミッキー・カーチスがウエスタンカーニバルを日劇でやって、女の子たちが初めてキャーキャー言うという現象が起こりました。それが1960年代の初めぐらいです。
 そこを発端に、歌謡曲の御三家と言われた舟木一夫、橋幸夫、西郷輝彦や、三田明が出てきて、そういう現象が一気に拡大したのがグループサウンズです。やはり、数の多い団塊の女性がファンになったことで広がった。だから、グループサウンズのときはマジョリティーだった。

――その層がしばらく子育てでおとなしくしていた?
 そうです。団塊世代の女性たちは男女雇用機会均等法のはるか前ですから、活躍する場が限られていた。だから、どんな優秀な女性も、やむを得ず専業主婦を選ばざるをえなかったところがあります。
 団塊というと男性が注目されますが、女性の存在は非常に大きい。確かに若いとき男性の間でアイビールックが注目されましたが、女性あってのアイビールックだったわけです。男が初めておしゃれを意識したという意味では大転換でしたが。  その彼女たちがビートルズを支持し、グループサウンズブームをつくった。それから、「アンアン」「ノンノ」が創刊されて、アンノン族が現れます。それ以前にあんな女性誌はありませんでした。今の女性誌はそこから始まっています。それを最初に支持したのも団塊世代の女性たちです。ですから、女性のパワーは実は当時から大きかったと思いますね。




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