特集 2005.4/vol.8-No.1

「クチコミ」が変えるもの
「くちコミ」と「マスコミ」を連動させる視点

 コミュニケーション課題の解決のカギを握るクチコミ。しかし、コントロールがむずかしいクチコミは、これまでマーケティング手法としては体系化されてこなかった。マスとの連動の視点はどこにあるのだろうか。

――クチコミが重要になっている理由は、どのへんにあるのでしょうか。
 生活が豊かになって欲しいものがなくなってきていますし、人々が一日に接触する情報量も一昔前に比べ格段に増えています。また、商品自体の数も多くなっていますし、携帯電話のように機能が複雑化して理解することがむずかしくなっている商品もあります。そうなると、どうしても商品と自分との関係が希薄になる。知っているけれども、よく内容がわからない商品が増えてきます。購買行動プロセスの理論として、AIDMAの法則やダグマー理論がよく知られていますが、最近は、特にこの認知から興味へという段階が移行しにくくなっています。それをわかりやすく、パーソナルな自分との関係をつないでくれるものとしてクチコミが注目されていると思います。

――商品に関心を持ってもらう効果がクチコミにはある?
 購入のきっかけとして使用体験者の声を重視する傾向は、2002年からわれわれが毎年行っている「くちコミ調査」の結果にも表れています。
 その要因は、やはりインターネットや携帯電話の普及で個人の情報発信が容易になったことにあります。昔からクチコミはありましたが、それを広める手段がなかった。ところが、5年ぐらい前から、さまざまなコミュニティーサイトがネットの中に出てきています。そのクチコミの影響をマーケティングも無視できなくなってきたということだと思います。また、それと同時にマスメディアの役割が認知やブランディングにシフトしてきています。

クチコミの購入に対する影響(過去1年間)
「くちコミ調査2005」の報告書は廣告社http://www.kokokusha.co.jp/のService「くちコミマーケティング」からダウンロードできます。


マスメディアとの相乗効果

――クチコミはコントロールがむずかしいと言われていますが。
 確かにそうした理由から、クチコミはこれまでマーケティング手法としては体系化されていませんでした。「お友達紹介キャンペーン」のようなプロモーション手法は従来ありましたが、それは最近言われているような自発的なクチコミとは違います。われわれが取り組んでいるのは、自発的なクチコミと従来のマーケティングとの連携です。

――最近は、クチコミを専門にしている広告会社も出てきています。
 ただ、クチコミは万能ではなく、ましてや「マスコミ」と対立する概念でもありません。両者の相乗効果でコミュニケーション課題を解決することが、今後のマーケティングでは重要になってくると思います。

――あくまで、マスメディアとの連動を前提としている?
 ある商品があまり売れていないとしたら、何が阻害要因になっているかを知る必要があります。ブランド認知が足りない商品にクチコミマーケティングを行っても大きな効果は期待できません。潜在顧客を見込み客から顧客へと誘導していくのは主にマスメディア、広告の役割です。しかし、はじめに言ったように、最近は認知が興味・関心へ結びつかない傾向が拡大しています。クチコミは、「購入のきっかけ」という点でマスメディアを補完する役割を果たします。もう一つは、商品に対してロイヤルティーの高い顧客は知人に商品をすすめる推奨者になりますが、何をきっかけに顧客は推奨者になっていくのかがわかれば、それを方法化することができます。
 そうした考えを体系化したものが、図の「つづみモデル」です。つづみの上半分が、主にマスメディアの領域、下半分が「くちコミマーケティング」の領域で、キーを握るのが「くちコミニスト」です。

三タイプの「くちコミニスト」

――「くちコミニスト」というのは?
 知人に商品を推奨する顧客を「くちコミニスト」と呼んでいます。「くちコミマーケティング」の最大のポイントは、この「くちコミニスト」をいかに把握するかです。「くちコミマーケティング」は、この「くちコミニスト」を探し出すことと、「くちコミニスト」が推奨するクチコミのフレーズを決めることから始まります。

――具体的にはどういう人たちなのでしょうか。
 A、B、Cの三タイプに分かれると考えています。Aタイプは、商品を買った人の中でロイヤルティーが高いタイプです。商品に対して非常に満足感が高く、自分で買う前に情報を集めたり、積極的にその情報を波及させたりする素質がある人です。実際の自分の体験から人に商品を推奨する人たちで、「くちコミアンバサダー」と呼んでいます。

――やはり、商品に対するロイヤルティーの高さが、「くちコミニスト」のキーになる?
 ロイヤルティーではない推奨もあります。話題性をきっかけに波及する商品もかなりあります。これに関与するのがBタイプで、「コミュニティーエフェクター」と呼んでいます。若年層を対象にした商品は、このタイプの「くちコミニスト」をつかまえることが重要です。
 Aタイプは、商品の購入経験者、顧客が前提になりますが、Bタイプは必ずしも顧客とは限りません。友だちからの情報の場合もある。コミュニティーサイトの書き込みも、どちらかというとBタイプに近いものが多いと思います。
 それから、A、Bほど一般的ではありませんが、Cタイプの「オーソリティー」、その分野の権威による推奨があります。医者や弁護士、有名人の場合もあります。たとえば、スキンケア商品や飲料でも、お医者さんからの推奨は非常に購入に影響します。あくまでお医者さんの自発的推薦をどうつくっていくかがポイントで、地道な努力が必要ですが、いったん定着すると競合商品はなかなか入り込めなくなります。


マーケット・メイブン――「市場の達人」とは何か
東京大学大学院人文社会系研究科教授 池田謙一 氏→


マーケティングデータとしてクチコミを活用する
(株)アイスタイル 代表取締役 吉松徹郎 氏→
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