特集 2005.9/vol.8-No.6

環境コミュニケーションとは何か?
 京都議定書の発効を機に、「環境」が再びクローズアップされている。新聞に掲載される環境広告をみると、10年前とは明らかに何かが変わった。消費者と「いっしょに」という姿勢が目立つ。消費者の意識も大きく変化した。「チーム・マイナス6%」「エコロジーライフキャンペーン」「LOHAS」、3つの事例からいま求められている「環境コミュニケーションとは何か」を探った。

“チーム”という発想でムーブメントを作る

 政府・環境省は、地球温暖化対策のために国民参加型プロジェクト「チーム・マイナス6%」を立ち上げ、環境省としては初めてマスメディアを使った環境キャンペーンを展開している。京都議定書が発効して、いよいよ国際的な義務として温室効果ガスのマイナス6%達成が求められている中で、個人と企業をメンバーとして募る意図は、どこにあるのだろうか。

――環境省としてマスメディアを使った環境キャンペーンは初めてということですが。
 環境省の外郭団体や社団法人が主体になった環境広告はこれまでも数多くありましたが、環境省そのものが出稿するのは、ほとんどなかったと思いますね。

――これまでとは、意気込みが違う?
 大きな理由は、今年2月に京都議定書が発効して、いよいよ国際的な義務としてマイナス6%達成という具体的なターゲットが設定されたということです。
 このキャンペーンの狙いは、家庭やオフィスの温室効果ガスの削減にあります。どういう分野でどれだけ温室効果ガスを減らして行くかを決めたのが、4月28日に閣議決定した「京都議定書目標達成計画」です。その中では、例えば、工場や発電所、交通機関などのハード部分は、きちんと目標値が決められていて、当然それはそれぞれ達成していくわけなのですが、マイナス6%達成のためには、それプラス、家庭やオフィスから排出される温室効果ガスを削減していかなければできないのです。

――家庭の温室効果ガスの排出量は増える一方だと聞いています。
 工場などの温室効果ガスの排出量は、ここ10年ほぼ横ばいです。ところが、一般家庭はこの10年間で約20%伸びています。このまま右肩上がりでいくと、企業の削減努力をほとんど食ってしまいます。企業もモチベーションが下がる。ただ、家庭から排出される温室効果ガスは、これだけ減らしてくださいと規制するわけにもなかなかいきません。それで、みんなでできるところから一歩ずつやりましょうという「国民運動」にしていきたいというのが基本的な考え方です。

国民運動にニックネーム

――その国民運動の名称が「チーム・マイナス6%」ということですね。
 「国民運動」という固い言葉ではなく、それに変わるニックネームとして「チーム・マイナス6%」という名称を付けたということです。京都議定書で国際的に公約した目標達成のために政府が旗振りするのは当然なのですが、みなさんに自分の問題なのだと認識していただいて、個々人で行動するのではなく、みんなで1つの“チーム”のように力を合わせ、地球温暖化防止に向けて一歩でも二歩でも前に進もうという意図をこの名称に込めています。

――第1弾は、小泉総理が登場した新聞広告ですね。
 今までなら政府からの記者発表だけで済ませていたのですが、その意思を明確にみなさんにお伝えするための第1弾が、4月29日の小泉総理の新聞広告です。温暖化対策推進本部の本部長である総理が先頭切ってやります、みなさん一緒にやりましょうということを伝えるのが、この広告の目的です。
 この広告のボディーコピーは、普通は事務方で書いて総理に了承を得るのですが、今回は、総理自身が全面的に書き直したものです。「政府は、この夏から全府省の大臣、幹部も、私も『ノーネクタイ、ノー上着』にします」と総理自ら新聞広告で宣言した。役所は特に上の者がやらないと、下の者ができないですから、この一言は大きかったですね。

