AD FILES 2005.7・8/vol.8-No.4・5

「見えないメニュー」を分かりやすく伝える企業広告
河南 順一氏  日本マクドナルドは、今年3月30日に社長兼CEOの原田泳幸氏が会長も兼任する新体制となった。同時に「マクドナルドの見えないメニュー、はじまる。」をスローガンに新しい施策をスタートさせ、4月9日の読売新聞朝刊に全ページのカラー広告を掲載した。

ベストの日付に情報発信

 今回の新聞広告について、「お客様に向けてマクドナルドが提供している本当のバリューをわかっていただきたいと思いました」と語るのは、マーケティング本部ヤングアダルトマーケティングチーム部長の河南順一氏。
 同社は3月31日に記者会見を開き、新体制の発表と「見えないメニュー」の説明を行った。実際に新しいメニューが店頭に登場する4月19日までには約3週間あったため、「メディアで一通り報道された後、実際のメニューが始まるまでに新しい施策をお客様に浸透させることが必要だと考えました。そのための広告掲載のタイミングとして、一番広告を見てもらえる可能性が高いスタート10日前の土曜日を選びました」。
 また、メディアの報道では新しい価格体系のみが、値下げとしてクローズアップされることも予想されたため、今回の新聞広告では価格体系だけが突出しないように、「見えないメニュー」の六つの施策である「ベストプライス」「クオリティー」「おもてなしの向上」「Balanced, Active Lifestyles」「always music」「社会貢献活動」をバランスよく紹介し、それぞれにふさわしいシーンの写真を並べている。「もちろん価格についてはマクドナルドが優位性を持っている部分で、お客様にアピールしたいバリューの1つでもあります。しかし、今回の施策は単なる値下げではなく、有形、無形を含めて総合的な価値を提供することです」
 さらに手書きのコピーを採用することによって、原田CEOから直接読者に語りかけているようなイメージを出したという。「我々からの一方的な押し付けのメッセージではなく、きちんと親しみを持って受け入れてもらいたいと思いました。また、例えば少年野球の写真は当社が20年間スポンサードしているトーナメントの優勝チームがグアムで親善試合を行った時に撮影したものです。紙面ではわかりにくいかもしれませんが、実際にマクドナルドに愛着を持っている人に登場してもらうことにもこだわりました」
 今回の「見えないメニュー」のキャンペーンは新聞だけでなく、販売ターゲットに合わせてテレビ、ラジオ、雑誌、交通広告などでも広く展開されたが、「企業としてのメッセージを、1人でも多くの人にきちんとタイムリーに伝えるためには、新聞がベストなコミュニケーション手段だと判断しました。また、新聞広告はカラー印刷のクオリティーが高く、ビジュアル的にもインパクトがある媒体だと再認識しました」。
 
店舗で作られるブランド

 マクドナルドのブランディングにおいて、最も大きく機能しているのが日本全国にある約3800の店舗そのものだ。河南氏は「店舗体験がブランドそのもの」だと言い切る。同社が掲げる企業フィロソフィーは“FUN”だが、「それぞれのクルーの思い入れでマニュアル以上のおもてなしをして、お客様に楽しく快適な体験をしてもらう。その楽しさこそがマクドナルドのブランドに結びつく。それが“見えないメニュー”の柱になっています」。
 とはいえ、日本全国で働くクルーは約13万人。さまざまなキャンペーンや活動を対外的に発信する前に、クルーにきちんと理解してもらうことが不可欠だ。「一番してはいけないのは、外部に向けてのみ情報発信をして、実際に店舗でお客様と直接応対するクルーがあまり情報を理解していないことです。お客様から質問されても店頭のクルーが答えられなければ、逆効果になりかねませんから」
 そこで、今回の「見えないメニュー」スタートの前には、クルー全員に向けたブランドブック(小冊子)を配り、新しい施策に対するインナー意識の統一化を徹底した。今回の新聞広告では、外に向けた情報発信とともに、内部の意識をフラット化する効果も狙ったという。「新聞広告はクルーだけでなく、その家族も目にします。自分の家族がマクドナルドで働いているということで、エモーショナルな絆を感じる人が13万人×αいればいいと思いました。それがクルーの充実感となってサービスのクオリティー向上につながり、さらに我々のブランドイメージを高めると考えています」
 
草の根の社会貢献活動も

 昨年11月20日の「世界子どもの日」には、病気療養の子どもに付き添う家族を支援するための「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の活動と募金活動を紹介する新聞広告を掲載した。「日本のマクドナルド・ハウスは2001年に第1号が建てられましたが、その理念を現場に浸透させるには時間がかかりました。まずは内部のマインドを高めることを優先してインターナルな活動を進め、それが深まってきたタイミングで、昨年初めて新聞広告を掲載しました」
 マクドナルドでは、店頭での募金活動などのチャリティー以外にも、様々なスポーツをサポートするなど草の根的な社会貢献活動に力を入れている。「それらは今でいうCSR活動の一環として以前から取り組んでいるもので、必ずしもハンバーガーの売り上げに直結する必要はないと考えています。あくまでもマクドナルドだからこそ提供できるバリューの1つなのです」
 河南氏は「これからも、マクドナルドの強みであるワールドワイドなブランド力を積極的に生かすことで、グローバルな宣伝展開を図ります」と語る。世界共通のガイドラインに沿って宣伝活動を行っているという同社だが、店舗での露出や告知も含め、今後もメディアの特性に合わせて宣伝戦略を考えていくという。
 「中でもモーメンタムを作る場合や、新しい施策をタイムリーにインパクトを持たせて告知する時に新聞広告はベストな媒体だと考えています」

2004年11月20日 朝刊 2005年4月9日 朝刊

(横尾)
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