特集 2005.5/vol.8-No.2

本は変わろうとしているか
「読書力」を培う第二ステージへ 21世紀活字文化プロジェクト

 読売新聞社が出版業界と協力して、2002年11月から取り組んでいる「21世紀活字文化プロジェクト」は、今年から2期目に入った。第1期の成果と、第2期の活動計画について、活字文化推進会議事務局の新山豊事務局長に聞いた。

――「活字文化プロジェクト」の目的は何ですか。
 2004年12月に発表されたOECDの学習到達度調査でも、日本の子どもの読解力がかなりダウンしていることが明らかになりましたが、以前から若者の活字離れが指摘され、危機感がありました。「思考力や想像力を育てるための読書」というものをもう一度考え直さなくてはならないというのが、このプロジェクトを立ち上げた理由です。
 そこで、まず結成したのが、読売新聞社と出版業界が協力してつくった「活字文化推進会議」です。山崎正和氏を委員長に、作家、学者などの文化人、出版業界の主な団体のトップ、経営者によって構成されています。この会議で日本の活字文化を推進するプロジェクトを立案、学校図書館の実態調査や、フォーラム、公開講座、読みきかせ教室など、さまざまな事業を展開してきました。

【第1期】浸透した活動の意義

――第1期の最も大きな活動としては。
 まず、我々が行っている活動の意義をできるだけ多くの人に知ってもらうため、「活字文化推進フォーラム」を全国各地で8回開催しました。なぜこのようなプロジェクトが必要なのかという現状分析に始まり、読書の効用を語った最終回まで、読売新聞紙面も使い、広くアピールしました。

――フォーラムにはどのくらいの応募がありましたか。
 多いときには4000人近くの応募がありました。驚いたのは、各地で開催されるフォーラムに、その地域だけでなく全国から応募があったことです。聴講者の年齢は、最初は50代、60代が中心でしたが、後半になるに従って20代、30代、学生、高校生まで参加するようになりました。

――公開講座というのは、具体的にはどのような内容だったのでしょう。
 作家などを講師とする「活字文化公開講座」を全国15大学で開催しました。最近の大学生は本を読まなくなったという声をよく耳にします。学生に本を読んでもらい、論理的な思考力を持つ人たちが育ってもらわないと、日本の将来は危ないという思いから企画したものです。
 また、読書の原点は家庭にあるとの思いから、「お父さんとお母さんの読みきかせ教室」を計23回、これも全国で開催しました。絵本作家や児童文学作家が絵本や紙芝居を使って読み聞かせのコツを若いお父さんやお母さんに指導する教室です。小さな子どものいる家庭で読み聞かせを実践してもらえれば、本好きの人が自然に増えていくだろうと思います。
 さらに大阪では、毎年11月に「子どもの本フェスティバル」を開催し、絵本・児童書を1万冊以上集めて展示即売するとともに、絵本コンサートや物語の続きを書くワークショップなど多彩な事業を展開しました。第1回は2日間で1万2000人、第2回は1万4000人が来場しています。

第6回活字文化推進フォーラムパネル討論会 お父さんとお母さんの読みきかせ教室


【第2期】より実践的な活動へ

――第2期プロジェクトは何を目指しているのでしょうか。
 第1期の活動の総括として、活字文化推進会議が5項目の「読書推進アピール」をまとめ、昨年11月5日の朝刊で発表しました。第2期は、この具体化を柱にすえて、より実践的な活動を展開していこうと考えています。第1期のフォーラムは活動の意義を広め、議論を深めることが目的でしたが、第2期ではもう少し柔らかいタッチの事業を行い、本を読む層の拡大を図るのがねらいです。

――第2期の主な活動をいくつか紹介してもらえますか。
 まず、「新!読書生活」というトークショーがあります。作家の石田衣良さんや編集者の松田哲夫さんらに読書ナビゲーターになっていただき、ゲストの著名人と読書にまつわる思い出や生き方を語ってもらったり、文学論を戦わせてもらったりするものです。トークショーの内容は、読売新聞にも掲載されます。同時に、全国の百書店でテーマに即したブックフェアを開催します。そこで扱う本は、ナビゲーターとゲスト、主催者である「活字文化推進会議」の三者で協議して選びます。今年は計5回を予定しており、来年を含めて、10回程度は開催していこうと思います。
 2つ目は、第1期の大学での公開講座をさらに発展させた「読書教養講座」です。青山学院大学、関西大学、西南学院大学の3大学にモデル校になってもらい、半期14コマ程度の新しい授業を今年の秋から始めます。読書の楽しみを、わかりやすく学びながら、単位が取得できる仕組みです。ガチガチの文学論を展開する授業ではありません。学内のさまざまな学部から受講できるのが特徴です。また、そのうちの1回は公開講座と同様、一般の人たちも受講できるようにします。
 これまで大学の文学部の授業は文学論が中心でしたが、我々は学生に本や読書に興味を持ってもらう“仕掛け作り”をしようと考えています。小学生時代には、ほとんどの人が本を読んでいたはずですが、中学、高校、大学と大きくなるにしたがって読書をしなくなります。読書から離れた若い世代に、もう1回本に興味を持ってもらうきっかけの場を作ろうと思っています。
 子どもたちの考える力を育てるには、やはり本を読むのが一番です。好評だった「お父さんとお母さんの読みきかせ教室」は第2期でも継続します。また、大阪で行う「子どもの本のフェスティバル」や、従来型の一般の方も参加できる「活字文化公開講座」も引き続き開催します。

活字文化推進会議5項目の読書推進アピールの紙面 2004年11月5日朝刊


【今 後】地域振興型の活動も

――超党派の「活字文化議員連盟」による『文字・活字文化振興法案』が国会に提出されるそうですが。
 4月11日に『文字・活字文化振興法』シンポジウムが開かれましたが、活字文化の推進も、法律でやらないとどうにもならないところまで来たというのが厳しい現実です。
 「読書というのは本来個々人がやるべきことであって、読書推進を法律にうたって、それを義務づけるのはおかしい」と主張する人もいます。読書というのはあくまで個人的行為であって、それを押しつける必要はないという考え方は、我々も同じです。読書をする機会を増やし、身近なところにあるいろいろな読書環境の整備をしていこうというのが、新法や我々の活動の根幹です。

――将来的な展開として考えていることはありますか。
 例えばイギリスには、「スポンサー付き読書」と言われる読書推進の仕掛けがあります。「私は夏休み中にこの本を読みます」と宣言して、実際にお父さんやお母さん、隣近所の人たちと契約を結ぶんですね。それで本当に読んだらご褒美がもらえる。ただし、その内の何割かは寄付に回します。そこではボランティア精神も学べます。今後はそういった地域密着型の地道な活動も必要だと思います。
 第2期の活動は2007年の3月までを予定していますが、活字文化プロジェクトは読売新聞社として最低でも十年間は続ける予定です。我々の願いは、活字文化推進活動を国民運動に発展させることです。出版業界はもちろんのこと、経済界や自治体などとも一体となり、読書推進の大きな流れを生み出したいと考えています。

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