特集 2004.1・2/vol.6-No.10・11

新しい年のビジネス環境を考える

 広告主、メディア、広告会社それぞれが、景気の低迷とメディア環境の急激な変化の中で多くの問題を抱えている。メディアの指標、広告取引、そして、相互理解の問題。現在のメディアと広告にかかわる状況をどうとらえ、どこに活路を見いだすべきか。日本広告主協会専務理事の小林昭氏に聞いた。

メディアと広告主が話し合う場を

 2000年10月の誕生から3年、KDDIが新たな企業広告キャンペーンを開始した。同社といえば、オレンジを基調にした発足時のキャンペーンが今も記憶に残っているが、その後のコミュニケーションは「DION」「au」という個々の事業ブランドが中心だった。新しい企業コミュニケーションに取り組んでいる経営戦略本部宣伝部部長の東条続紀氏に聞いた。
 
――広告主から見て、最近のメディア状況、広告状況をどう見ていますか。
 いまはメディア全体のパワーが落ちています。テレビは視聴率の問題を抱えているし、放っておいても元気なのはウェブぐらいで、あとは全体的に地盤沈下している。それには景気が影響していることもありますが、やはり構造的な問題、長い間のひずみが出てきたというか、時代の変化が原因だと思います。そのひずみを修正して、新聞やテレビ、雑誌が本来持っているパワーを取り戻すためには、個々の努力だけでは限界がある。やはり、メディアと広告主がお互いに情報公開しながらやっていかないと、いまの状況はまだ当分続くと思います。

――広告主との交流を積極的に行うべきだと?
 確かに、個々の企業は日常業務で広告会社やメディアとそれぞれつき合いがありますが、協会対協会は意外と距離がある。そういう意味で、広告業協会とは常任理事クラスの意見交換会を交互にやっていますし、民放連の営業部会と私どもの電波専門委員会は年1回、意見のすり合わせを行っている。雑誌協会とも、年に1回接点があります。もう少し大所高所に立ってものを見るということが、これからはますます重要になって来ると思います。

新聞社からの積極的な提案を

――新聞広告の現状については、どうお考えですか。
 あくまで個人的にですが、活字が好きなんですね。それで、9年前に新聞委員長を務めた時も基本的なスタンスは「新聞広告がんばれ」で、広告主の立場で応援団に回った。そのスタンスはいまも変わっていませんが、部数そのものが減っている現状や新聞広告費の長期的な低迷をみると、新聞はまだ沈みつつあることに変わりはない。これは、やはり根本的なものが原因しているんだろうと思います。
 広告主は自社の商品、ないしはサービスを売りたい、それから広く知って欲しいから高いお金を払って広告を出稿するわけです。お金を払うという立場になると、その気持ちがどうしても前面に出る。本当は出てはいけない時も、売りたいという気持ちが表に出る。だから、広告主は「これはまずいですよ」「こういう方法でやったら伝わりますよ」というアドバイスを求めているんです。そういう提案をぜひしてください。新聞委員長の時、そういうことを新聞にお願いした。
 たとえば、新聞広告を目立つものにしようということで新しい変型広告やカラー面を増やすなど、新聞社からのアイデアで実現したものもありますが、その提案が、広告主が期待しているほどには出てこない。

――他のメディアは努力している?
 広告主協会が発行している「月刊JAA」という機関誌の昨年10月号で雑誌の特集をやったのですが、それも「雑誌広告がんばれ」というスタンスで、広告主のわれわれは雑誌のために何ができるかというコンセプトで話を進めた。ポイントは新聞と同じです。
 その中で、メディアは売る側ではなく消費者の立場で、いろいろな知識を豊富に持っているにもかかわらず、それを生かしきれていないという指摘が随分ありました。それでも、新聞と比べれば雑誌社との共同企画はかなり進んでいる。雑誌社の担当者は、商品の勉強をものすごくしています。
 広告主の製品やサービスに対する新聞社の理解は、雑誌に比べたら努力不足だと思います。努力不足というのは新聞社の広告に携わる人に対してであって、報道は別ですが。しかし、新聞社の収入の半分は広告掲載料ということであれば、広告に対する認識が薄いのは、やはり問題だという気がしますね。広告主は長い間、新聞社の提案を待っていますが、なかなか積極的な提案が出てこない。

