特集 2005.3/vol.7-No.12

ABCとJ-READ

 (社)日本ABC協会によって認証された販売部数にビデオリサーチの「J-READ」が加わったことで、世帯到達から個人の接触まで新聞の第三者機関データが整備されてきた。それぞれの機関が提供する新聞のデータはどのような性格のものなのか。新聞の媒体力を知るための指標の意味を改めて探った。

新聞の部数を認証するABC

 新聞の販売部数の公査を行い、その販売部数の認証を行っているのが(社)日本ABC協会だ。認証部数とは何か。公査とは何か。意外と知られていない販売部数の公査について、南條事務局長と、公査員としても活躍する西野、山田の両氏に聞いた。
 
――日本ABC協会の設立の経緯からお聞かせください。
 南條 ABC(新聞雑誌部数公査機構)はAudit Bureau of Circulationsの略ですが、1914年にアメリカで最初に誕生した組織です。日本に紹介されたのは1918年(大正7年)ですが、組織をつくろうという機運が高まったのは戦後になってからです。戦前は50万部を100万部と言って当たり前、新聞社の中でも一部の人しか自社の発行部数を知らない時代だったのです。

――きっかけは、何だったのでしょうか。
 南條 当時、新聞の発行部数は非公開でしたが、広告料金の値上げをきっかけに1950年ごろ、広告主から広告取引の合理化を求める声が出てきた。それで同年に、日本広告会(現東京広告協会)は新聞協会に発行部数などの資料公開を求めましたが、公開には至りませんでした。
 そういった動きと並行して2年後の1952年2月に電通の提唱で、読売・朝日・毎日3社の営業局長が集まって「ABC設置の要望に関する座談会」、3月には有力広告主11社を集めた「ABC設置に関する広告主座談会」が開かれ、ABC設立の機運が高まっていった。発行社・広告主・広告会社三者共同の機関として同年10月に設立されたのが「ABC懇談会」です。創立時の会員社は、新聞社28、広告主43、広告会社20の合計91社でした。「懇談会」が「日本ABC協会」に改称されたのは1955年です。

難航した公査のルールづくり

――設立と同時に、部数の監査はすぐ始められたのですか。
 南條 新聞社に部数監査をやりますといっても、ルールがないとできません。実際に部数の監査が始まったのは1961年(昭和36年)ですから、設立から九年かかっています。

――その間、レポートは出していなかった?
 南條 出していました。監査はしていませんから、各新聞社の報告する部数がそのままレポートになっていた。

――懇談会ができた時点から、監査をやるというのは大前提だった?

 南條 もちろん、そうです。ABCの「A」はオーディット、監査ですから。監査のないABCは存在しません。しかし、それには発行社の合意を得て、どの帳票を見ていいかというルールを作る必要があったわけです。

――「監査」ではなく「公査」という時もありますね。
 南條 本来、「金融庁の考査」というように「考」の字を使いますが、「公査」は日本ABC協会初代専務理事・新田宇一郎氏の造語です。

――1961年に公査が実現した背景というのは?
 南條 いまも新聞のデータが少ないという声はありますが、広告主から新聞の部数公査を望む声が強くなった。新聞業界にも、「きちんと公査された部数を出さなければ、いつか、新聞広告は取り残される」という危機感もあったと思います。

――機械式でテレビの視聴率調査が始まったのが1961年と言われていますが、それとも関係がある?
 南條 それもあると思います。ただ、テレビ視聴率は調査ですが、新聞や雑誌の部数は監査です。ABC協会の公査員が発行社へ行って、報告されている部数が正しいか、帳簿を基に裏付けを取るわけですから。極端にいうと、営業報告書まで見せてもらう。販売部数を認証するためには、いろいろな裏付け資料を提示してもらわなければいけません。

ABCレポート発行社レポートと公査レポート

――ABCでは、いろいろなレポートを発行していますが。
 南條 具体的に日本ABC協会がどういうことをしているかというと、新聞の場合、発行社(=新聞社)から毎月、何部販売したか報告をもらいます。これは発行社が自主的に報告する部数で、これをまとめて会員社に配っているのが「新聞発行社レポート」です。
 このレポートには、「月別」「半期」の二種類があります。また、発行社は公査を受けなければならないというルールになっていて、公査により認証した部数の報告書として4月と10月に「公査レポート」を出しています。

――すべてのレポートが公査されているわけではない?
 西野 通常は、発行社の報告をそのまま「月別」や「半期」のレポートとして出しているだけです。その報告が、正しく行われているのか公査し、その結果をまとめたものが「公査レポート」です。

――定期的に監査することによって、発行社の報告部数を保証している?

