Creativeが生まれる場所 2005.11/vol.8-No.8

デル リアルタイムな検証でつくる広告
森本千絵 氏  デルはIT機器をダイレクト販売するベンダー(販売会社)として、新聞をはじめ、雑誌、テレビ、オンラインなど、ほぼすべての媒体でダイレクトレスポンス広告(以下DR広告)を展開している。売りと直結したDR広告のクリエイティブは、どういう視点からつくられているのだろうか。

――DR広告と一般のブランド広告の1番の違いは何でしょう。
 ダイレクト販売のデルにとってDR広告は、自社のホームページと同じようにお客様に製品を見ていただくための“店舗”として不可欠なチャネルです。ブランド広告がブランド認知の向上や信頼性の醸成などを目的とするのに対し、DR広告は店舗そのものですから、そこでの売り上げが厳しく追求され、必然的にその製品の“売り”が前面に立ったものとなります。
 デルの場合は、プライスパフォーマンス(価格性能比)に最大の優位性がある会社ですから、例えば、法人向けのパソコンの広告では「この性能(スペック)で、この価格」、コンシューマー向けの広告では「こういったことが楽しめて、この価格」といったプライスパフォーマンス訴求がクリエイティブ戦略の主軸となります。イメージ構築や微妙なトーン&マナーの調整が重要になるブランド広告に対し、DR広告の場合は、掲載製品の1番の“売り”を確実に伝えるコピーとデザインが要求されます。

デルのテネッツ

――ただ、企業のブランド力も“売り”に影響するのではないですか。
 当然、影響します。現在、デルではブランディングのみの広告は行っていませんが、DR広告内にデルのテネッツ(教義。ポリシーのようなもの)を解説した囲み記事を挿入したり、キャッチコピーやリードコピーにその要素を入れることは行っています。例えば、ダイレクト販売や世界有数サプライチェーンマネジメントによってデルのプライスパフォーマンスが実現されていることや、業界標準のテクノロジーを搭載することによって安定した品質が得られていること。こういった一般的には知られていないデルの取り組みや信念をお客様に地道に伝えていくことは、短期的にはレスポンスの向上に寄与していないように見えるかもしれませんが、長期的には必ず影響してきます。

DR広告の必勝パターン

――DR広告には一定のフォーマットがあるような気がするのですが。
 DR広告はすべての掲載広告のレスポンスを評価しながら、こういう情報は必要ではない、この情報はこう出すと効果的だということを掲載ごとにチェックしている。どういうパターンならどのくらいのレスポンスが取れるか、言わば必勝パターンみたいなものがおのずと出てきます。

――必勝パターンというのは?
 それは企業秘密なので詳しくは話せませんね。すぐマネされちゃいますから。(笑)
 でも、各パーツのサイズや配置、写真の撮り方、レイアウトの組み方など、それらの変更によって何%レスポンスが変わってくるか、というトライアルは毎週何かしら行っています。
 DR広告を見てアクセスしてくれるお客様の行動プロセスは、(1)広告上の何かしらにフックして目を止める(2)製品のスペックや価格などを読んで内容を理解・吟味する(3)その内容に納得するか、もっとよく知りたいと思ったら、電話やウェブにアクセスする、の3段階だと考えます。
 特に重要なのは目を止める段階で、製品や価格、キャンペーン、利用シーンなど、その時ニュース性のあるものをインパクトのある見せ方で見せ、ストッピングパワーをつけることで、広告の読み飛ばしを防ぐことが重要になります。また、インパクトのあった原稿でも毎週同じでは飛ばされてしまいますので、原稿フォーマットもいくつか用意しています。

10月4日 朝刊
10月6日 朝刊


翌週の広告に結果を反映

――掲載広告は毎回評価するということですが。
 読売新聞には現在週2回掲載しているのですが、評価は掲載されたその日の内に行うことが可能です。結果が思わしくない場合は、さまざまな要因をその日の内にすべて洗い出し分析し、改善すべきことはすべて翌週の広告に反映させます。また、メディアのROI(投下資本利益率)についても、我々は1本のコールを取るためにいくらかかるかという費用対効果で見ています。

――新聞とDR広告の相性は、どうなのでしょう?
 新聞広告が他のメディアに比べ優れているところは、その保存性とリードタイムの短さと圧倒的な発行部数でしょうか。
 新聞・雑誌などの紙媒体では、その保存性がレスポンス広告にとってプラスに働くことが多々あります。掲載のタイミングだけでなく、お客様がふと思い出したときや急に必要になったときなど、すぐに引っ張り出し見返すことができることがお客様のメリットになります。
 リードタイムとは、掲載製品の構成・価格の意思決定から実掲載までの時間のことです。デルではワールドワイドでリアルタイムな部品調達を行っているので、その状況をリアルタイムで反映させた価格で提供することができます。また、広告制作、プロモーション、製品スペックを決める担当などが一つのチームを組んでやっていますから、対応もスピーディーにできます。それが、お客様にコスト的なメリットをもたらしています。ホームページの次にリードタイムが短い新聞は、最もデルに向いたDR媒体と言えます。
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