特集 2005.4/vol.8-No.1

「クチコミ」が変えるもの
「くちコミ」と「マスコミ」を連動させる視点

つづみモデル
つづみモデル


イノベーターとの違い

――以前、オピニオンリーダーに伝えれば、そこから情報は伝わっていくという考え方がありましたが。
 商品によって、あるいはその商品の置かれている状況によっても「くちコミニスト」は変わります。同じ商品カテゴリーでも、OLのときもあれば、50代の主婦が「くちコミニスト」のときもあります。これまでの調査で、ある商品カテゴリーはA、Bどちらのタイプの比率が多いか傾向は出ていますが、個別の商品に必ずしも当てはまるわけではありません。

――「くちコミニスト」はイノベーターではない?
 イノベーターは新商品を真っ先に購入する人たちのことです。自分がいいと思ったらその商品に飛びつきますが、あまり他人に推奨する傾向は見られません。行動形態の一つに“オタク”に近い傾向があると思います。オタクは、自分のグループの中では活発に情報交換を行いますが、一般の人に対して積極的に推奨する傾向はありません。

――「くちコミニスト」とは、ほとんど重ならないということですか。
 むしろ、イノベーターの次のアーリーアダプターの方が、「くちコミニスト」の比率は多いですね。イノベーターが購入し、新商品の普及率が10%を超えたあたりから、その商品が世の中に採用されそうだから自分の仕事や生活の向上のために使ってみたいという人たちが出てくる。それがアーリーアダプターです。

納得したものを人に薦める

――クチコミをマーケティングに組み込むポイントは何でしょうか。
 当たり前ですけれども、まず、自社の商品に対して、どのような人がクチコミで自分の商品を推奨してくれるのかを把握する必要があります。「くちコミ調査2005」では、推奨理由の一番は、「自分の満足した体験情報を他人にも体験してもらいたいから」というものです。
 関西電力の「オール電化」をメディアとクチコミで普及させることに長年携わっていますが、それを知人に薦めたことのある主婦に聞くと、特に「IHクッキングヒーター」に対する満足度が高かった。彼女は料理が不得意で天ぷらを揚げるのが苦手だったのですが、IHクッキングヒーターは油の温度が一定に保て、天ぷらがとてもうまくできて感動した。その体験をきっかけに、知人に推奨するようになったというのです。特にAタイプの場合は、そういう体験が元になって推奨が起こることが多いですね。

――関西電力の「くちコミニスト」の集め方というのは?
 商品特性からAタイプの「くちコミアンバサダー」を集めようということで、「オール電化」採用の顧客からアンケートを取って、「ロイヤルアドレス分析」という手法を使って集めています。商品に対して非常に満足感が高く、自分で買う前に情報を集めたりするといったような人たちです。この人たちを対象に交流会を開いたり、メンバー同士が使えるサロンをショールームの一角に設けるなど、クチコミしやすい環境を整えました。また、そういうロイヤルティーの高い人を自宅訪問して、メディアで紹介していくということもやっています。

――そういう人たちは、簡単に集まるものなのでしょうか。
 商品にロイヤルティーの高い人たちに電話をすると、関西電力とコンタクトを取りたいという人が多く、引き受けてくださる方がほとんどです。企業とコミュニケーションを取ることにも積極的な層なのです。

コミュニティーとタイアップ

――話題性の高い商品については、どのような方法が取られているのでしょうか。
 Bタイプの場合は、ネットのコミュニティーの方が有効です。話題性がクチコミのきっかけになるのは、商品理解があまり必要ない日用品や食品などの商品ジャンルに多い傾向があります。

――コミュニティーに何か働きかけをするのですか。
 その一つにタイアップという方法があります。特定の商品のコミュニティーサイトがあれば、そことタイアップしたり、なければその商品のカテゴリーを専門にしているコミュニティーとタイアップする。

――いろいろなジャンルのコミュニティーができている?
 あります。例えば、OLを対象にした商品ならトレンダーズ(http://www.trenders.co.jp/intro/index.html)、シニアを対象とした商品ならシニアコミュニケーション(http://www.senior-com.co.jp/)という会社があります。焼酎が健康にいいという話題が広がったのも、こうしたシニアサイトからです。

――Aタイプのコミュニティー活用というのは?
 話題ではなく商品体験に関する情報が中心になりますから、ネットだけではむずかしい。もちろん顧客間の情報の共有に、ネットを使ってはいますが。

新聞とクチコミとの連携

――新聞とクチコミは、連携しやすいと思いますか。
 クチコミの弱点は、その人の信用度に左右されることです。ネットの書き込みにしても、クチコミは人による情報です。一方、新聞は、信頼度が最も高いメディアで、「新聞で読んだ」というクチコミは、信用を高める。ネットの世界にも非常に影響力があるメディアだと思います。
 もう一つは、コミュニティーの中だけで良質なクチコミが行われていたとしても、閉じられた世界の中だけの情報になりがちです。その良質な情報を外に広めていく手段としても、新聞は有効です。テレビでは30分番組でなければ伝えられない内容も、新聞なら一ページか半ページで伝えることができます。
 マーケティングでは、ATL(above the line、広告活動)とBTL(below the line、POP・プロモーション等の活動)の連動が重要だといわれますが、今後は、今まで言ってきたようなクチコミ活動から得られた情報を広告展開に利用していくという次の段階になっていくと思います。

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マーケット・メイブン――「市場の達人」とは何か
東京大学大学院人文社会系研究科教授 池田謙一 氏→


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(株)アイスタイル 代表取締役 吉松徹郎 氏→
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