特集 2005.1・2/vol.7-No.10

2005年 経営活性化のキーポイント 個人株主と企業コミュニケーション
「証券市場活性化プロジェクト」で見えてきた個人投資家拡大の意義と課題
 「証券市場が活性化することで企業活動が積極的になれば、日本経済も勢いを増し、個人の生活環境も豊かになる」。個人投資家層の拡大と資産運用手段としての株式投資を促すべく、読売新聞社は昨年、創刊130周年記念事業として「証券市場活性化プロジェクト」を、1年を通して実施した。計5回にわたって行われたフォーラムから個人投資家拡大の意義と課題をまとめてみた。
 
 このプロジェクトでは、新聞読者を対象にした告知・募集により計5回のフォーラムを開催、それぞれの内容を後日、編集紙面にて紹介した。東京・有楽町のよみうりホールを中心に開催されたフォーラムは、平日の昼間にもかかわらず延べ5000人の参加者を集め、株式投資への関心の高さがうかがえた。
 各回とも講演とパネルディスカッションによる構成。第1回は元財務大臣の塩川正十郎氏、第2回は経済学者の伊藤元重氏、第3回はビジネスコンサルタントのジョージ・フィールズ氏、第4回は作家の幸田真音氏と日本IR協議会会長の歌田勝弘氏、第5回はベンチャー企業コンサルタントの堀紘一氏が講演し、それぞれの見地から、証券市場の活性化に向けた提案や個人投資家の株式投資の意義が語られた。

個人にとっての証券投資
フォーラム告知紙面 2月15日朝刊
●証券市場活性化プロジェクト
フォーラム「あなたの暮らしと証券市場」

主催:東京証券取引所、読売新聞社
後援:金融庁、日本証券業協会、証券広報センター
協賛:新光証券、大和証券、日興コーディアル証券、野村證券、UFJつばさ証券、アイザワ証券、オリックス証券、東海東京証券、三菱証券、リテラ・クレア証券

 いずれの講演にも共通したのは、証券市場での個人投資家の担う役割が高まってきたという点だ。まだまだ日本は欧米各国と比べ、個人金融資産に占める株式などのリスク資産の割合は低い。株式の持ち合いが解消し、流動性は高まっているものの、株価を下支えしているのは外国人投資家が中心である。その背景には、間接金融に偏った金融システムがある。ジョージ・フィールズ氏は「ゼロ金利政策下で、これだけ現金・預金で持つというのは、資本主義としては異常」と指摘する。伊藤元重氏は「間接金融の比重が極めて高いのは、戦後に急成長した国の経済にみられる特徴だが、こうした時代は終わった。十分な貯蓄をどう有効に投資に回していくかが、日本経済の課題」だと語る。
 そのうえで、より多くの個人が証券投資を進めるには、短期売買で利ザヤを稼ぐといった従来型の思考だけではなく「株主になることを楽しむ意識が大切」(幸田真音氏)である。企業側にとっても、「投資を通じて経営や商品に関心を持たれることはプラス」(伊藤元重氏)、「個人株主が増えると、企業の経営に透明性が増し、株式市場が活性化する」(歌田勝弘氏)など、その影響は大きい。
 また、実際に投資銘柄を選ぶ際には、「自分の生活実感を信じる方が、素朴に見えても成功の確率が高い」(堀紘一氏)とのアドバイスが印象的だった。企業と個人投資家とのコミュニケーションに、証券市場活性化のヒントが隠れているのかもしれない。

リスクマネーによる資産形成

 パネルディスカッションでは各回テーマを設定し、基調講演者を含めたそれぞれのパネリストの立場から「証券市場の活性化」と「個人投資家層の拡大」に向けた討論を交わした。各パネリストのコメントを整理すると、大きく「個人」「証券市場」「上場企業」の三者が、それぞれ果たすべき課題が浮かび上がる。
 売買手数料の自由化やインターネット取引の拡大によって、ここ数年、個人投資家の比率は高まってきている。だが、リスクマネーによる資産形成はまだまだ一般的とは言えない。リスクのある証券投資を個人があえて行うには、それなりの必要性が欠かせない。
 ファイナンシャル・プランナーの浅井秀一氏は「リスクが怖いという人もいるが、すでに就職する際にも大きなリスクを取っている」とし、「今は、どんな会社に入社するかより、どんな会社に自分のおカネを『入社』させるかが大切。なぜなら、以前はボーナスなどで社員に還元されていた会社の利益は、配当として株主に還元することを重視しているから」だと証券投資の有効性を説明する。また、インフレ時の対策を考えると「物価上昇の過程では、株価も上昇する可能性がある。逆に預貯金は、目減りしてしまうリスクもある」(浅井氏)。

