From Overseas - London 2005.7・8/vol.8-No.4・5

テレビに迫る機器と危機
 最近印象に残った広告があるだろうか? 面白い広告、インパクトのある広告というのはテレビCMに多いが、一方で、テレビの15秒や30秒のCMでは難しい商品特性の説明には、新聞などの紙媒体やインターネットを利用する。一般的な広告メディアの使い分け方で、複数のメディアがあって広告キャンペーンが完結する。
 ところが、広告メディアの雄のひとつだったテレビが「先行き不安なメディア」の代表に挙げられることが増えてきた。
 「PVR(パーソナル・ビデオ・レコーダー、またはハードディスク・レコーダー)保有者の25%が『まったくCMを見ない』。50%が『よくCMを早送りする』」(メディアエッジ:CIA、世界新聞協会のカンファレンスで)
 「2009年までに、テレビCMの5分の1以上はスキップされることになる」(アクセンチュアのメディア調査)
 「2010年までに、イギリス世帯の50%がPVRを保有するだろう」(メディアエージェンシーPHDのリポート)
 PVRの普及により、視聴者が広告モデルのテレビ放送を支えていたCMを意図的に見ないことが容易になっているわけだ。
 テレビ業界としては、予測可能な暗い将来に対し、手をこまぬいているわけではない。ドラマなどコンテンツのDVD化、インターネット配信など2次利用はもちろんのこと、英衛星放送大手のBスカイBは、視聴者がCMを見るとロイヤルティーポイントがたまるシステムを構築中だという。
 広告主側にも、様々な動きが出始めた。最も一般的なのは、テレビ番組やスポーツイベントへの協賛だ。
 たとえば、イギリスのサッカー2部リーグにあたる「ディビジョン1」は、2004/05シーズンからリーグ自体の名称が「コカ・コーラ・チャンピオンシップ」となった。各新聞やテレビ局は、このリーグのニュースを伝えるとき、必ず「コカ・コーラ・チャンピオンシップ」という名称を使用する。
 また、新聞社のガーディアンは、今年の夏から「ガーディアン・スポーツ・ショー」というスポーツ番組を民放で放映すると発表した。従来はスポーツ中継にスポットCMを出稿していたが、PVRの普及に対応してこの手法に切り替えるそうだ。
 自動車会社のレクサスに至っては、スポットCMを「ニュース番組」にしてしまった。
 「今夜、エンジンの未来が明らかに。午後7時35分からチャンネル4」
 同社は6月6日付のタイムズ、ガーディアンなどに、全ページのカラー広告を掲載。しかし、その時間に流れたのは新型ハイブリッド・エンジンの90秒CMだった。CMを製作したサーチ&サーチは「(このエンジンは)自動車業界にとってのチャレンジであり、大きな話題を作りたかった」と意図を説明している。
 「新聞があと10年生き永らえることはないだろう」。CNN創設者のテッド・ターナー氏がこう予言したのは1981年のこと。それから四半世紀が過ぎ、新聞の輪転機が変わらず回り続けているのに対し、広告メディアとして「絶滅危機品種」に登録されたのは、皮肉なことにテレビだった。
 現在、インターネットや携帯電話も広告メディアとして大きな成長を続けているが、いつの日かこの2つを脅かす新しいメディアが誕生するだろう。そのメディアがどのようなものか、今から楽しみである。

6月6日 ガーディアン紙
(6月11日)
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