 南條 そうです。発行社が言ったままの部数ではうそか本当かわからない。その部数は正しいと認証するのが、日本ABC協会です。

販売店まで行ってチェック

――公査は具体的にどのように行われるのでしょうか。
 南條 まず、発行社から報告されている部数が正しいか、新聞社を訪ねて「本社調査」をします。  
 新聞の販売部数には、販売店で売られる「販売店部数」、駅のキヨスクなどで売られる「即売部数」、本社から読者に直接送られる「郵送部数」があり、販売店部数がほとんどを占めています。公査では発行社の販売部門と制作部門をまず見ます。
 制作部門というのは印刷と、それに付随する用紙の購入使用関係です。販売部門では、販売店への請求部数を、たとえば売上台帳などを見て確認します。制作部門は、販売部門から印刷部門への印刷注文伝票と作業日誌や資材部の台帳と照合して、実際にそれだけの部数が印刷されたかを確認します。発行社の公査にはだいたい2人、大きい新聞社では4、5人の公査員が担当します。
 販売店調査というのは、そうした本社調査の裏付けとして、補足的な意味で行っています。新聞販売店はABCの会員ではありませんので、調査に協力いただいているということです。
 ABCの販売店部数の定義は、「本社から新聞を送付して、その原価を販売店に請求した部数」です。最後に、販売店へ送った部数が正しいと確認された段階で、初めて「認証」ということになります。

――訪問する販売店の数は、何店ぐらいなのでしょう。
 山田 2003年10月から05年9月までの2年間で、595店を公査する予定です。公査する販売店数は発行社1社につき最低3店、部数が多い場合は一定の割合で調査店数を増やします。全国紙の場合は、たとえば東京本社だけで40店以上に及ぶところもあります。

――最近はコンビニでも新聞が売られていますが。
 西野 コンビニで売られている新聞の大半はスポーツ紙ですが、販売店がフォローしているものと、販売会社がフォローしているものと両方あります。販売会社というのは、主に即売の取り次ぎを行っている会社です。

ABC公差
ABC公差

雑誌、フリーペーパーの公査も

――雑誌やフリーペーパーの公査も行っていますね。
 南條 専門紙誌の公査も行っています。新聞と比べれば、こうした媒体の公査は比較的簡単です。新聞でいえば即売に近い。
 雑誌の場合、書店に届いた冊数は納品伝票でわかります。それから返品分を差し引けば部数が決まります。精算も、トーハンや日販など販売会社との取引台帳を見ればわかる。印刷会社は大日本、凸版などに集中していますし、請求書の印刷部数でチェックすれば正しい印刷部数がつかめます。

――雑誌の公査の頻度はどれくらいですか。
 山田 年1回で、今年度は137誌が公査を受ける予定です。

――フリーペーパーの公査というのは?

 南條 フリーペーパーは代金回収がありませんから、印刷とデリバリーでチェックします。たとえば、配布員を使ってデリバリーしているとしたら、その手数料の台帳から配布部数を確認する。

――駅構内のラックに置いてあるようなフリーペーパーもありますが。
 西野 デリバリーは配送会社が扱いますから、配送指示書などで確認できます。

公査は、はじめに数字ありき

――基本的な質問に戻るようですが、ABCの公査の対象はプリント媒体だけでしょうか。
 山田 いまのところは、そうです。ただ、海外ではABCがインターネットの公査を始めています。アメリカ、ヨーロッパは7、8か国。オーストラリア、韓国でも始まっています。
 たとえば、アメリカのABCは1996年にインターネット部門としてABCi(ABC Interactive)を立ち上げてウェブサイトやインターネット広告の公査に取り組んでいます。われわれも、4年前に一度検討したのですが、予算も、人手も今の人員と同じくらいかかるということで、現状では無理だと判断しています。
 西野 アメリカでは25人の人員で4億円の予算で運営されています。ABC自体は日本と同じ会員組織ですが、ネット部門は民間にデータを売って採算を取る形態になっています。

――インターネットの場合、視聴率調査(オーディエンス・メジャーメント)というアプローチもあると思うのですが。
 南條 インターネットでも、プリント媒体でも同じですが、ABCの役割はメジャーメントではなく、オーディットです。メジャーメントは数字を測定する。オーディットは、数字ありきです。すでにあるものが確かかどうかを確認し、それに認証を与える。それがわれわれの仕事です。




新聞接触を量と質からとらえるJ-READ
ビデオリサーチ 経営計画局局長 鈴木芳雄氏
メディア調査局 布川英二氏
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