AD FILES 2005.9/vol.8-No.6

ドラゴンボール二十周年「コンテンツホルダー」の役割を自覚
井原 資文氏  シリーズ累計の発行部数が1億5000万冊を突破した人気コミック「ドラゴンボール」が誕生して20年――集英社は、東京・お台場の特設ショップのオープンに合わせて、7月16日の朝刊に20周年記念の二連版見開き広告を掲載した。新聞広告に使われたキャラクターは、20周年キャンペーンのために原作者の鳥山明氏によって描き下ろされた絵で、ファンにはたまらない演出だ。

明るいニュースを提供

 「新聞のセンター見開き30段という大きなスペースを使って、『20周年で1億5000万冊を突破』という明るいニュースを世の中に届けたいと思いました」と語るのは、宣伝部雑誌宣伝第一課係長の井原資文氏。今回の新聞広告はポスター化して書店に配布もしたが、単行本のセールスが主な目的ではない。これまで同社では、『週刊少年ジャンプ』などから次々にヒット作品が生まれてきたため、すでに単行本の刊行が終わった作品やキャラクターを再度クローズアップすることにはあまり力を入れてこなかったという。
 「我々の仕事は作家さんから作品をお預かりして、それを運用して利益をお返しするというビジネスモデルで成り立っています。それがただ新しい作品を作り出すだけでは、あまりにももったいない。才能ある作家さんたちにも失礼だと思います」
 数年前からは、「ジャンプフェスタ」や、インターネットのHP「JUMPLAND」など多角的な展開で、作品やキャラクターのロイヤルティーを維持するための“ブランディング”にも力を入れている。
 「メディアの多様化が進む中、出版社も今後は圧倒的にライツビジネスの方向に向かわざるを得ないと思います。我々は作品を生み出すコンテンツメーカーであるだけでなく、『コンテンツホルダー』として、キャラクターや作品という文化的な資産を大切に育てていくべきだと思っています」
 この夏、お台場で行われた「ドラゴンボール」のイベント会場には、ウオークラリーに参加する多くの子どもの姿が見られた。2002年には雑誌掲載時のカラー原稿がそのままの形で収録されている「完全版」の刊行開始とともに、フジテレビでアニメが再放送され、DVDのBOXセットが発売されるなどドラゴンボールの人気が再燃した。実はこれも関係者が積極的に仕掛けたものだ。
  「もちろん作品の力によるところが一番大きいのですが、重層的にフォローすることで、『完全版』だけではなく、すでに刊行が終わった『ジャンプ・コミックス』も通常の作品の初版分くらい売れました。これは新しい読者、つまり今の子どもが購入したということで、親から子へ作品が引き継がれていることを感じました」
 今回の広告掲載媒体に読売新聞を選択したのは、「広くファミリーで読まれているから」。狙い通り、本誌の読者モニターからも「広告を小学生の息子が興味深そうに見ていた」「自分がドラゴンボールで育った世代ということもあり、非常にうれしい気持ちになった」「新しい日本の顔として、これからも頑張って欲しい」などのコメントが寄せられている。

マンガ世代の広がりと新聞広告

  マンガの原作が次々にアニメ化されてヒットを飛ばし、いまや世界をリードするアニメ大国となった日本だが、実はマンガには読むための技術が必要だという。
 「マンガを読むというカルチャーが日本ほど発達した国は珍しいでしょうね。逆にアニメ先行でマンガというカルチャーが定着していない国だと普及が難しい。ただアニメを紙に写して描いたものじゃないのって言われてしまいますから」
 「団塊の世代」以下の世代は抵抗なくマンガに親しんできたが、書店では通常大人向けの書棚にマンガを置いておらず、ともするとコミックコーナーが「子どもだけの売り場」になっている現状がある。コミックは確実に売り上げを見込めるため、書店にとっても大きな売り場を確保して力を入れているジャンルだが、「それがかえって大人を遠ざけている面もある」という。最近でこそ新聞の書評欄などに取り上げられることも増えてきたが、「まだまだ小説よりも下に見られていることを感じます。エンターテインメント小説などを読んでいて、これならマンガのほうが優れた作品があるのに、と感じることも多いのですが」と井原氏。
 また、宣伝の難しさとしては、消費者の広告を見る目が厳しくなっていることを挙げる。「ここ数年、書評型の広告や、書店での手書きPOPが流行しています。ブログの流行も同様の理由だと思いますが、従来のように広告主の一方的な主張が受け入れられなくなっているのでしょう。そうした中で出稿する新聞広告には、価値のあるニュースを世の中に送り出す効果を期待しています」

正月の新聞広告で感謝キャンペーンを宣言

 今年の元日の読売新聞には、『週刊少年ジャンプ』に連載されてコミックスの累計発行部数がそれぞれ1億冊を突破した四作品の主人公が登場する全ページ広告が掲載された。同時に「ありがとう!一億冊突破キャンペーン」の予告もしており、「ドラゴンボール」の20周年キャンペーンもこの一環だ。「ワンピース」では春先の映画公開に合わせて渋谷駅周辺のビルボードをキャラクターでジャックし、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」では主人公が幼少期を過ごした浅草神社に記念石碑を建立し、同時に記念のイベントを開催した。今後、「スラムダンク」でも記念企画が予定されている。

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 同社は、今後も「コンテンツホルダー」としての施策を一層強化していく予定だ。

1月1日 朝刊 7月16日 朝刊


(横尾)
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