証券市場の信頼性に向けて

金融商品についての情報源(上位10位)
 証券投資のすそ野を広げるには、市場の透明性が大切だ。東京証券取引所の浦西友義氏は「上場企業に詳しい情報の開示をさせる取り組みを進めることが我々の使命」としたうえで、「東証では、企業のトップに有価証券報告書の内容が間違いないことを宣誓していただく方式を導入。上場会社の親会社が非上場の場合、上場会社が親会社の分も開示するように制度を見直した」と語る。
 企業にとっては、経営を安定させるにも、株式を長期保有してくれる個人投資家層が必要だ。個人株主に長期保有を促すためにも、個人に向けたIR活動の重要性が高まってきた。「最近の投資家は、コーポレイトガバナンス(企業統治)などの『見えざる資産』を知りたがっている。IRには必ずトップが顔を出し、どんな理念を持って、どんな活動をしているかを自ら訴えることが重要だ」(歌田氏)。個人投資家にとっても「企業全体を研究するのは難しいが、社長がどんな人なのかは分かるはず。社長の発言に感動したり、共鳴できたりする会社の株式を買うべきだ」(堀氏)。伝わるIRとは、スタイルの問題ではなく、その企業の姿勢の問題なのかもしれない。

 より多くの個人が証券投資を行うには、地道な啓発が欠かせない。東京証券取引所が開催する東証アカデミーを始め、多くの証券会社が一般個人向けの投資セミナーを開催して、投資に対する理解を呼びかけている。もちろん、優遇税制といった国の制度面の後押しも期待したい。株式投資が特別なものではなく、暮らしに身近であることを、あえて読売新聞の読者に伝えることに、本企画の新しさがある。
 「証券市場活性化プロジェクト」は、フォーラム開催地を東京(二回)のほか、大阪、名古屋、福岡に拡大し、2005年も継続される。

開催/3月31日 紙面発表/4月14日朝刊 開催/5月31日 紙面発表/6月11日朝刊 開催/7月21日 紙面発表/8月4日朝刊 開催/9月28日 紙面発表/10月13日朝刊
●第1回フォーラム
「遠いようで近い証券市場」

【1部特別講演】
前財務大臣 塩川正十郎氏 
【2部パネルディスカッション】
後藤真一氏(金融庁監督局証券課長)、飛山康雄氏(東京証券取引所常務取締役)、浅井秀一氏(ファイナンシャルプランナー)
●第2回フォーラム
「日本経済が抱える問題点」

【1部基調講演】
伊藤元重氏(東京大学大学院経済学研究科教授)
【2部パネルディスカッション】
伊藤元重氏、鹿子島菊雄氏(東京証券取引所常務取締役)、浅井秀一氏(ファイナンシャルプランナー)
●第3回フォーラム
「海外投資環境の現状-家計の中の株式」

【1部 基調講演】
ジョージ・フィールズ氏(フィールズ・アソシエイツ代表)
【2部 パネルディスカッション】
ジョージ・フィールズ氏、浦西友義氏(東京証券取引所執行役員)、浅井秀一氏(ファイナンシャルプランナー)、杉山美邦(読売新聞東京本社論説委員)
●第4回フォーラム
「企業が求める個人株主」

【基調講演】
幸田真音氏(作家)
【特別講演】
歌田勝弘氏(日本IR協議会会長)
【パネルディスカッション】
歌田勝弘氏、幸田真音氏、長友英資氏(東京証券取引所常務取締役)、浅井秀一氏(ファイナンシャルプランナー)、杉山美邦(読売新聞東京本社論説委員)
開催/11月25日 紙面発表/12月8日朝刊 *第5回フォーラム パネルディスカッション風景  
●第5回フォーラム
「日本経済はあなたを必要としている」

【基調講演】
ドリームインキュベータ代表 堀紘一氏 
【パネルディスカッション】
堀紘一氏、柚原一夫氏(金融庁監督局証券課長)、浦西友義氏(東京証券取引所執行役員)、浅井秀一氏(ファイナンシャルプランナー)、杉山美邦(読売新聞東京本社論説委員)



2005年の日本経済と個人投資家の役割
国際エコノミスト 長谷川慶太郎氏→


個人投資家の現状とIRコミュニケーションの今後
電通 統合マーケティング局 PRプランニング部 主務 小山雅史氏→


長期的なファンづくりを目指した個人株主への取り組み
アサヒビール 広報部 IR室 プロデューサー 鈴木 剛氏→
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