特集 2004.4/vol.7-No.1

デジタルネットワーク社会の広告という機能

 多くのメディアに囲まれている消費者の情報摂取行動は、明らかに変化している。必要な情報を検索し、共有する――これは明らかにインタラクティブメディアの普及による消費行動の変化と言えるだろう。時代に対応した広告活動はいかにあるべきか。デジタルネットワーク社会における広告という機能の再定義を試みている電通関西支社の秋山隆平氏に、消費者の現在とメディアと広告の役割について聞いた。
 
――長年、インターネットなどインタラクティブメディアに携わってこられた立場から、今のマスメディアをどう見ていますか。
 マスメディア側の人から見れば、新しいメディアの強さばかりが目に付くのかもしれませんが、攻める立場からすると、逆にマスの強さ、すごさを改めて感じます。テレビは50年の歴史がありますし、新聞には130年を超える歴史がある。メディアとしての蓄積が違います。

――しかし、メディア状況は確実に変わっています。著書の『ホリスティック・コミュニケーション』の中で、コンシューマーが変わってきたことがまず出てきますが、それとメディア状況が変わったことは関係している?
 リンクしています。新しいメディアの出現は、コミュニケーションする人と人との関係を変えます。たとえば、携帯電話が出てきたことによって人間関係も変わってきました。今までのメディアは送り手から受け手へ情報が一方的に流れるだけでしたが、インタラクティブメディアの基本はダイアローグで、情報が行ったり来たりするわけです。

――インタラクティブメディアは、人と人との関係をどう変えたのでしょうか。
 上司が部下に「君、来月から北海道に行くか?」と尋ねるのは、言い方はインタラクティブですけど、実際には命令で、上から下へのワンウエーコミュニケーションです。インターネットなどインタラクティブメディアが登場してきた当初は、企業からの情報の流れは従来のワンウエーのままで、消費者からレスポンスが得られるメディアが出てきたと受け止められていました。しかし、実際にはそうならなかった。
 従来のBtoC(企業→消費者)に対してCtoBという情報の流れではなく、CtoC(消費者→消費者)の世界が大きく増幅していった。いったん企業から広告というかたちで情報が投げかけられると、掲示板などの電子化された口コミサイトで消費者同士が情報をやり取りするようになった。今は、そういう情報環境ができていると考えた方がいいと思います。インターネットが登場したことによって、企業と消費者、つまり広告を送る人と受ける人が、対等な関係、フラットな関係になり始めていると思います。

――情報公開、アカウンタビリティーの時代と言われ、何かあるとすぐおわび広告が出てくるようになりましたが。
秋山隆平氏
 すぐ謝ればいいというのは、企業と消費者の対等な関係というより、「消費者は神様」の裏返しですね。ここ数年は、確かに企業は消費者からのクレームに対して、少し神経過敏なところがあります。
 インターネットの掲示板に書かれることと、新聞のようにソフィスティケートされたメディアに書かれることとは同じではないのに、メディアリテラシーのない人にとっては同じに見えてしまう。掲示板の書き込みはトイレの落書きと同じと言う人もいますが、それがプリントアウトされると、印刷媒体の記事と同じものに見えてしまう。インターネットの登場は、一般の人たちが発言する機会を増やしたというプラスの面もありますが、逆にゴミと言ってもいい情報も増やした。今後は、そういう情報の見方のルールが出てくる必要があると思います。

――著書の中でも、インターネットの普及は、裏通りがIT化されること、口コミが電子化されることだと書かれていますね。
 裏通りには裏通りのよさがあると思いますが、それを見る人の多くがまだ学習できていない。しかし、若い人たちの間では、そういうメディアに対するリテラシーはだいぶ育ってきていると思います。


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