新聞広告の色彩学 2005.10/vol.8-No.7

色調が形と織り成す
8月26日朝刊 キヤノン 8月26日朝刊 キヤノン 8月26日朝刊 キヤノン 8月26日朝刊 キヤノン
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 暑いは夏の常套句(じょうとうく)だが、今夏は念入りな真夏日続き。台風抜きの秋がまたれる昨今だ。

 さて、キヤノンの広告について本誌前号では画抜きの紹介文だけで済ませてしまったが、この「ポップコーン、誕生」も傑作だ。見た瞬間すぐに「躍る朝日の光を浴びて…」というラジオ体操の歌詞が頭に浮かんだのは、はじけたコーンを、ヒヨコ誕生と見まちがえたのだ。とくに右上方の形が不可思議。それに引きずられてか、下にころがるコーンの粒々が卵の黄身に見えた。ポップコーンの形ってこんなに複雑?などと感銘したのは、1670万画素の高解像度画面に時間を切断して定着させたCMOSセンサーの威力だ。眼よりも速いはアニメ映画のフィルムのコマ数などでとうにおなじみのはずだが、油の弾け飛ぶ魅力画像を見ると、機械の緻密な描写力に比べての眼の見逃しが本当にもどかしい。

 きりっと銀色の流線デビューで微笑むプレミアム車、レクサスの日本上陸は広告もめざましい。日本の車の性能の良さは立証済みだが、見ても乗っても満足のいきそうな重厚感あふれる銀白色車体。ちらと見える渋い赤に、輝くホイールキャップを引き締めてタイヤの黒と車体の影色。やすらぎの室内空間という自信は、外観からだけでも十分わかる。

 世界陸上ヘルシンキ大会の公式計時を担うセイコーの赤と緑広告。この配色は生命力の象徴で緑は植物の血、赤は人間の血の色。たっぷり画面を占めたレンガ色のアンツーカーが、正しく規則的なリズムを刻んで脈動する血管の連想を与えてくれる。小面積の緑が効いているのは、もちろん白いラインが右上方でカーブして空間を凝縮させているからだ。

 三越デパートは減色の美学。人間の眼は、ある暗さレベルから不透明の重さが輝き出すのを感じる。そこで色マイナス色の極限は当然シックな蒼(あお)色のムードにいたる。素材感の真実は不透明な暗さから生まれるから、表情の豊かさ深さはモノクロームの独占世界だ。
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