新聞広告の色彩学 2005.9/vol.8-No.6

夏色は意欲いっぱい
7月22日朝刊 レキシア銀座 6月17日朝刊 セイコーウォッチ 7月30日朝刊 日立製作所 6月30日朝刊 マイクロソフト
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 6、7月の間、力作広告が目立った。前号で、新しい広告のあり方など発言をしたことが恥ずかしい。広告は真剣に取り組む専門家にはかなわない戦闘の場とあらためて学んだ。

 この期間相変わらずキヤノンが3割打者の力を見せるが、ことに「一竹辻が花染」の生地の質感描出がたまらない。そこは写真の専門技の側光線の効果だが、その上に乗る重低音の色調のなかで紫色と黄色、朱色の交響がすばらしい。紙幅の都合上掲出できないが、日本の工芸品の業はよく画面拡大に耐える密度をもっている証明だ。質は色なりであろう。

 さて掲出広告の一番手はレキシア銀座。夏だ、暑さだ、日盛りだの白地が効く舗道を闊歩(かっぽ)するお嬢さんは、モデル歩きかと思われるほどの魅力歩き。並木が落とす青色の影に映える、明るくて親しめる舗道の色は何色と言うのだろうか。歓迎を表す銀座色か。縦位置で見るとき、上方の黒と白の中での緑色とのバランスが実に美しい。

 セイコーは、名機クレドール・ノードの「月の時」は「アートの時」広告。満月は人を狂わすというが、名機にはそれ以上の魅力がある。ピンクゴールドと藍(あい)の夜空、それが文字の白抜き色を正真の真っ白色に見せている。このピンクゴールドは前の舗道の色と同系色だが、ここで金属の光沢を抑えきっているのがいい。それが月色と離反しない理由だ。

 日立「つくろう。」広告は意志表明。黒い空間に立つは日本映画の巨匠、世界の黒澤だ。色を殺し目を感動させ、映像の力で日本を意識させた。黒は沈黙していても力の色だが、和の色でもある。和は輪。和の空間で人の歯車がしっかと噛(か)み合えば強いトルクで回る。

 マイクロソフトのウインドウズXPは多色多様で勝ちにいく。仮想現実の光の色使いの未来がここに感じられる。テレビの色は紙面にのるインクの色と本質が違う。その発色の違いを目はどう受け止めるか? その大きな問題に挑戦する志が尊い。
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