今月のデータ 2005.5/vol.8-No.2

本はどう読まれているか
 若年層を中心に「本離れ」が進んでいるとよく言われるが、それは本当か。読売新聞一般個人調査と全国世論調査のデータから、本の読まれ方の実態を探っていく。


本離れには歯止め?

 2004年の出版物の売り上げが8年ぶりにプラス成長に転じた。雑誌は依然、不振だが、書籍が前年比4.1%増の9429億円と大幅に伸びている(出版科学研究所発表の推定販売額)。
 2004年一般個人調査によると、過去3か月間の書籍平均閲読冊数は全体で2.8冊(図1)。97年と同じで、前年と比べると、こちらもやや持ち直している。
 1冊でも読んだ人に限った平均閲読冊数はやや減っているものの、「読まなかった」人の割合は32.7%と過去8年間で2番目に低い数字になっている。本を読む人の裾野はやや広がっていると言えそうだ。
 2004年のデータをさらに性・年代別に見ていくと(表1)、閲読者の平均閲読冊数は男女とも4.1冊。トップは男性40代の4.5冊、次に女性20代4.4冊、女性30代、40代各4.3冊と続いている。男女60代と女性10代で平均冊数が3.3〜3.7冊と目立って少なかった(図にはないが、2冊以上読んだ人の割合は60代を除くすべての性・年代で半数前後と差は小さかった)。また、非閲読者の割合が最も高いのは男女ともに60代、次いで30代だった。
 これらのデータから、最も本を読まないのは男女60代で、30代男性もやや本を読まない傾向があることがわかった。しかし、男性20代以下、女性10代は、冊数こそ少なめだが閲読者の比率は全体平均以上で、若年層で本離れが顕著とは言えない。また、女性20代は40代と並んで最も読書好きな層であることがわかった。女性30代も、読まない人はやや多めだが、読む人は平均以上によく読んでいることがうかがえる。

書籍の平均閲読冊数と読んでいない人の割合の推移(過去3か月間)


表1 書籍の平均閲読冊数と読んでいない人の割合(性・年代別)

表1 書籍の平均閲読冊数と読んでいない人の割合(性・年代別)

本への意識の変化

「本離れ」に対する意識(本離れを心配に感じることがあるか))
 2004年10月に行った読売新聞全国世論調査で、「最近本離れが進んでいるといわれていることについて、心配に感じることがあるか」と尋ねている(図2)。「ある」と答えた人は「大いに」「多少は」をあわせて64%にのぼったが、こうした意識には世代格差があり、30代より上の年代ではいずれも6割を超えたのに対し、20代は42.6%と目立って低かった。
 確かにこの数字を見ると若者は本への関心が低いという印象を受けるが、同調査では、「本を読む理由も聞いている」(図3)。
 全体では「知識や教養を深めるため」が47.4%でトップ。以下、「面白いから」が37.3%、「仕事に役立てるため」「時代の流れを知るため」がそれぞれ約22%と続いている。しかし、ここで注目したいのは、年代が低くなるほど「面白いから」という答えが多くなっている点だ。特に20代では52.5%と、他の項目を大きく上回っている。
 何かのためになるからというより、面白いから本を読む……今後ますますそういう人は増えてくるだろう。若年層に限らず、人々を読書に呼び戻すためには、「本というものに対する意識」が変わってきていることにも注目すべきではないだろうか。

本を読む理由(複数回答)

女性と若い層は話題の本に弱い

 図4は、同調査で「主にどんなきっかけで読む本を選ぶか」を尋ねた結果である。「書店の店頭で見て」が40.7%と目立って高く、2位は「新聞の書評を読んで」、3位と4位に「ベストセラーなどの話題をきっかけに」「新聞や雑誌などの広告を見て」がほぼ並んでいる。
 性・年代別に見ると、「書店の店頭」は30代の53.9%を筆頭に40代以下で5割前後と特に高スコアだった。「新聞の書評」「新聞や雑誌などの広告」はそれぞれ40〜60代のスコアが高めだが「書店の店頭」ほどスコア差はない。「ベストセラーなどの話題」は性・年代を問わず高いが、特に女性と30代以下の若い層では3割を超え、特定の本が爆発的に売れるという最近の本の売れ方を裏付けている。

読む本を選ぶきっかけ(3つまで)

書店や出版社への要望

 店頭で本を選ぶ人が多いことがわかったが、書店はどの程度利用されているのだろうか。図5は一般個人調査で、本を買う人(全体の73.6%)に対して「書店に行く頻度」を尋ねた結果である。
 「週に1回」がすべての性・年代で最も多く(60代以外では3割前後)、週に1回以上来店している人が半数近くを占める。若い層ほど来店頻度が高い傾向がうかがわれ、20代以下では週1回以上の来店者が6割にのぼっている。立ち読み目的も多いかもしれないが、若い層は比較的本屋に親しんでいるようだ。
 週に1度は書店に足を運び、話題の本を中心に気が向けば読んでもいる……そんな人たちにもっと本を買ってもらうためにはどうすればよいのか。
 その答えは簡単には出ないだろうが、世論調査では、人々が出版社や書店にどのようなことを望んでいるのかを聞いている(表2)。
 50代までの全年代でトップに挙がったのは「本の値段を下げて欲しい」。60代以上は「字の大きな本を増やして欲しい」が4割を占めてトップだった。2位以下の項目は男女差より年代差が大きく、20・30代では「本を探しやすくして欲しい」が各3割、「良書を積極的に紹介して欲しい」が2割を超えている点が目をひいた。「書店に商品知識の豊かな店員を増やして欲しい」という要望も30代が2割近くと最も高かった。また、「携帯しやすい本を増やして欲しい」が40代以下の層で2割を超えている。確かに通勤通学に持ち歩いたり、電車の中で読む人には小さい方がいい。
 本の値段を下げるのは難しいだろうが、これらの要望は若い人から中高年まで、それぞれのニーズに応えた本作りや売り方のヒントになるだろう。
 春先、「全国書店員が選んだ いちばん! 売りたい本 2005年本屋大賞」が世の中の注目を集めたが、書店の側でも話題の本を自ら作り出していこうとする試みが見られる。人々の本への意識は変わってきているが、読者ニーズをよく汲みながら、このような取り組みを積極的に行っていくことで、人々を本に呼び戻す流れが作り出されるのではないだろうか。

書店に行く頻度(本を買う人

表2 出版社や書店に望むこと(複数回答)

表2 出版社や書店に望むこと

2004年一般個人調査(東京)
[その他の年もフレームは同様]
  読売新聞全国世論調査
調査期間 2004年6月25日〜7月15日
調査地域 東京40km圏
調査対象 15〜69歳の男女個人
サンプル数 4,200
サンプリング 住民基本台帳を基にした二段階無作為抽出
調査方法 訪問留置法
有効回収数(率) 3,023(72.0%)
調査企画・設計 読売新聞東京本社広告局
レターヘッド・実査 ビデオリサーチ
 
調査期間 2004年10月9日〜11日
調査対象 全国の有権者3,000人
サンプリング 層化二段無作為抽出
調査方法 個別訪問面接聴取法
有効回収数(率) 1,818(60.6%)

(中尾)
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