From Overseas - London 2005.4/vol.8-No.1

政権維持は広告のおかげ?
 まずは下の広告をご覧いただきたい。
 どこかの床にポツリと置かれた黒いかばん。
 「不審物を確かめる2つの方法があります??ひとつは999番に電話すること。もうひとつは・・・考えただけでも恐ろしい」と書いてある。詳しい説明をするまでもなく、これはテロ対策の広告だ。
 イギリスでは、昨今「テロ計画にかかわった容疑で逮捕」というニュースをよく目にする。
 最近では3月3日、イングランド中南部のコベントリーで3人の男女が逮捕された。人数の多かった逮捕劇では昨年8月の13人、10月の11人というのがある。おそらく日本にいるよりは、テロを身近に感じる機会が多いのだろう。
 ところでこの広告の左下にあるロゴは「Metropolitan Police」、つまり首都圏警察のもの。以前はスコットランドヤードと呼ばれていたこの組織は、ロンドン市内のほとんどの地域を管轄するほか、テロのような重要犯罪においては管轄地域を越えて活動する。
 しかし実際の広告主は、ロンドンのローカルメディアを中心に多額の広告費を支出するロンドン市である。2004年における同市の広告支出は2000万ポンド(約40億円、1ポンド=200円)以上と見込まれている。調査会社のニールセン・メディア・リサーチによる英広告主ランキングを見ると、同市の前後にいるのは大手銀行や薬局チェーンであり、イギリスにおいてロンドン市は大手広告主のひとつだ。
 さて、ロンドン市が「大手」広告主であれば、イギリス政府はどうだろうか。
 2003年のランキングを見ると、最も多く広告費を支出したのは家庭用消費財のP&G。ベストテンには、ロレアル、フォード、ユニリーバ(日本では日本リーバ)、ネスレなどの世界的企業のほか、通信会社のブリティッシュ・テレコム(以下BT)、携帯電話大手のオレンジなどが並ぶ。
 ところが、ランキングの2位に耳慣れない企業名を見つけた。「COIコミュニケーションズ」
 広告費を見るとP&Gが約1億9200万ポンド(384億円)、3位のBTが約9700万ポンド(194億円)で、間に割って入ったCOIコミュニケーションズ(以下COI)は約1億4300万ポンド(286億円)。BTは国営企業が民営化した通信会社で、日本で言えばNTTになる。BTをしのぐCOIは、「超大手」広告主といえる。
 このCOI、実は政府系機関の広告出稿を一手に引き受ける政府のインハウス・エージェンシーである。つまりイギリスでは、政府が第2位の広告主ということになる。
 イギリス政府が大手民間企業以上に広告費を支出するのは、古くからの伝統というわけではない。
 ことの始まりは、1997年のブレア政権誕生にさかのぼる。この年約4500万ポンド(90億円)だった支出は99年に約9900万ポンド(198億円)、総選挙があった2001年には約1億4500万ポンド(約290億円)となり、ここまでの4年間で3倍以上に膨らんだ。2004年は11月までの集計で約1億5000万ポンドに達しており、記録更新は間違いない。
 政府が広告という手段を使って伝えているメッセージは、たとえば税制の変更から、禁煙の効果、2012年の五輪招致を盛り上げるための広告など。それぞれ意味があるように思えるが、野党にしてみれば「大金を使って、国民にうまいことばかりアピールしやがって」となり、当然批判の対象となる。今年5月の総選挙に向け舌戦が展開されているが、現状では政策や成果を広告で上手にアピールしているブレア労働党に軍配が上がる公算が大きい。
 さて、話を「危険なイギリス」に戻すと、今年1月以降日本人を狙った強盗が多発している。ロンドン旅行を計画している方は、くれぐれもご用心を。

3月8日 メトロ紙

(3月11日)
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