ojo interview 2005.6/vol.8-No.3

大貫 卓也氏
大貫 卓也氏

 としまえん「プール冷えてます」、カップヌードル「hungry?」、新潮文庫「Yonda?」、ペプシコーラ「ペプシマン」―広告の本質を見極め、伝えるべきことをすべて集約した上で、最もシンプルな解決法をクールに提示する。多くのクリエイターが信奉する大貫流のアートディレクション術だ。
 「僕は、なんか面白い広告の人って思われている節があるみたいで。嫌ですよ。本当はそういうキャラじゃないんだから」と冗談めかして笑うが、決してただ面白い表現や素晴らしいデザインを作ろうとしているわけではない。「みんなが同じ方向を目指して均質化している中、一番大切なのは、オリジナルなブランドや企業の価値、そしてビジョンをどれだけきちんと作れるかどうか」だと説く。それが世に出たときに、どのような機能を持ち、どのような効果を生むのか、理詰めと感性の両刀使いで確信を得るまで完璧(かんぺき)を求める。
 博報堂勤務時代から「競合も本質論で突破するから負ける気は微塵(みじん)もなかった」が、「信頼関係がない中での戦いにはうんざり」していた。日々、今までにない『新しさ』を追求するうちに、自分の考えがどんどん進化している実感があるという。近ごろは広告を根源的に考えるあまり、経営レベルの問題まで含めて答えを考えざるを得ないため、「だんだん仕事がヘビーになってきた」と苦笑する。が、「企業活動のすべてが広告として機能している」という持論を曲げる気はない。仕事は人間関係で成り立つもので、企業が社会に明確なビジョンを示すためには信頼できるアートディレクターと長く付き合っていくことが必要、との思いは強い。
 「本当はこんな辛気くさいヘビーな話ばっかり、僕、言いたくないんですけど(笑)」と何度も口にしつつ、今後は「目先のことにとらわれないモラルのある広告を通じて、企業にとって、いや世の中にとって5年、10年先の利益につながる仕事をしていきたいですね」。

文/横尾一弘  写真/はやしたつお

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