From Overseas - London 2005.10/vol.8-No.7

過ぎたるは及ばざるがごとし
 今日の新聞は394ページ。
 こんな分厚い新聞が配達されたらどう思うだろうか。日本では元日に「厚いなぁ」と感じることがあるかもしれないが、これは年の始めの風物詩。楽しみと言えば楽しみである。   イギリスでは、1週間に2度も「厚いなぁ」が起こる。金曜日と土曜日だ。最近の「タイムズ」と姉妹紙である「サンデー・タイムズ」を例に挙げてみると、8月27日(土)の新聞は計352ページ、28日(日)は394ページだった。土曜日は本紙に別刷りが6部、日曜日は本紙に別刷りが11部という構成だ。タブロイド判があったり、雑誌があったりするので日本の新聞サイズに換算すると、27日が176ページ、28日が250ページとなる。参考までに、2005年1月1日付の読売新聞は104ページだった。
 さて、イギリスの新聞社がなぜこれだけのページ数を発行するかというと、理由は大きく分けて2つある。単純だが、広告収入の向上と販売部数の向上だ。
 まず、広告サイドから考えると、別刷りの発行は売り上げの向上につながる。イギリスの新聞の広告収入は、その約30%を案内広告に依存しており、ライバル社以上に案内広告を収容するために、テーマ別の別刷りを発行する必要がある。例えば28日(日)の「サンデー・タイムズ」では第4部に「トラベル」、第7部に「ホーム」、第9部に「ドライビング」という別刷りがあり、それぞれ旅行、不動産、自動車の案内広告を収容している。案内広告を収容するための別刷りという考え方は平日付にも取り入れられており、「タイムズ」の場合は火曜日に公的機関の求人広告をターゲットとした「パブリック・アジェンダ」、木曜日にマネジャークラスなどの求人広告を集めた「キャリア」、金曜日には不動産広告に特化した「ブリック・アンド・モルタル」を発行している。なお、公的機関の求人広告は、もともと「ガーディアン」の独壇場。管理職の求人広告は経済紙「フィナンシャル・タイムズ」の独壇場だった。「パブリック・アジェンダ」と「キャリア」は、この2紙から広告収入を奪うための発行であることを、「タイムズ」は認めている。
 案内広告を目当てにした別刷り以外では、土曜付と日曜付に添付されている雑誌が、ファッション・ブランドなど印刷品質を重視する広告主に支持されているようだ。
 一方、販売部数の向上のためにページ数を増加させた背景には、「新聞は毎朝買うもの」というイギリス特有の事情がある。宅配率が約95%と群を抜く日本を別にしても、イギリスの宅配率は先進国の中で極端に低い。世界新聞協会の資料によれば、この数字はアメリカで71%、ドイツで65%、フランスで25%だが、イギリスでは15%に満たない。よって、毎朝新聞を選ぶ読者のために別刷りは重要な要素であり、最近では映画DVDが付録として添付されたこともあった。
 ところが、この分厚さが、「部数を減少させる原因となっている」という指摘もある。メディア・エージェンシーのスターコムによれば、1週間の全国紙の総ページ数はここ1年半で9%増加し、約8,500ページとなった。以前は2紙購入していた読者が読み切れないために1紙に減らしたり、土日に1部ずつ購入していた読者が、片方しか買わないようになったりしているという。広告面でも「これだけページ数が多いと、効果的な面がどこなのか分からなくなる」と指摘している。
 部数下落と広告収入減少への対策として、別刷りの充実を推し進めてきたイギリス各新聞社だが、逆に首を絞め始めてしまったようだ。

8月28日付「サンデー・タイムズ」一式   8月28日付「STYLE」(サンデー・タイムズの別刷り雑誌)内、ラコステの広告


(8月30日)
もどる