――第1弾は、小泉総理が登場した新聞広告ですね。
 今までなら政府からの記者発表だけで済ませていたのですが、その意思を明確にみなさんにお伝えするための第1弾が、4月29日の小泉総理の新聞広告です。温暖化対策推進本部の本部長である総理が先頭切ってやります、みなさん一緒にやりましょうということを伝えるのが、この広告の目的です。
 この広告のボディーコピーは、普通は事務方で書いて総理に了承を得るのですが、今回は、総理自身が全面的に書き直したものです。「政府は、この夏から全府省の大臣、幹部も、私も『ノーネクタイ、ノー上着』にします」と総理自ら新聞広告で宣言した。役所は特に上の者がやらないと、下の者ができないですから、この一言は大きかったですね。
  紙面

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トップの発言の重要性

――「チーム・マイナス6%」は、運動に賛同する人たちを一人ひとり登録する形をとっていますが。
 一方的にお願いをするのではなく、この運動に賛同する人たちや企業を募って1つのチームとして運動を広げていこうというのが、このキャンペーンの基本的な考え方です。その一番大きなきっかけが、6月1日の環境月間始まりの日に掲載した第2弾の新聞広告でした。
 「男性がネクタイをはずせば、女性のひざ掛けがいらないオフィスになります」というかなり刺激的な言葉を使いながら、小池環境大臣を前面に出して「クールビズ」と「冷房温度28C°」をPRしたのですが、これに呼応して経団連の方が奥田会長名で会員各社に「チーム・マイナス6%」を一緒にやります、クールビズもやりますという通知を出していただいた。企業の参加は、この通知が非常に効きました。それから登録企業数が急激に伸びてきています。
 ですから、政府のヘッドである小泉総理、環境問題のトップである小池環境大臣、産業界のトップである奥田会長が率先して発言していただいたということで、京都議定書の目標達成に向けて本気で動くという機運が高まった。キックオフとしては非常にうまくいったと思っています。

分かりやすさに徹する

――温暖化防止のための行動を6つのポイント(注)に絞って呼びかけていますね。
 だれもが参加できることを最優先したということです。温室効果ガスの削減のためにできることは、たくさんあります。例えば、環境負荷の小さい輸送方法に転換するモーダルシフトも温室効果ガス削減のための有効な手段ですが、あまり細かく言うと、参加できるチームの数が少なくなります。少し乱暴なくくりになりますが、わかりやすさに徹しました。

――6つのポイントの細目が実はある?
 省エネセンターや環境省を合わせると、温室効果ガス削減のために呼びかけてきたものが40項目から50項目あります。それを全部並べても、どこから手を付けていいかわからなくなります。それを6つのポイントまで大くくりにしたということなのです。逆に言うと、ここから、細かい行動指針にバラしていくことも当然可能で、例えば「冷房温度」は、冬になれば当然「暖房温度」に変わります。

――ロゴマークも自由に使えるということですが。
 「チーム・マイナス6%」のチームメンバーに団体・企業として登録すれば、使用できます。「みんなで止めよう温暖化」の部分は、地球温暖化対策を推進する言葉であれば、個別の活動に応じて変えられます。広告、ポスター、パンフレット、社内報、名刺、ホームページなどさまざまな媒体に使えます。

(注)6つの具体的な温暖化防止の行動の呼びかけ 「冷房は28度に設定しよう(温度調節で減らそう)」「蛇口はこまめにしめよう(水道の使い方で減らそう)」「エコ製品を選んで買おう(商品の選び方で減らそう)」「アイドリングをなくそう(自動車の使い方で減らそう)」「過剰包装を断ろう(買い物とゴミで減らそう)」「コンセントをこまめに抜こう(電気の使い方で減らそう)」




消費行動につながる環境キャンペーン
シャープ ブランド戦略推進センター 宣伝部参事 大湊 由紀子 氏→


環境コミュニケーションを変えるLOHAS〈ロハス〉
電通 IMCプランニング・センター 専門領域プランニング室長兼ソーシャル・マーケティング部長 並木 義巳 氏→
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