――個別の企業に対して提案をということですか。
 新聞社は何千社も広告主を抱えているわけで、どこに焦点を絞るかは、それぞれの新聞社の考え方だと思います。大事なのは、新聞の特性を生かした具体的な提案をすることで、今のような時代にすぐ生かされるものの方がいい。

説明できる客観データを

――データに対する広告主の要望も厳しくなっています。

 メディア側がデータを出すということと、広告主の製品・サービスを勉強してよりよい広告出稿をもらうためのアイデアを提供することは、次元の違う話ですが、データの問題も9年前と状況は全然変わっていません。広告主協会の重要課題にもメディアデータの整備は入っていますが、テレビの視聴率問題もありますし、今年はもう一度議論することになると思います。
 新聞のデータについて言えば、自社調査のデータだけではなくて、今後は客観性のあるデータで、広告主を納得させることが必要でしょうね。販売部数だけでなく、メディアの質や面別接触率も、モニター調査でも、客観データでもこうなんだと、キチッと説明できないといけないということです。各社とも努力しているのは確かですが、データにもう少し客観性が欲しい。広告主も自社の商品を広告するとき、客観的なデータやいろいろな方法を使って「わが社の商品は他社に比べてこれだけ優れている」と説明しますが、それと同じです。

――第三者機関のデータ整備が必要だと。
 それも一つの方法です。ビデオリサーチのJ-READもまだ2回目です。これも、もう少し回数を重ねてもらわないといけないと思っています。
 いずれにしろ、「どこまで効いているか」が客観的に見えないと、広告費はなかなか出てこない。経営環境がこれだけ厳しくなっていますし、これから飛躍的に良くなる保証もない。ますます厳しくなるという前提でものごとを考えていくべきだと思います。

――具体的に広告主が期待している効果というのは?
 企業の広告担当が頭を悩ますのは、例えば15段ではなく30段にすると、売り上げはどう変わるかというようなことでしょうが、そこまでは新聞社に求めていません。それでも、「これだけの人がその日の新聞を読んで、実際にこれだけの人が広告を見てくれた」というあたりまでキチッと客観的データで説明できないと、広告担当の社内での立場はなくなる。現実を言えば、そういうことなんです。
 事業部の責任者は、トップから利益を出せと言われる。億の単位で利益を操作しようとしたら、一番簡単なのは、広告費を削ることです。そうしないためには、大変かもしれないが、やはり客観的なデータ、数字で示すことがトップを説得し納得してもらうために一番簡単な方法なのです。

――そうすると、事前のメディア特性のデータだけでなく、掲載後の検証も必要ということですか。
 広告によってどれだけ売れたというデータまで出すのは、なかなかむずかしいとは思いますが、理想はそこにつなげたいですね。

――しかし、広告の反響は広告主からは明確に教えてもらえないことが多いし、広告の目的が売り上げにすぐ結びつくものだけとは限らないのでは。
 どこまで客観的データを求めるかということもありますが、広告効果を売り上げに結びつけるなら広告主側の理解も必要でしょうね。広告主協会に加盟している300社の中にもさまざまな業種業界がありますから、一筋縄ではいかないと思いますが。

――先ほどメディアの質というお話が出ましたが、質的データについてはどう考えていますか。
 たとえば、テレビのデータでも、視聴する態度を言っているのか、番組の質なのか、それだけでも大きな違いがあります。これまでテレビは世帯視聴率、要するに、量で測ることをずっとやってきた。これはテレビ受像器のオンオフを調べているわけで、実はだれが見ているかわからなかった。それで個人視聴率の調査が始まった。個人視聴率は視聴質ではなく、基本的にターゲット論から来ている指標です。
 視聴率は世帯視聴率でずっとやってきたわけですが、これが正直いって曖昧になってきています。97年にピープルメーター(PM)が始まって、600というサンプル数が決まったのですが、600サンプルでは、個人視聴率を測るには少なすぎる。
 当面われわれは、視聴率イコール世帯視聴率ではなく個人視聴率だということ、それから、質の問題、好き嫌い、良い悪いという非常に主観的な判断は別の指標というか、問い方で確認するということをやらなければいけないと思っています。

――テレビは地上波のデジタル化の問題もありますね。
 デジタル放送が12月1日から始まりましたが、それに際して民放連と広告業協会と広告主協会の3団体で、デジタル化した時の視聴率を検討するステアリング・コミティー(運営委員会)を10月26日にスタートさせています。確かに大きな課題ですが、みんなで知恵を絞れば何とかなると思っています。


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