企業訪問 2005.7・8/vol.8-No.4・5

「革新と洗練」でスイス勢に対抗
 一本30万円以上もするような、高級腕時計が売れているという。「時刻を知る」という機能だけでは語れない腕時計の魅力と、今後の国内時計産業の動向について、セイコーウオッチ 常務取締役 国内営業本部長 村上斉氏に話を聞いた。

村上 斉氏   今、本屋の雑誌コーナーに行くと、数え切れないほど多様な時計専門誌が平積みされていることに気が付くだろう。ビジネス誌やカー雑誌でもこぞって腕時計特集が組まれているので、興味がない人でも一度はご覧になったことがあるかもしれない。
 このように、巷では腕時計ブームが起きているが、その中心となるのはロレックス、オメガを中心とするスイス製ラグジュアリーブランドだ。
 セイコーの調査によると、国内の時計市場は小売価格ベースで年間5400〜5500億円と見られている。その内、約6割が10万円以上の高級品だが、実にその9割までもがスイス製に占められているという。
 1970〜80年代には安価かつ正確なクオーツウオッチで世界を席巻した国産メーカーだったが、90年代からは、逆にファッション性に優れたスイス製高級機械式腕時計に国内市場が席巻されることになった。
 そんな中、正統的なデザインと日本らしい緻密な精密技術を身につけた「クレドール」「グランドセイコー」ブランドを有し、スイス勢に対抗しているのがセイコーウオッチである。
 
対スイス戦略の切り札

 セイコーは1881年の創業以来、初の国産ウオッチ(1913年)、世界初のクオーツウオッチ(69年)など、次々と画期的な商品を世に送りだしてきた。その後、時計事業を中心に、カメラ用部品などのプレシジョン事業をはじめ、眼鏡、宝飾、スポーツ・トイレタリー商品など事業を拡大した後、各事業を順次分社化。2001年7月、ウオッチ事業部門も本体から独立し、セイコーウオッチが誕生した。
 新体制に移行した理由について同社常務取締役 国内営業本部長 村上斉氏は「業界構造や消費者の時計に対する価値観の変化に対応するため」と語る。
 「10万円以上の高級腕時計が30代以上に売れているが、逆に10代は時計を身につけず、時刻確認はケータイで済ませるようになっている。そのため、腕時計業界は需要回復に向け、いかに対応するかが重要になっている」
 同社がまず取り組んだことはブランドの整理だ。当時20以上あったプロダクトブランドを8つにまで絞り込み、その中でも「グランドセイコー」や「ルキア」など五つのブランドを対スイス戦略の要として、集中的な投資を行った。その上で、車のエンジンにあたる時計のムーブメントには、スイス勢がまねできない最先端技術を盛り込み、競争で優位に立つ戦略に出た。その代表的な例が、機械式でもなく、クオーツでもない第3の駆動機構「スプリングドライブ」だ。ゼンマイのほどける力を動力源としながら、水晶からの正確な信号によって精度を制御するセイコー独自のこのムーブメントは「グランドセイコー」に搭載され、スイス勢を驚愕させた。

ブランドを意識した広告展開

 同社は昨年、マーケティングに関する新戦略として「革新と洗練」を打ち立てた。革新とは先進技術を、洗練とはデザイン性を意味し、2つを融合させた商品やマーケティングを通じてセイコーブランドの価値向上を目指すという。この戦略を生かすため、宣伝にもまったく新しいコンセプト「DESIGN YOUR TIME」を今年から導入した。
 「セイコーブランドの価値観やイメージを上げるため、長期的プランで取り組んでいる。このアンブレラの下にそれぞれのプロダクトブランド、それも革新と洗練に合う『先進技術商品群』『女性向け商品』『グランドセイコーなどの高級品』の3つを置いている」
 現在、同社は新聞をはじめ、すべての媒体で「DESIGN YOUR TIME」を前面に打ち出し、ブランド構築を強く意識した宣伝活動を行っている。
 「6月10日の『時の記念日』に出稿したグランドセイコーや、今年誕生10周年を迎えたルキアの新聞広告についても、すべての人それぞれにとって大切な時間、その一瞬一瞬を大事に過ごしていただきたいという『DESIGN YOUR TIME』の考えを通じてブランド価値向上につなげたいと考えている」

先進技術と洗練性の追求

 セイコーは来年創業125周年を迎えるが、これからも先進技術を追求していく姿勢に変わりはないという。「電波時計に限らず、時にまつわる最新の関連技術が控えている。その中で、いかに高級品を確立していけるかというのが勝負になってくる」
 その一方、ファッション性の重要さも忘れていない。「現在、『ルキア』は女性向けの時計としては国内ナンバーワンブランドだ。それだけ女性に支持されているわけだから、今後も洗練性を追求していく」
 これからも、我々の「時」を彩ってくれる、革新的かつ洗練されたウオッチを楽しみにしたい。

5月27日 朝刊
 
6月10日 朝刊

(佐藤)
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