From Overseas - London 2005.9/vol.8-No.6

The Shows Must Go On
 「7月7日の事件の後、自分がロンドンっ子になったような気がするよ」
 それまで、冗談を言う以外に能がないと思っていたイタリアの港町出身の友人が、めずらしく真顔になってつぶやいた。
 インド系や中国系をはじめ、ロンドンには多種多様な人種が暮らしている。テロの後、外国人にもかかわらず自らを「ロンドン市民」と認識した人は多いだろう。
 この「ロンドン市民」たちは、地元の人々と同様に、一刻も早く普通の生活を取り戻すために行動をした。普段どおりにバスに乗り、地下鉄に乗り、夕方にはパブでビールを飲み、劇場やクリケット場にも足を運んでみる。普段の生活を続けることで、テロに屈していないことを示そうとしたわけだ。人種の壁を越え、格好いい言い方をすれば、ロンドンがひとつになった。
 ロンドン市は、テロの影響を沈静化させ、またテロの脅威を排除するため、「ひとつのロンドン」という言葉を積極的に用いた。
 ロンドン市の広告は、最初のテロから1週間が過ぎた7月14日に掲載されたもの。この日の正午に2分間の黙とうを呼びかける広告だ。「ロンドンの結束、ひとつの街、ひとつの世界」
 また、ロンドン市は、すべてのメディアに対して広告の無料掲載を依頼。屋外広告が中心だが、「700万人のロンドン市民、ひとつのロンドン」というキャンペーンが展開されている。この広告原稿は、ロンドン市のウェブサイトからダウンロードが可能で、ミニコミ誌からマスメディアまでが利用可能となっている。
 変わったところでは、首都圏警察が求人広告のコピーに「ONE LONDON」を使用していた。「ロンドンは人種の壁を越えてひとつであり、警察は人種的少数派の応募を特に歓迎する」という内容だ。
 また、「普段通り」という言葉は、テロに屈しない態度を示すもうひとつのキーワードだった。
 やはり最初の事件から1週間目の7月14日に広告を出稿したのは、ロンドンに数ある劇場の団体であるロンドン・シアター協会。「ウィ・ウィル・ロック・ユー」や「オペラ座の怪人」など多くの人気公演が行われているウエストエンド(劇場街)ではテロ当日の公演を中止。しかし、人が多く集まるところとしてテロの標的になる可能性があるにもかかわらず、翌日金曜日には「演劇にかかわる者たちは、他の人々と同様、通常の生活を続けると決断した」と声明を発表し、全劇場が公演を再開した。14日付の広告では、テロからの1週間、公演が通常通り行われたことを報告した。7月下旬以降は、観客数が昨年の同時期を上回り、週ベースで7%の伸びを記録している。
 ウエストエンドで12の劇場を経営するロイド・ウェバー氏は、BBCのインタビューに「ショーは続けられなければならない」と答えている。イギリスのロックグループ、クイーンの名曲のタイトルだ。この曲を発表して間もなく、ボーカルのフレディ・マーキュリーは亡くなってしまったが、ロンドンはこのテロを乗り越え、欧州の中心都市としての機能を発展させていかなければならない。

7月14日 タイムズ紙   8月10日 メトロ紙   7月14日 タイムズ紙

(8月11日)
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