Creativeが生まれる場所 2005.10/vol.8-No.7

ユニリーバ リアルな発言を通じてブランドを活性化
後藤宏行 氏  「日本の女性は、美しくない。」というかなり挑発的なキャッチフレーズの新聞広告が、今年の3月18日の朝刊に掲載された。ユニリーバ「ダヴ」のリアルビューティー・キャンペーンの広告だ。女性の美意識のあり方を問うユニークなキャンペーンはどのようにして生まれたのだろうか。

――「日本の女性は、美しくない。」は、日本独自のキャンペーンですか。
 ダヴのリアルビューティー・キャンペーンの日本版です。北米、ヨーロッパ、アジアを中心にユニリーバが世界中で展開しているもので、「社会が決めた美しさにとらわれず、一人ひとりの女性が持つ本当の美しさ=リアルビューティーに気づいてほしい」というキャンペーンです。

消費者の行動を活性化する

――「日本の女性は、美しくない。」は、かなり挑発的なコピーだと思うのですが。
 このキャンペーンを始めるにあたって、ユニリーバとオグルヴィが共同で女性の意識調査を各国で実施したのですが、その中で「あなたは自分のことを美しいと思っていますか」という質問があり、「いいえ」が世界で最も多かったのが日本の女性で86%でした。自分が美しくないと思っている女性が、日本は圧倒的に多い。たとえば、ブラジルの女性だと90%以上の女性が自分は美しいと答えています。これは、客観的に見てどちらが美しいということではなく、自意識の問題です。そこに着目して、日本独自のコミュニケーションができないかと考えたのが、今回のキャンペーンです。消費者の行動を活性化させる「アクティべーション」という考え方ですが、世の中の動きと連動してノイズを上げるというか、波及効果も狙っています。

――「リアルビューティー・ツアー」も、そのアクティベーションの一つですね。
 紙面で300人募集したのですが、1万通以上の応募が来ました。フォーシーズンズでの一泊セミナーの後、最後に全員がつけていた金髪のカツラを投げ捨ててもらうパフォーマンスを新宿の駅前で行いました。その時に撮影したものがテレビCMと新聞広告になったものです。一度きりのパフォーマンスですから、6台のカメラを用意しました。イベント自体もかなり話題になりましたね。

――キャンペーンの第二弾も始めていますね。
 セカンドウェーブと呼んでいますが、これはアジア共通で行っています。ファーストウェーブは一人ひとりにそれぞれの美しさがあることに気づいてほしいということでしたが、今度は、美しさは一つではありませんというキャンペーンです。例えば「一重まぶた」や「白髪」も、美しいと思えるし、美しくないとも思える。新聞広告や交通広告で「あなたはどう思いますか?」という問いかけをして、それをウェブで答えてもらう展開をしています。結果は、デジタルカウンター付きの屋外広告や新聞広告の雑報で発表しました。

3月18日 朝刊
5月24日 朝刊


発言するブランドへ

――キャンペーンは国によってアプローチが違うということですが。
 ワールドワイドな広告展開の場合、それをどう各国に適応させるかというアダプテーションにはいろいろなレベルがありますが、ダヴの場合、具体的な展開は各国にある程度任されています。「リアルビューティー」自体は普遍的な概念だと思うのですが、やはり、その国によってとらえ方が違うからです。

――リアルビューティー・キャンペーンの基本的な考え方を決めたのは?
 オグルヴィでは各ブランドを担当する世界中のクリエイティブディレクターが集まる会議がよく行われます。今回も、ダヴというブランドをどこに持っていくべきか徹底的に話し合われました。
 ダヴは50年近い歴史のあるブランドで、日本では1999年に発売されていますが、これまでいくつかの信念の下にずっと広告がつくられてきました。それは、「真実だけを語っていく、オーバープロミスをしない、声高にセールスをしない」ということです。広告に登場する人も、実際の利用者で、彼女たち自身の口から商品を語ってもらっていました。

――広告にプロのモデルを使わないということですか。
 たとえば、日本でも去年まで一般の女性にダヴを使った感想を語ってもらう「テスティモニアル」という広告を展開していましたが、すべて一般の女性です。何百人というダヴの利用者の方にお会いして、率直な感想を語っていただきます。その中で、ダヴのベネフィットにマッチした方に広告に登場していただいています。セカンドウェーブに登場していただいた方たちも、プロのモデルではなく、一般の女性です。
 ブランドの成長にとって大切なのは、守らなければいけないものと変えていかなければいけないものを見極めることだと思うのですが、最後に行き着いたところはダヴの正直さ、誠実さの原点に戻ろうということです。
 ただ、一つだけ自分たちのルールを変えようと思ったのが、消費者の口を借りるのではなく、ブランドからメッセージを発言するキャンペーンにしようという点です。ダヴはもちろんきちんとした思想の下にできているブランドです。それをきちんと発言していこうということになった。その発言のレベルが大きく、社会的な影響力があればあるほど、新聞広告が適していると考え、今回のキャンペーンの核となるメディアに新聞を選びました。

8月1日 朝刊
8月11日 朝刊
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