From Overseas - NewYork 2005.9/vol.8-No.6

ヒスパニックマーケティング
 人種のるつぼ」といわれるアメリカ。ニューヨーク市内のある学校区では、家庭で英語を話す生徒は3割弱にすぎず、7割強の家庭でスペイン語、ロシア語、広東語、そして日本語と実に様々な言語が使われているという。確かに、地下鉄車内で見掛けた英語学校の広告には、「英語を学ぼう」というコピーが12か国語で書かれていた。
 アメリカでいわゆるマイノリティー(少数民族)と呼ばれている人々は、アフリカン・アメリカン、アメリカ・インディアン、アジア系アメリカン、ハワイ・太平洋諸島系、ヒスパニックと大きく5つに分けることができる。
 中でも、近年最も人口を増やしているのがヒスパニックだ。国勢調査局の統計によると、2003年から04年にかけての人口増加率は3.6%にのぼり、アメリカ全体の人口増加率(1%)をはるかに上回った。また、同統計によると04年のヒスパニック人口は約4,130万人で、2010年には全人口の15.5%にあたる約4,700万人、2050年には1億人を突破し、全人口の24.4%に達するとまで予想されている。そうした状況を反映してか、公共の場では必ずといっていいほどスペイン語の表記もあり、英語を使わなくとも十分生活していけそうに見受けられる。
 彼らの特徴の1つに平均年齢の低さが挙げられる。白人の平均年齢は39歳なのに対し、ヒスパニックはそれを10歳下回る29.3歳で、30%は15歳以下といわれる。
 また、そのライフスタイルも他民族に比べると特徴的で、家族や地域を大切にし、外食よりは家で家族そろって食事をし、テレビを視聴する時間もアメリカ人全体の平均よりは長いとされている。いずれにしても、彼らを対象とするマーケットが今後ますます重要になることは間違いなく、広告やメディアの分野も例外ではない。
 TNSメディアインテリジェンスの統計によると、2004年のヒスパニックメディア向けの広告費は30.9億ドルとアメリカ国内全体(1351.4億ドル)に占める割合は2%に過ぎず、前述の人口比率をかなり下回る。これまでアメリカ企業はこの分野にあまり力を入れて来なかったといえよう。
 とはいえ、各企業とも今後の有望な市場ととらえていることは間違いなく、2005年のヒスパニックメディア向け広告費は対前年で10.5%増、国内全体の伸び率(3.4%増)を大幅に上回ると予想されている。中でも自動車、流通関係の伸びが著しく、2004年の宣伝予算もダイムラー・クライスラーが対前年で54%、ウォルマートに至っては73.1%も増やした。
 また、従来はクリエイティブも一般向けに英語で作られたものをスペイン語に翻訳するだけで、ライフスタイルの違いなどは考慮に入れていなかった。しかし、今では専門の広告会社が存在し、オムニコムやWPPといったメガエージェンシーも傘下にそのような広告会社を置くようになり、「家族愛」など彼らのライフスタイルに見合った独自のクリエイティブも作られるようになった。
 もちろん、大手メディア会社も熱い視線を注いでおり、NBCは2002年4月にスペイン語TV局第2位のテレムンド・ネットワークを19.8億ドルで買収した。また、新聞についてはシカゴ・トリビューンなどを発行するトリビューン社が、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴの3都市でスペイン語新聞「Hoy」を発行している。
 年齢、性別、年収、地域などマーケットをセグメントするための指標は様々だが、そこにヒスパニックをはじめ、「民族」という要素が加わるのは多民族国家アメリカならではなのは間違いなさそうだ。
8月10日 Hoy紙
(8月10日)
もどる